現代戦における戦闘様相や攻撃態様などは、従来のものとは大きく変化している。これまでの航空侵攻や海上侵攻、着上陸侵攻といった伝統的な侵攻に加えて、精密打撃能力が向上した弾道ミサイルや巡航ミサイルによる大規模なミサイル攻撃、偽旗(にせはた)作戦1をはじめとする情報戦を含むハイブリッド戦の展開、宇宙・サイバー・電磁波の領域や無人のアセット(装備品)を用いた非対称的な攻撃、核保有国の核兵器による威嚇ともとれる言動などを組み合わせた戦い方が顕在化している。
こうしたことも踏まえ、今後の防衛力については、相手の能力に着目して、わが国を防衛する能力をこれまで以上に抜本的に強化するとともに、いかなるときも力による一方的な現状変更やその試みは決して許さないとの意思を明確にしつつ、力による一方的な現状変更は困難であると認識させる抑止力が必要である。
防衛省・自衛隊は、「スタンド・オフ防衛能力」、「統合防空ミサイル防衛能力」、「無人アセット防衛能力」、「領域横断作戦能力」、「指揮統制・情報関連機能」、「機動展開能力・国民保護」、「持続性・強靱性」の7つの分野を重視し、抑止力と対処力を高めるためにわが国の防衛力を抜本的に強化していく。
参照図表III-1-2-1(将来の領域横断作戦(イメージ))、II部1章4節(「三文書」の改定について)、II部2章2節(防衛力の抜本的強化にあたって重視する能力)

スタンド・オフ防衛能力とは、侵攻してくる艦艇や上陸部隊などに対して、その脅威圏の外から対処する能力である。長射程化され、迎撃を回避できる高い残存性をもつスタンド・オフ・ミサイルなどにより、脅威圏の外から攻撃することで、自衛隊員の安全を確保しつつ、わが国に対する攻撃を効果的に阻止することができる。また、スタンド・オフ防衛能力は反撃能力にも活用されるものである。
防衛省・自衛隊は、スタンド・オフ防衛能力を抜本的に強化している。スタンド・オフ・ミサイルは射程が長いため、侵攻する艦艇や上陸部隊などに対して、わが国の様々な地点から重層的に攻撃することができる。また、射程、速度、飛しょうの態様など、特徴の異なるスタンド・オフ・ミサイルを使用することにより、相手に複雑で困難な対応を強いることができる。このため、外国製スタンド・オフ・ミサイルを早期に取得するとともに、国産スタンド・オフ・ミサイルの製造態勢の拡充を後押ししつつ、必要かつ十分な数量を早期に確保していく。また、スタンド・オフ・ミサイルの運用に必要となる目標情報の収集や指揮統制を含む一連の機能を確保する取組も推進するほか、より先進的なスタンド・オフ・ミサイルを運用する能力を早期に獲得するため、研究開発や量産の取組を加速化させていく。
ア 12式地対艦誘導弾能力向上型
12(ヒトニ)式地対艦誘導弾能力向上型(地上発射型、艦上発射型および航空機発射型)の開発および取得を実施している。地上発射型については2025年度に開発が完了し、艦上発射型と航空機発射型については、それぞれ2026年度、2027年度に開発が完了する予定である。地上発射型は2025年度に、25(ニゴ)式地対艦誘導弾として、健軍駐屯地(熊本県)に所在する第5地対艦ミサイル連隊に配備された。さらに2026年度には追加で同連隊に、2027年度には富士駐屯地(静岡県)に所在する特科教導隊に配備を行うことを予定している。また、艦上発射型は護衛艦「てるづき」(定係港:横須賀)で、航空機発射型はF-2能力向上型(百里基地(茨城県)に配備予定)で、それぞれ、同年度に運用を開始することを予定している。

健軍駐屯地に部隊配備された25式地対艦誘導弾の地上装置
イ 25式高速滑空弾
2025年度に島嶼防衛用高速滑空弾の研究が完了し、25(ニゴ)式高速滑空弾として富士駐屯地(静岡県)に所在する特科教導隊に配備されたほか、2026年度には上富良野駐屯地(北海道)およびえびの駐屯地(宮崎県)に運用部隊を新編し、配備を行うことを予定している。さらに、島嶼防衛用高速滑空弾(能力向上型)の開発を継続している。
ウ 新地対艦・地対地精密誘導弾
2024年度から、12式地対艦誘導弾能力向上型の地上装置を活用した、長距離飛しょう性能や精密誘導性能などを向上させた新地対艦・地対地精密誘導弾の開発に着手している。
エ 極超音速2誘導弾
2023年度から極超音速誘導弾の研究を進めており、2026年から早期量産に着手している。
オ 外国製スタンド・オフ・ミサイル
国産スタンド・オフ・ミサイルの量産弾の取得に加え、外国製スタンド・オフ・ミサイルの導入を継続する。この際、すでに量産が行われている米国製のトマホークを早期に取得することとし、2025年度から取得を開始した。トマホークについては、取得にあわせて海自艦艇への発射機能の付加や要員の教育を進めることで、国産スタンド・オフ・ミサイルの増産体制が確立する前に、十分な能力を速やかに確保することとしている。2026年3月には、護衛艦「ちょうかい」がトマホークの発射能力を初めて獲得した。同年夏頃までに実射試験などを通じて、乗員の練度を含め、実際の任務に従事できることを確認する予定である。また、ノルウェー製のスタンド・オフ・ミサイルであるJSMについては、2021年度に納入予定であったが、新型コロナウイルス感染症の影響により、納入が遅延している状況が続いていたところ、2025年度に納入され、引き続き、運用開始に向けて取組を進めていくこととしている。

トマホーク模擬弾の搭載訓練を実施する護衛艦「ちょうかい」(2025年9月)
カ 目標情報の収集や指揮統制に必要な機能
指揮統制面では、スタンド・オフ・ミサイルの運用の中核として一元的な指揮活動を円滑に行うために必要な機能などの整備を進めているほか、スタンド・オフ・ミサイルの運用に必要な目標の探知・追尾能力を獲得するため、2027年度からの本格的運用を目指し、2025年度末から小型人工衛星を段階的に打ち上げ、衛星コンステレーション3の構築を開始した。
2026年度予算におけるスタンド・オフ防衛能力の強化の施策については、約9,733億円を計上している。主要な事項としては、25(ニゴ)式地対艦誘導弾、12式地対艦能力向上型(艦上発射型および航空機発射型)25式高速滑空弾、極超音速誘導弾の開発・取得、目標情報収集などに関する取組、極超音速誘導弾の製造体制の拡充などがある。前年度に引き続き、射程や速度、飛しょうの態様、対処目標、発射プラットフォームといった点で特徴が異なる様々なスタンド・オフ・ミサイルの研究開発・量産・取得を実施する予定である。
参照図表III-1-2-2(衛星コンステレーション(イメージ))、図表III-1-2-3(今後のスタンド・オフ防衛能力の運用(イメージ))


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資料:1分で分かる!スタンド・オフ防衛能力
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