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第III部 防衛目標を実現するための3つのアプローチ

2 在外邦人等の保護措置及び輸送への対応

1 基本的考え方

防衛大臣は、外国での災害、騒乱その他の緊急事態に際し、外務大臣から在外邦人等の警護、救出などの保護措置又は輸送の依頼があった場合、外務大臣と協議をしたうえで、自衛隊法第84条の3(在外邦人等の保護措置)または同法第84条の4(在外邦人等の輸送)の規定に基づき、在外邦人等の保護措置又は輸送を行うことができる。

2 防衛省・自衛隊の取組

在外邦人等の保護措置又は輸送を迅速かつ的確に実施するため、自衛隊は、部隊を速やかに派遣する態勢をとっている。具体的には、陸自ではヘリコプター部隊と陸上輸送を担当する部隊の要員を、海自では輸送艦などの艦艇(搭載航空機を含む)を、空自では輸送機部隊と派遣要員をそれぞれ指定し、待機態勢を維持している。

また、これらの行動においては、陸海空自の緊密な連携が必要となるため、平素から統合訓練などを行っている。2022年8月から9月にかけて、自衛隊は関係機関とともに、国内において在外邦人等輸送にかかる部隊の一連の行動及び関係機関との連携要領を訓練し、統合運用能力の向上及び関係機関との連携強化を図った。さらに、毎年タイで行われている多国間共同訓練「コブラ・ゴールド」の機会を活用し、2023年2月から3月には、関係省庁、在タイ日本国大使館などの協力のもと、在外邦人等の保護措置における一連の活動を演練し、防衛省・自衛隊と外務省との連携を強化した。

防衛省・自衛隊は、これまでに6件の在外邦人等の輸送を実施してきた。直近では、2023年4月、2022年の自衛隊法第84条の4の改正後初めての在外邦人等の輸送となる、在スーダン共和国邦人等の輸送を実施した。具体的には、同月19日、スーダン共和国の情勢にかんがみ、外務大臣から防衛大臣に対し、同国に滞在する邦人等の輸送の実施に必要となる準備行為の要請があり、同月20日、防衛大臣は空自輸送機のジブチ共和国までの移動及び待機を行うための命令を発出した。これを受け、空自航空支援集団司令官を指揮官とする「在スーダン共和国邦人等輸送統合任務部隊」が編成され、同月21日以降、C-130輸送機、C-2輸送機及びKC-767空中給油・輸送機が、順次ジブチ共和国へ向け出発した。

同月23日、外務大臣から在スーダン共和国邦人等の輸送の依頼を受け、同日、防衛大臣はスーダン共和国からの邦人等の輸送活動を実施するための命令を発出し、同月24日(現地時間)、C-2輸送機1機により、在留邦人とその家族計45名をスーダン共和国からジブチ共和国まで輸送した。この活動を通じて、ジブチ共和国には、C-130輸送機2機、C-2輸送機2機及びKC-767空中給油・輸送機1機並びに約180名の隊員が派遣された。その後、同月28日に外務大臣からの当該邦人等の輸送の終結に関する依頼を受け、同日、防衛大臣が終結のための命令を発出した。

スーダンからジブチへ向かう空自C-2輸送機の機内の様子

スーダンからジブチへ向かう空自C-2輸送機の機内の様子

参照II部6章3項6(在外邦人等の輸送・保護措置)資料22(在外邦人等の輸送実績・自衛隊による在外邦人等の輸送の実施について(令和4年4月22日閣議決定))