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<VOICE>医学的見地からのハラスメント問題

防衛省ハラスメント防止対策有識者会議委員
 医療法人社団 円遊会
理事長 精神科医・産業医 関谷 純平

令和2年度に公表された厚労省の「職場のハラスメントに関する実態調査」によると、過去3年間にハラスメントを一度以上経験した労働者の割合はパワハラで31.4%、セクハラで10.2%との報告がなされており、実に労働者の約3人に1人がパワハラを、約10人に1人がセクハラを受けたと言う調査結果が出ています。このように高頻度で発生するハラスメントですが、その影響は被害者に自信低下・罪悪感・無価値感などの心理的苦痛、睡眠障害・集中困難・抑うつ気分などの心身不調として現れ、更にはうつ病や虚血性心疾患の発症リスクを高める等の報告がなされています。また注意すべきは、ハラスメント目撃者についても健康・意欲・幸福感に悪影響が見られることがわかっており、それが組織全体の欠勤率・離職率の増加、また組織の劣化や生産性低下を生み、深刻なダメージを組織そのものに与えることも明らかになっています。防衛省・自衛隊は国防と言う国家存立にとって最も基本的な、また重要な役割を担う組織であります。その組織が常に最大限の能力を発揮できるように、ハラスメントを起こさない・起こさせない・許容しないという風土を、これからも不断の努力で組織内に醸成していくことが大切であると考えます。

筆者(執務室にて)

筆者(執務室にて)