わが国は、グローバルなパワーバランスの劇的な変化の最前線に位置している。その周辺では、軍事力の強化や軍事活動の活発化が進み、取り巻く環境の厳しさと不確実性が増しており、また国際社会の平和と繁栄を支えてきた国際秩序も大きな試練にさらされている。防衛省・自衛隊はこのような現実を直視しながら、国民が安心して生活し、国が発展と繁栄を続けていくための平和と、政治、経済、社会のあり方を自ら決定し、その文化、伝統や価値観を保つための独立を守り抜く役割を担っている。
時代や社会が変化するなかにあっても国家としての日本があり続けるための領土・領海・領空およびそこに住む国民の生命や財産を直接守ることは我々防衛省・自衛隊にしかできない。「わが国を守り抜く」という防衛省・自衛隊だけが担う不変の使命を胸に、絶え間ない研鑽を重ねてきた。
万が一、わが国への侵攻が生起した場合、わが国を守り抜くため、侵攻を阻止、排除する。そして武力侵攻だけでなく自然災害などによる脅威に対しても迅速かつ的確に対応する。発災当初は、全力で救援活動に当たるほか、避難所などでの生活支援活動は、そのほかの様々な事態に対応できるよう自治体や関係省庁などと協力しながら役割分担を明確にして取り組んでいく。
防衛省・自衛隊では先人たちが紡いできたこの国の平和と独立を守るために、当たり前の明日を迎えるために先端技術をはじめあらゆる英知を結集し安全保障上の課題に挑んでいる。
自衛隊員は、全国各地の駐屯地、基地、艦艇などで勤務するほか、離島や洋上、さらには海外においても任務に従事している。極寒・酷暑の地での警戒監視、強い日差しの甲板上での艦艇運用、航空機の安全運航に不可欠な維持整備、災害現場での被災者支援などにあたっており、勤務環境や任務・業務の形態は多岐にわたる。こうした任務は、自衛隊員の職務の特徴の一つと言える。
いかなる過酷な環境や予測不能な事態にも対応しうるように、厳しい訓練や点検、情報収集・警戒監視といった平素の活動を積み重ねている。平時と有事を切り分けることが難しい現代の安全保障環境においては、日常の任務・業務そのものが国家と国民の安全を支える基盤となっている。
自衛隊員の活動は、国民の目に触れる機会が限られているものも多い。洋上・上空や、夜間や悪天候下での任務など、その多くは目立つことはないが着実に遂行されている。そのようななかでも、自衛隊員は常に法令を遵守しながら任務に従事している。
自衛隊員の一人ひとりが、わが国の平和と独立を守るという不変の使命の担い手であり結果を求められるプロフェッショナルである。職種や職務内容、勤務地は違えど、誰もがそれぞれの分野で重責を果たしている。
V部では防衛力の中核である自衛隊員、ひいては人的基盤について記述する。

国旗への敬礼
防衛省・自衛隊は自衛官や事務官、技官、教官などで組織される。全ての隊員が高い士気と誇りを持ち各種任務にあたっている。
わが国は、およそ1万4,000の島々で成り立っている。広範囲にわたり四方を海に囲まれた国土を守るため、24時間365日、国内外の過酷な環境下でも危険を顧みず責務の完遂に努めている自衛官たちがいる。
自衛隊はわが国の平和と独立を守るという使命のもと、領土・領海・領空を守るための活動を行う。国民に最も近い場所でその生命を守るため、日々鍛錬を重ね、災害派遣や有事などに備え、24時間365日、初動部隊による備えの態勢を確保している陸上自衛隊。海洋国家である日本の広大な領海の平和と安定に貢献するため、24時間365日態勢で警戒監視などに当たる海上自衛隊。日本の空を守るため、昼夜問わず緊急発進などにあたるとともに、宇宙空間の安定的利用を担う航空自衛隊。これら自衛隊、ひいては自衛官の存在やその働きにより抑止力が成り立っている。
近年、サイバー空間、海洋、宇宙空間、電磁波領域などを利用した脅威が急速に高まり、自衛隊はこれまでよりもさらに様々なフィールドに活躍の場を広げている。
また、大規模な自然災害、航空機事故などに際して国民の生命や財産を守るため速やかに人命救助、捜索、離島などの救急患者の輸送などができる態勢を保持している。各種の災害に迅速かつ的確に対応するために災害派遣計画を策定するとともに、平素から計画の実効性を高めるための訓練に取り組んでいる。
さらにテロや地域紛争といった地球規模の問題を解決する国際平和のための活動を行う。諸外国との国際協力が重要性を増すなか、派遣される隊員一人ひとりがわが国の国際平和協力活動などの主役として活躍することが求められている。
自衛隊には部隊を指揮する幹部と部隊の中核となる曹士がいる。
幹部は各自衛隊の任務、部隊の行動方針を理解したうえで、部隊が何をすべきかを考え、的確に判断でき、かつ、部下を率いて行動できることが求められている。任務を完遂するためには部隊を構成する一人ひとりの意思と能力の結集が不可欠である。部下を率いていく幹部は国民の生命を守るのはもちろんのこと部下となる自衛官に対してもその責任を負う。国防の根幹を担う責任と卓越したリーダーシップを持つ幹部の果たす役割は大きい。
曹士は部隊の中核を担い活躍する現場のスペシャリストである。入隊後は各自衛隊の教育課程を通じて陸・海・空曹士として必要な資質を養うとともに、部隊勤務に必要な基礎的知識および技能を習得する。その後それぞれが各分野のスペシャリストとなるように教育・育成カリキュラムを組んでいる。自衛隊の職種は多岐にわたり、どの分野においてもプロフェッショナルである曹士の存在がなくてはならない。
国民の生命を守るため、現場で汗を流す隊員が誇りと名誉をもって任務にまい進できる環境を作り上げること、そしてその家族が安心して帰りを待てる環境を整えることも、防衛省・自衛隊にとって重要な使命である。

令和7年度新隊員入隊式の様子