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第III部 わが国防衛の三つの柱(防衛の目標を達成するための手段)

➌ 関係国との意思疎通や連携

1 米国

わが国として、中東における日本関係船舶の航行の安全を確保するためにどのような対応が効果的かについて、原油の安定供給の確保、米国との関係、イランとの関係といった点も踏まえつつ、総合的に検討した結果、米国などの海洋安全保障イニシアティブには参加せず、日本独自の取組を適切に行っていくこととした。一方、中東における航行の安全を確保するため、米国とはこれまでも様々な形で緊密に連携してきているところであり、自衛隊の情報収集活動に際しても、わが国独自の取組を行うとの政府方針を踏まえつつ、同盟国である米国と適切に連携することとしている。このため、海自からバーレーンに所在する米中央海軍司令部へ、海上自衛官1名を連絡官として派遣し、米軍と情報共有を行っている。なお、自衛隊の派遣については、20(令和2)年1月14日の日米防衛相会談においても、河野防衛大臣からエスパー長官に説明し、同長官からは謝意が示された。

2 中東地域における沿岸国

わが国独自の取組として実施する今般の情報収集活動については、イランを含む沿岸国の理解を得ることは重要であり、これまでも同活動について、透明性をもって説明してきている。また、中東における船舶の航行の安全確保については、沿岸国の役割が重要であり、わが国の取組について、沿岸国に働きかけ、理解を得てきている。

19(令和元)年12月20日の日イラン首脳会議においては、安倍内閣総理大臣から、わが国の取組について詳細に説明した。これに対し、ローハニ大統領から、イランは、地域の緊張緩和に向けた日本の外交努力を評価する、自らのイニシアティブにより航行の安全確保に貢献する日本の意図を理解しており、さらに日本が透明性を持ってイランに本件を説明していることを評価する旨の発言があった。このようなイランの立場については、20(令和2)年2月15日に実施された日イラン外相会談においても確認している。

また、同年1月9日の河野防衛大臣とイランのハータミ国防軍需大臣の間で行った電話会談においては、河野防衛大臣から、自衛隊の情報収集活動について説明を行うとともに、イランに対し、船舶の安全な航行確保のために沿岸国としての協力を求めた。

安倍内閣総理大臣は同年1月、サウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)、オマーン各国を歴訪し、それぞれ首脳会談を行った。首脳会談では、わが国の取組について直接説明を行い、各国から支持を得ている。河野防衛大臣も、自衛隊による情報収集活動について、19(令和元)年12月、オマーンを訪問した際、バドル国防担当大臣に直接説明するとともに、20(令和2)年3月、UAEのボワルディ国防担当国務大臣との電話会談において説明を行った。わが国は、引き続き、イランを含む沿岸国との間において、意思疎通を図っていく考えである。