まず、防衛力の強化は、必要十分な防衛力を備えることで、侵攻を未然に抑止し、国民生活の大前提となるわが国の平和と独立を守るためのものである。経済の成長にはこうした安定した安全保障環境の存在が不可欠であり、防衛力の強化を通じてわが国の経済が成長できる環境を作ることが重要である。
わが国の防衛産業は、プライム企業のほか、中小企業を中心とした広範多重なサプライヤーがその下に存在する裾野の広い産業構造であり、また、防衛予算の約8割から9割は国内向け支出である。例えば、戦車や戦闘機は1,000社以上、護衛艦は8,000社以上の事業者が、各種部品の製造や組立てなどに携わっているとも指摘されている。防衛費の増額により、防衛産業の受注も大幅に増えたことに加え、企業努力を評価し、企業の適正な利益を算定する仕組みの導入などによる防衛生産基盤の強化は、関連産業も含めて雇用創出などの経済波及効果や地域経済の活性化、さらには民間部門への技術的な波及効果があると考えられる。
民間部門への技術的な波及効果については、今や最先端の科学技術は加速度的に進展し、民生用の技術と安全保障用の技術の区別は極めて困難となっている。そうしたなか、一般論として、防衛費の増額は需要の増加につながるとともに、防衛装備品の研究開発により、必要な装備品の取得だけでなく、その先端技術を民生分野に転用することで、様々な製品やサービスの創出へと波及することが見込まれる。例えばインターネット、電子レンジ、全地球測位システムなどは今や我々の生活に不可欠なものであるが、これらはもともと軍事目的で開発された成果が民生用途にスピンオフされたものである。また、わが国のF-2戦闘機の開発で得られた技術は医療をはじめとしたいくつかの分野の民生技術に応用されている。
このように、防衛産業は国民の命を守ることに直接貢献する高い公共性を有することに加え、民生分野への波及効果を通じてわが国の経済成長に寄与するものである。
こうしたことも踏まえ、政府としては、日本成長戦略会議において、防衛産業を「危機管理投資」、「成長投資」の戦略分野の一つとして位置づけている。2026年2月には、防衛産業分野の検討を進めるため、防衛大臣と経済産業大臣を共同座長とする防衛産業ワーキンググループが立ち上げられた。今後、経済産業省をはじめとした関係省庁と緊密に連携し、増産要請に対応できる能力の構築に向けた投資促進や企業の参入促進による生産基盤の強化のほか、特に防衛上必要である分野の国立研究開発法人・大学などへのセキュアな防衛研究基盤の整備やデュアルユース技術の研究促進などによる技術基盤の強化に取り組んでいく。