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第III部 防衛目標を実現するための3つのアプローチなど

第2節 気候変動・環境問題への対応

世界気象機関(WMO:World Meteorological Organization)によると、2025年の世界平均気温は工業化以前の1850~1900年の基準線を1.43℃上回った。2015年から2025年は記録上最も暖かい11年となり、氷河の氷の消失、海面上昇、海洋温暖化の加速や異常気象が世界中の社会や経済に大損害を与えている。

気候変動などの環境問題への対応については、2015年には、持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable Development Goals)の国連における採択や気候変動に関する国際枠組みであるパリ協定の採択などを受け、各国で取組が進められている。

わが国においても、環境基本法、気候変動適応法および地球温暖化対策推進法のもとで策定された各種計画に基づき、具体的な気候変動対策が進められている。

また、気候変動は、大雨、干ばつ、強度の強い熱帯低気圧の割合の増加などをもたらし、住居やインフラの破壊、財産や生計手段の喪失、食料や水の確保に影響を及ぼす上、紛争の可能性を高めるものと指摘されており、軍の装備品、インフラ、作戦そのものにも影響を及ぼす。

NATOは、2024年7月、年次の事務総長報告「気候変動と安全保障影響評価」を公表し、各作戦領域への気候変動の影響のほか、軍事紛争は気候変動と環境破壊の重大な要因であるとしたうえで、ロシアによるウクライナ侵略の気候変動への影響を取り上げた。

こうした国内外の取組が加速していることを受け、防衛省・自衛隊としても、気候変動や環境問題の各種課題に対応し、解決に貢献するとともに、自衛隊施設や米軍施設・区域と周辺地域の共生について、より一層重点を置いた施策を進めていく必要がある。

また、気候変動の問題は、将来のエネルギーシフトへの対応を含め、今後、防衛省・自衛隊の運用や各種計画、施設、装備品、さらにわが国を取り巻く安全保障環境により一層の影響をもたらすことから、これらにも適切に対応していく必要がある。

1 防衛省・自衛隊の取組

防衛省・自衛隊は、これまで環境関連法令を遵守し、環境保全の徹底や環境負荷の低減に努めてきており、職員の心構えや環境施策などを示した防衛省環境配慮の方針のもと、環境への取組を推進している。2025年7月には、地球温暖化対策計画を踏まえ、防衛省の事務・事業に関する温室効果ガスの排出削減計画を策定し、2013年度を基準として、防衛省の事務・事業に伴い直接的・間接的に排出される温室効果ガスの総排出量について、2030年度までに50%、2035年度までに65%、2040年度までに79%削減するといった新たな目標を設定した。

1 防衛省気候変動対処戦略

気候変動を安全保障上の課題として捉える動きが、国連安保理をはじめ各国の国防組織にも広がってきている。防衛省では、気候変動がわが国の安全保障に与える影響について幅広く検討を行い、2022年、防衛省気候変動対処戦略を策定した。同戦略では、気候変動が今後与える直接的・間接的な影響に対し、防衛省において今後推進すべき10の具体的な施策を掲げている。防衛省・自衛隊は、同戦略に基づき、気候変動への対処を防衛力の維持・強化と同時に進めていく。

防衛省は、同戦略に基づき、2024年6月、2050年までの長期を見据えたロードマップを策定し、戦略的かつ計画的に各種取組を推進している。

また、同戦略を踏まえ、政府専用機や空自戦闘機などが持続可能な航空燃料1(SAF:Sustainable Aviation Fuel)を使用した。

動画アイコンQRコード資料:環境対策に関する取組
URL:https://www.mod.go.jp/j/approach/chouwa/kankyo_taisaku/index.html

2 再生可能エネルギー電力の調達

防衛省・自衛隊は、約25万人の隊員を有し、全国各地で様々な装備品や施設を運用しており、政府の機関で最も電力を使用していることから、温室効果ガスの排出の削減などに貢献するため、2020年度から、防衛省・自衛隊施設の電力の調達にあたり、再生可能エネルギーにより発電された電力(再エネ電力)の調達を積極的に進めている。

3 再生可能エネルギーの導入促進と安全保障の両立

気候変動問題への対応として風力発電を含む再生可能エネルギーの導入が進められており、風力発電設備は今後増加していくことが予想される。風力発電設備は、その設置場所や規格によっては、例えば、警戒管制レーダーの運用に支障を及ぼし、航空機やミサイルの探知を困難にさせるなど、自衛隊や在日米軍の活動に影響を及ぼすおそれがある。このため、防衛省・自衛隊としては、事業者をはじめとする関係者との調整を事業計画の早期の段階からきめ細やかに行うとともに、2025年3月に施行された防衛・風力発電調整法2に基づく制度運用を通じて、再生可能エネルギーの導入促進と安全保障の両立を図る対応を進めている。

動画アイコンQRコード資料:風力発電設備が自衛隊・在日米軍の運用に及ぼす影響及び風力発電関係者の皆様へのお願い
URL:https://www.mod.go.jp/j/approach/chouwa/windpower/index.html

4 PFAS(ピーファス)3への対応

防衛省・自衛隊におけるPFASへの取組については、2025年9月までに、全ての自衛隊施設において、PFOS(ピーフォス)を含む泡消火薬剤の交換・処分を完了するとともに、2025年3月までに、全ての自衛隊施設において、PFOSおよびPFOA(ピーフォア)が混入した泡消火設備専用水槽水の交換・処分を完了した。

また、将来、新たな有機フッ素化合物が関係法令による規制対象に加えられる可能性を踏まえ、段階的に、有機フッ素化合物を原料としない泡消火薬剤への交換又は水消火設備への移行を推進するため、2026年3月に「防衛省における有機フッ素系泡消火薬剤処理実行計画」を策定した。

1 空自は、2022年11月、政府専用機の運航時において、SAFを初めて使用した。

2 風力発電設備の設置等による電波の伝搬障害を回避し電波を用いた自衛隊等の円滑かつ安全な活動を確保するための措置に関する法律

3 有機フッ素化合物のうち、ペルフルオロアルキル化合物およびポリフルオロアルキル化合物の総称であり、PFOSやPFOAもこの中に含まれる。撥水性、撥油性、耐熱性の性質を持ち、これまで泡消火薬剤や半導体、金属メッキなど幅広い用途で使用されてきた。