Contents

コラム

防衛白書トップ > コラム > <解説>宇宙軍の創設

<解説>宇宙軍の創設

米国は19(令和元)年12月、陸海空軍、海兵隊及び沿岸警備隊と並ぶ第6の軍種として、空軍省の隷下に宇宙軍(Space Force)を創設しました。新しい軍種の創設は、1947年の空軍創設以来約70年ぶりです。

トランプ政権はこれまで、宇宙は米国の経済的繁栄や国防にとっての基盤であり、不可欠な支援を提供する領域であるとして、重要視する姿勢を示してきました。こうした中、ペンス副大統領は19(平成31)年3月、国家安全保障にかかる宇宙関連事業が60を超える省庁に分散した結果、指導力と責任が欠如しているとして、組織体制上の不備を指摘しました。このような認識から、トランプ政権は、宇宙領域を集約的に司る組織の創設を提唱し、19(令和元)年8月には、インド太平洋軍などと並ぶ統合軍である宇宙コマンド(Space Command)を創設して、運用面での統合を図っています。これに対し、宇宙軍は、分散していた宇宙関連部隊の組織、訓練及び装備にかかる権限を集約することにより、戦力構築面で非効率を排しつつ主導的な役割を果たすことが期待されています。この宇宙軍の規模について、創設構想では1万5,000人程度が想定され、既存の各軍種から宇宙関連の要員が段階的に移行するとされています。

また、宇宙軍創設にかかる式典において、トランプ大統領は、「宇宙は最も新しい戦闘領域である」との認識を示しました。トランプ政権は、中国やロシアなどが宇宙における米国の脆弱性を悪用するための戦略や能力を開発しており、これによって宇宙が戦闘領域となったとし、米国は宇宙における優位性を失う危険性があるとの危機感を表明しています。このような認識から、宇宙軍の創設は、宇宙における取組を戦闘支援から競争と戦闘の領域へと抜本的に転換するものと位置づけられ、宇宙軍の部隊は、宇宙状況監視、衛星運用、陸海空軍などへの支援といった任務に加え、独自の戦闘領域の一つとして、宇宙優勢のための攻勢及び防勢の両面にわたる作戦を遂行するとされています。

さらに、トランプ政権は、宇宙軍を隷下とする宇宙軍省を創設する意向も示しており、今後とも宇宙領域をめぐる米国の取組が注目されます。

国防省の主要組織図