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第I部 わが国を取り巻く安全保障環境

➌ 各国の軍の近代化

東南アジア各国は、近年、経済成長などを背景として国防費を増額させ、第4世代の近代的戦闘機を含む戦闘機や潜水艦などの装備品の導入を中心とした軍の近代化を進めている。

インドネシアは、18(平成30)年2月、ロシアからSu-35戦闘機11機を調達する契約を締結している。韓国との間では、韓国製209級潜水艦3隻を購入する契約を締結し、3隻目をインドネシア国内で生産して、20(令和2)年1月に潜水実験に成功したと報じられた。また、韓国とは16(平成28)年1月、第4.5世代戦闘機(KF-X/IF-X)の共同開発の費用分担や協力内容を定めた合意書を締結している。米国からは、22(令和4)年3月までにスキャンイーグル偵察無人機14機を導入する予定である。中国との間では、19(令和元)年10月、国軍創設記念式典の中で中国のCH-4無人機を展示したほか、19(令和元)年12月、中国のCH-4無人機のデザインを取り入れた国産のブラックイーグル無人攻撃機の試作機を公開した。

マレーシアは、国産の沿海域戦闘艦(LCS)6隻の建造を推進しており、17(平成29)年8月に1番艦が進水した。加えて、16(平成28)年11月、中国から沿海域任務艦(LMS:Littoral Mission Ship)4隻の購入に合意している。また、19(令和元)年6月には、米国から22(令和4)年3月までにスキャンイーグル無人偵察機12機の供与を受けると公表した。

ミャンマーは、19(令和元)年12月、インドからキロ級潜水艦を受領しており、同国初の潜水艦の調達は近隣諸国も注目している。

フィリピンは、南シナ海における領有権をめぐる係争などを背景に、近年装備の近代化を進めている。

航空戦力については、15(平成27)年11月から韓国製FA-50PH軽戦闘機を順次導入し、17(平成29)年5月までに合計12機を配備した。現在は、マルチロール戦闘機の調達を計画している。また、22(令和4)年3月までに米国のスキャンイーグル偵察無人機8機を受領する予定である。

海軍戦力としては、16(平成28)年までに、米国からハミルトン級フリゲートを3隻導入するとともに、17(平成29)年までにインドネシア製ドック型輸送揚陸艦を2隻導入した。また、16(平成28)年10月には、韓国製フリゲート2隻の購入契約を締結している。19(令和元)年8月、韓国から供与されたポハン級コルベット1隻が就役したことで、フィリピンは長期にわたり欠如していた対潜戦能力を復活させた。さらに、同年9月、フィリピンは陸海空統合演習「DAGIT-PA」を実施し、同年6月に就役したAAV水陸両用車4両を運用した。

シンガポールは、軍の近代化に努めており、世界有数の武器輸入国である。

航空戦力については、12(平成24)年までに米国製F-15戦闘機を24機導入したほか、F-35統合攻撃戦闘機計画に参加している。20(令和2)年1月、米国政府は、シンガポールへのF-35B戦闘機の売却を承認し、議会に通知した。

タイは、14(平成26)年7月、潜水艦隊司令部を発足させており、17(平成29)年4月には、中国からユアン級潜水艦を今後11年間で合計3隻購入することを海軍が計画し、うち1隻の購入を閣議決定した。また、12(平成24)年9月にフリゲート2隻を導入する計画が閣議で了承され、1隻目として18(平成30)年12月に韓国製フリゲートを受領した。さらに、19(令和元)年9月、タイは、中国の071ドック型輸送揚陸艦1隻の購入契約を締結した。このほか、13(平成25)年までに、スウェーデン製JAS-39グリペン戦闘機12機を導入しているほか、19(令和元)年9月には、米国から購入したストライカー装甲車60両の内の最初の10両を受領した。

ベトナムは、17(平成29)年1月までにロシア製キロ級潜水艦6隻を導入したほか、18(平成30)年2月までにロシア製ゲパルト級フリゲート4隻の運用を開始した。航空戦力については、ロシア製Su-30戦闘機を04(平成16)年から順次導入しており、これまでに最大36機が導入されたと報じられている。さらに、20(令和2)年1月、ベトナムはロシアのYak-130練習機12機を発注したと報じられた。また、22(令和4)年3月までに米国のスキャンイーグル無人偵察機6機を受領する予定である。