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<解説>対領空侵犯措置について

国際法上、国家はその領空に対して完全かつ排他的な主権を有しており、外国の航空機が領空を飛行する場合、領域国の許可を得る必要があります。特段の事情がないにもかかわらず領域国の許可を得ずに領空に侵入することは、「領空侵犯」と呼ばれる国際法上違法な行為です。

航空自衛隊は、24時間365日、わが国周辺の空域をレーダーによって監視し、飛行する航空機を識別しており、領空侵犯のおそれのある航空機などを発見した場合には、待機させている戦闘機を緊急発進(スクランブル)させています。緊急発進した戦闘機は、対象となる航空機の行動を監視するなどした上で、必要に応じ、わが国領空に侵入しないように通告を行い、仮に領空侵犯があった際には、領空から退去するように警告したり、最寄りの飛行場に強制着陸させることとなります。空域の監視から始まる、この一連の任務が対領空侵犯措置です。

対領空侵犯措置を有効に実施するために、緊急発進すべきかを的確に判断する必要があります。そのために、わが国周辺を囲むような形で設定されているのが、「防空識別圏(ADIZ(アディズ:Air Defense Identification Zone))」です。ADIZへの進入がレーダーによって確認された航空機について、どこの国籍か、領空侵犯のおそれがないかなどを識別して、緊急発進すべきかが判断されます。

緊急発進回数は、近年高い水準で推移しており、冷戦後最も少なかった平成16(2004)年度(141回)と比べ、令和元(2019)年度では約7倍(947回)に増加しておりますが、防衛省・自衛隊としては、わが国の領土・領海・領空を断固として守り抜くとの観点から、国際法及び自衛隊法に従い、対領空侵犯措置に万全を期していく考えです。

領空侵犯に対する措置の要領(イメージ)

領空侵犯に対する措置の要領(イメージ)

わが国の領空を守るF-2戦闘機

わが国の領空を守るF-2戦闘機