近年、わが国を取り巻く安全保障環境は厳しさと複雑さを増しており、防衛省・自衛隊が直面する課題もまた、当初の想定をはるかに上回るスピードで変化している。
例えば、ロシアのウクライナ侵略の教訓を踏まえ、わが国としての持続的な対応能力の確保・維持に取り組むとともに、防衛産業におけるサプライチェーンリスクにしっかりと対応する必要がある。また、各国が防衛分野を含む最先端科学技術に積極的に投資し、競争が激化するとともに、新しい戦い方が顕在化し、日々それが更新されるなか、民生先端技術を積極的に取り込み、スピード感を持って、防衛技術基盤の育成・強化を進める必要がある。さらに、戦後最も厳しく複雑な安全保障環境にあって、OCEAN(One Cooperative Effort Among Nations)の精神のもとで同盟国や同志国などとの連携強化がますます重要になるなか、その有効な手段としての防衛装備移転の推進にも積極的に取り組む必要がある。
現在の安全保障環境は、わが国の防衛生産・技術基盤が、いわば防衛力そのものであるという事実を浮き彫りにした。こうしたことから、防衛省・自衛隊は、防衛生産・技術基盤を強化していくため、様々な課題に取り組んでいる。
近年、科学技術の急速な進展が、安全保障のあり方に根本的な変化をもたらしている。各国は、自国の技術的優位性を確保するために研究開発を加速しており、とりわけ、将来の戦闘様相を一変させうる、いわゆるゲーム・チェンジャーと呼ばれる先端技術の獲得に注力している。
AI(Artificial Intelligence)、量子技術、新たな形でのエネルギーの利用といった新技術は、装備品等1へ適用されて、戦闘様相を従来の陸・海・空領域から、宇宙・サイバー・電磁波領域や人の認知領域にまで広げつつある。また、AIやSNS(Social Networking Service)などの情報関連技術や情報インフラの急速な進展は、軍事的手段と非軍事的手段を組み合わせたハイブリッド戦を発生させ、偽(にせ)情報の拡散を通じた情報戦を拡大させるリスクなども劇的に高めている。