一般的に無人アセット(装備品)は、長期間、過酷な環境下において人的損耗を伴わない運用が可能であり、相手方にコストを強要できるといった特性を持っている。
こうした特性を踏まえ、これまで有人の装備品が担っていた業務の効率化や、無人アセットによって新たに可能となるオペレーションに無人アセットを活用することで、任務に従事する隊員の危険や負担をできる限り減らしつつ、陸上、水上、水中、空中において、非対称的な優勢を確保できることから、無人アセットを幅広い任務に効果的に活用していく。
近年、諸外国における無人アセットの導入や技術革新が急速に進展したことに伴い、戦闘様相も大きく変化している。
そのような中、わが国においても、無人アセットを含む侵攻部隊からわが国を防衛するためには、有人アセットのみならず、安価かつ大量の無人航空機UAV(Unmanned Aerial Vehicle)、無人水上航走体USV(Unmanned Surface Vehicle)、無人水中航走体UUV(Unmanned Underwater Vehicle)を活用し、これらの組み合わせによる非対称的かつ多層的な防衛体制の早急な整備が、これまで以上に喫緊の課題となっている。
KEY WORD非対称的かつ多層的な防衛体制
敵が保有する高価な有人アセットに対して、安価かつ大量の無人アセットを柔軟に活用することで、わが方が非対称的な優勢を確保し、効果的に対処することを可能とする防衛体制であり、具体的には安価かつ大量のUAV、USV、UUVの無人アセットを、任務や地形、脅威の性質に応じて多層的に組み合わせ、有人アセットと連携させることで、探知・識別・対処の各段階において柔軟かつ多層的な防衛体制を構築することを想定している。
一方で、防衛省・自衛隊が行っている活動の中には、例えば、海自哨戒機による潜水艦のリアルタイムな追跡など、現時点で有人アセットにしか担えないものがある。そのため、防衛省・自衛隊としては、無人アセットと有人アセットそれぞれの特性を踏まえつつ、無人アセットの導入などにより部隊の高度化を図るべく、最適な形で両者を併用していく。
2026年度における無人アセット防衛能力の強化の施策は、約2,773億円を計上している。主要な事項としては、情報収集・警戒監視・偵察・ターゲティング(ISRT)機能の強化、無人アセットに関する研究開発がある。
特に、防衛省・自衛隊は、無人アセットにかかわる状況を踏まえ、2027年度中の無人アセットによる多層的沿岸防衛体制SHIELD(Synchronized, Hybrid, Integrated and Enhanced Littoral Defense)の構築を目指し、安価かつ大量のUAV、USV、UUVを取得することを計画している。具体的には、近距離で情報収集などを行う一人称視点FPV(First Person View)タイプのモジュール型UAVのほか、車両・舟艇などを捜索・識別した上で、体当たりにより攻撃を行う小型攻撃用UAV、艦艇から発射され、敵艦艇などへの攻撃などを行う水上艦発射型UAVや小型多用途USV、水上艦艇の情報収集・警戒監視能力を向上させるとともに、敵艦艇などへの攻撃が可能な艦載型UAV(小型)、陸上から発射され、長距離を飛行して敵艦艇を攻撃する艦艇攻撃用UAV、敵UAVからレーダーサイトを防衛するレーダーサイト防衛用UAV、敵艦艇等の情報収集を行う小型多用途UUVを取得する予定である。

SHIELDの構成要素の一例
これらにより、洋上に所在する敵艦艇を含む高価なアセットからなる敵の侵攻部隊に対し、スタンド・オフ防衛能力とも組み合わせつつ、無人アセットおよび有人アセットを連携して対処するほか、わが国の沿岸部においては、多数の各種無人アセットを活用し、上陸を試みる敵部隊に対して効果的な対処を行うなど、無人アセットの特性を最大限に生かしつつ、非対称的かつ多層的な対処を実施可能な防衛体制を構築していく。
また、隙のないISRTを実施するため、滞空型無人機「MQ-9B(シーガーディアン)」などを取得する予定である。なお、MQ-9Bは、2028年度から海自による運用開始を予定しているところ、早期導入事業として、2027年度から鹿屋航空基地で2機を使用して民間企業による飛行を実施する。同時に、対領空侵犯措置について、費用対効果の観点なども含め対処の実効性をより一層向上させていくため、この早期導入事業を活用し、対領空侵犯措置に滞空型無人機を活用する場合に必要となる運用要領の検討などを行っていく。
参照図表III-1-2-7(無人アセットによる多層的沿岸防衛体制(SHIELD)(イメージ))
