現行の国家安全保障戦略、国家防衛戦略、防衛力整備計画(以下「三文書」という。)を策定した2022年と比べ、安全保障環境の変化が様々な分野で加速度的に生じている。
第1に、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序への挑戦が勢いを増している。特に、ロシアによるウクライナ侵略は、国際秩序の根幹を揺るがす暴挙である。ロシアは、ウクライナ侵略を4年以上継続しており、核兵器による威嚇ともとれる言動まで繰り返している。
第2に、インド太平洋では、中国・北朝鮮の更なる軍事力の増強や、中露や露朝の連携強化などがみられる。
中国は、国防費を継続的に高い水準で増加させ、十分な透明性を欠いたまま、軍事力を広範かつ急速に増強させており、中国の国防費の伸びは、2022年以降で見ても、わが国の防衛費の伸びを遥かに上回っている。また、中国は、尖閣諸島周辺における領海侵入をはじめ、東シナ海・南シナ海で、一方的な現状変更の試みを継続している。さらに、2025年6月の太平洋側での空母2隻の活動に加え、同年11月には、3隻目の中国空母「福建」が就役し、中国は、遠方の海空域における作戦遂行能力を着実に向上させている。
これに加え、中露の連携は、現行「三文書」の策定前にも見られたが、その後3年を経て、両国の戦略的連携は着実に深まっている。また、露朝軍事協力も、格段の深化を見せている。
第3に、各国等は、ロシアによるウクライナ侵略を教訓に、無人アセットの大量運用を含む新しい戦い方や長期戦への備えを急いでいる。
新しい戦い方に関して、ロシアによるウクライナ侵略でみられている事象を取り上げれば、多様かつ安価な無人アセットの大量投入や、これに伝統的な砲弾やミサイルを組み合わせた大規模な複合攻撃が展開されている。また、双方が電子戦、AI、宇宙、サイバー、情報戦といった要素を駆使した戦いとなっており、特に、戦場におけるAIの役割の拡大は目覚ましいものがみられる。そして、こうした要素を組み合わせたハイブリッド戦は、より巧妙なものになっている。
一方で、ウクライナ侵略における戦闘様相は、戦車や火砲、塹壕戦といった、伝統的な戦い方も組み合わさったものとなっており、新しい戦い方への備えと同様に、従来の装備品の活用も重要となっている。
加えて、戦場では、従来と比べ、きわめて短いサイクルで装備品や戦術が更新され、迅速かつ柔軟な技術革新が重要になっている。
このほか、ウクライナ侵略が4年以上にわたり続いていることからも明らかなとおり、平素からの備蓄や防衛生産・技術基盤のより一層の強化といった持続的な対応能力を確保することの重要性も浮き彫りとなっている。
このように、安全保障環境の変化が様々な分野で加速度的に生じているなか、まずは、現行の国家安全保障戦略に定める「対GDP比2%水準」を、2025年度中に、当初予算および補正予算を合わせて前倒して措置するとともに、「三文書」の2026年中の改定に向けて政府内で検討を行っている。
また、わが国を取り巻く厳しい安全保障環境を乗り切るためには、わが国が持てる力、すなわち外交力、防衛力、経済力、技術力、情報力、人材力の総合的な国力を強くし、あらゆる政策手段を組み合わせて対応していくことが重要である。こうした観点から、自衛隊の装備および活動を中心とする防衛力強化はもとより、海上保安能力、研究開発、公共インフラ整備、サイバーセキュリティ、わが国および同志国の抑止力の向上などのための国際協力をはじめ、政府横断的な取組を整理し、これらも含めた総合的な国力の観点からのわが国の安全保障の確保について、検討が必要とされている。その際、政府横断的な取組を技術力や産業基盤の強化につなげるとともに、有事であってもわが国の信用や国民生活が損なわれないように経済安全保障政策を推進し、経済ファンダメンタルズを涵養していくことも不可欠であるといった観点から、抑止力・対処力の強化と経済財政の在り方についても検討が必要とされている。こうした認識のもと、2026年4月には「総合的な国力から安全保障を考える有識者会議」が内閣官房に設置され、内閣総理大臣によっての初会合が開催された。
防衛省としては、2025年10月、防衛大臣のもとに、現行の「三文書」に基づく取組の進捗管理とその加速化のための検討を行うこと、また、新たな「三文書」の検討を行っていくことを目的とした防衛力変革推進本部が置かれ、改定に向けた議論が進められている。

防衛力変革推進本部