東南アジア諸国連合(ASEAN)は、地域の多国間安全保障の枠組みとして安全保障問題に関する対話の場であるASEAN地域フォーラム(ARF)やASEAN国防相会議(ADMM)を開催するなど、地域の安全保障環境の向上や信頼醸成に努めてきた。
2023年9月には、初となるASEAN単体での海上軍事演習が北ナツナ海を含むインドネシア周辺海域で行われた。
一方、ASEANは域外国との関係も重視し、ADMMにわが国を含む域外8か国を加えた拡大ASEAN国防相会議(ADMMプラス)を開催している。加えて、米国、中国、ロシア、インドなどの大国と海上共同演習を実施しており、2025年12月には、2019年以来の第2回目開催となる米ASEAN海上共同演習を実施した。
また、ASEANと中国の間では、長年にわたり「南シナ海行動規範(COC:Code of Conduct of Parties in the South China Sea)」の策定に向けた協議を続けており、2019年7月、中国は、中国・ASEAN外相会議において、COCの「単一の交渉草案」の一読が完了したことを発表した。その後、第二読の開始がなされ、2021年8月のASEAN外相会議においては、序文の暫定合意に達したことが言及された。さらに、2023年7月の中国・ASEAN外相会議では「実効的かつ実質的なCOCの早期妥結を加速させるためのガイドライン」が採択され、同年10月には、第三読の開始がなされ、2025年1月のASEAN外相リトリートの議長声明において、第三読が完了したことが表明された。2026年にASEAN議長国を務めるフィリピンのマルコス大統領は、COCの早期締結に向け意欲をみせている。
また、2025年以降緊張が高まったカンボジア・タイ間の情勢を巡って、ASEANは、特別外相会議を実施するなど、緊張緩和に向けた取組を行ってきている。同年5月以降、国境問題を契機に両国間で軍事衝突が発生した際には、7月にASEAN議長国であるマレーシア(当時)や米国などの仲介もあり、カンボジア・タイ両国が即時かつ無条件の停戦合意に至った。さらに8月には、ASEAN監視団の設置を含む停戦合意実施のためのメカニズムについて合意がなされ、10月には、米国およびマレーシアの首脳の立会いのもと、カンボジア・タイ間で国境紛争に関する共同宣言が署名された。しかし、その後も衝突が発生し、12月には再度即時停戦に合意したことが発表されたが、いまだに国境付近は緊張状態にあり、ASEAN監視団による活動を含め、両国間の関係正常化に向けた動きが注目される。