英海軍空母打撃群 司令官 准将 ジェームズ・ブラックモア
英国は、自由で開かれたインド太平洋を支持するとともに、ルールに基づく国際秩序の強化に取り組んでいます。オペレーション「HIGHMAST」の下で実施された英国空母打撃群(Carrier Strike Group:CSG)の展開は、航行の自由を守り、海洋安全保障を強化し、防衛協力を深化させるため、パートナーおよび同盟国と緊密に連携しつつ、地域の安定に長期的に貢献していくという英国の確固たる意思を示すものでした。
英国によるインド太平洋地域の安全保障への貢献は、自由で開かれた地域の実現へのコミットメントと、パートナーシップの強化および国際的なルールと規範の維持を目指す戦略的取組に基づくものです。旗艦である空母HMS「プリンス・オブ・ウェールズ」を中核とする空母打撃群がオペレーションHIGHMASTの下で展開したことは、こうしたコミットメントを具体的に示すものです。幅広い軍同士の交流プログラムを通じ、英国は遠方においても信頼性の高い戦力を展開できる能力を示し、地域における信頼できるパートナーとしての役割を改めて確認しました。

ジェームズ・ブラックモア准将

HMS「プリンス・オブ・ウェールズ」とともに航行する日米カナダ艦艇
CSGの活動には、インド海軍およびインドネシア海軍との共同訓練、ならびに米国、オーストラリア、ニュージーランド、日本の艦艇との緊密な連携に加え、カナダ、ノルウェー、スペインといったNATO加盟国との連携も行われました。これらの活動には、航行の自由に関する行動、多領域の演習、国連安全保障理事会決議(UNSCR)の履行に関する活動などが含まれ、英国がパートナーおよび同盟国と効果的に連携して作戦を遂行できる能力を有していることを示しました。
今回の展開は、軍事的な活動にとどまらず、外交、経済及び文化交流といった取組も含むものです。寄港地において各国の政府高官などを艦上に迎えることで、CSGはハイレベルでの国際対話を促進し、地域の安全保障協力を一層強化しました。このように、複数の政府機関が関与する統合的な取組は、インド太平洋地域の安定と繁栄の促進に取り組む英国の姿勢を示すものでした。
インド太平洋における英国空母打撃群展開の戦略的意義
英国空母打撃群のインド太平洋への展開は、同地域において積極的な役割を果たすという英国の戦略的意思を象徴する画期的な出来事でした。CSGはハードパワーを展開すると同時に、外交、経済、そしてソフトパワーの面でも大きな成果をもたらしました。これにより、志を同じくするパートナーとの間で、国家安全保障と繁栄を確保するための、更なる協力の基盤を築きました。
また、この展開は、世界各地で発生する事象に対応し得る海上戦力の柔軟性と即応性を示すものであり、政府に対して多様な選択肢と行動の自由を提供し得る能力を実証しました。さらに、直接的な軍事的利益にとどまらず、本展開は戦略的成長を促進する機会にもなり、海洋、航空、サイバー、複合兵器といった複数の領域において、能力面での協力や防衛装備品の輸出機会が地域全体で促進されました。こうした幅広い協力の機会は、英国が信頼される戦略的かつ経済的パートナーであることを示すものです。
英国は2021年にも空母機動部隊の派遣を実施しましたが、今回のオペレーションHIGHMASTは、この派遣を基盤とし、インド太平洋地域における英国の戦略的プレゼンスを更に強化する重要な節目となりました。注目度の高い防衛交流を通じて、二国間関係を強化するとともに、産業協力を促進することで、安全保障、外交、経済成長という目標の同時の達成に寄与しました。また、本展開は、政府一体となった取組の重要性とともに、空母打撃群が有する多様な活動を結集させた力を改めて示すものとなりました。
多国間海軍協力の重要性
多国間海軍協力は、相互運用性を高め、同盟関係を強化し、国連海洋法条約(UNCLOS)に代表される国際規範を維持するという点において、英国のインド太平洋戦略における重要な柱となっています。CSGの展開は、こうした運用上の有効性を明確に示すものであり、クロスデッキ運用、戦術訓練、タスク・グループとしての活動、多領域演習などが実施されました。これらの取組は相互運用性を向上させただけでなく、オーストラリア、シンガポール、日本などの外国港湾における共通の後方支援基盤や整備能力の活用がもたらす、グローバルな利点を示すものでもありました。
日本の海上自衛隊、米海軍、米海兵隊、オーストラリア海軍、ニュージーランド海軍といった地域のパートナー部隊との活動は、真の相互代替性と協力の重要性を示すものでした。例えば、英国のF-35が日本の護衛艦「かが」に初めて着艦したこと、米国および日本の部隊とのクロスデッキ運用、そして護衛艦「あけぼの」がCSGとともに約2か月間にわたり訓練を実施したことなどは、こうしたパートナーシップがもたらす作戦上・戦略上の利点を示しています。これらの活動は、集団安全保障に対する英国のコミットメントと、地域においてパートナーおよび同盟国と円滑に作戦を遂行できる能力を改めて示すものでした。

護衛艦「かが」から発艦する英海軍F-35B
イギリス海軍より提供
変化する地域安全保障環境に対する英国の視点
インド太平洋地域は、経済的活力に富む一方で緊張の高まりも見られ、地政学的な重要性を増しつつあります。英国の国家安全保障戦略に示されているとおり、また欧州・大西洋とインド太平洋の安全保障が不可分であるとの認識に基づき、インド太平洋地域における英国の二国間関係およびパートナーシップは、国際安全保障の強化を通じて、英国の繁栄を支えるものになっています。英国は、国際的なルールと規範を擁護・形成し、地域のパートナーシップを強化するとともに、航行の自由を守ることに取り組んでいます。
オーストラリアおよび米国とのAUKUS、日本およびイタリアとのグローバル戦闘航空プログラム(GCAP)といった英国の戦略的取組は、相互運用性を高める能力面でのパートナーシップを促進するという英国のアプローチを示すものです。これらの取組は、地理的な隔たりを越えてパートナー間の連携を強化し、英国がグローバルな安全保障の担い手としての役割を果たしていく姿勢を示しています。
また、CSGの日本への展開は、インド太平洋地域に対する英国のコミットメントを一層明確に示すものでした。HMS「プリンス・オブ・ウェールズ」の東京への歴史的な寄港、日本の石破首相や防衛産業関係者の艦上への招待、さらには文化交流やパブリック・ディプロマシー活動は、英日防衛関係の深さを示すものでした。この訪問はまた、英国の自律的な作戦遂行能力と主要パートナーおよび同盟国と連携して行動する能力を示し、友好国のみならず潜在的な競争相手に対しても、英国の同盟関係の強固さを示す明確なメッセージとなりました。
結論
空母打撃群の展開に象徴されるインド太平洋地域における英国の戦略的な取組は、地域の安全保障、経済成長、そして国際規範の維持に向けた英国の確固たる姿勢を示すものです。多国間・多領域にわたる協力を促進し、パートナーシップを強化するとともに、変化する安全保障上の課題に対応することにより、英国は地域における信頼されるパートナーとしての地位を確立しています。こうした統合的な取組は、インド太平洋地域の安定と繁栄に寄与するものです。