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第III部 防衛目標を実現するための3つのアプローチ

3 防衛装備品の可動状況の向上

1 装備品の可動数の現状

自衛隊で使用される装備品は、耐久性よりも性能を重視しており、民生品の使用条件よりも過酷な状況で使用されていることから、一般的な用途に比べ、頻繁な整備や部品交換が発生する特性をもっている。そのため、部品交換を見越して、予備の部品を一定数保有しておく必要がある。

一方、装備品の高度化・高性能化に伴い、部品の調達単価と整備費用が上昇し、維持整備予算も増加させてきているが、必ずしも十分ではなかったことから、部品不足による非可動が発生している。一部の装備品では、可動状態にない同じ装備品から部品を取り出し転用する、いわゆる「共食い整備」を実施しており、部品の取り出しと取り付けで、通常の部品交換の2倍の整備作業が必要となるため、現場部隊に過度な負担を強いている。

参照図表III-1-6-2(装備品の可動状況の分類)

図表III-1-6-2 装備品の可動状況の分類

2 防衛装備品の可動数の向上
(1)部品の確保

防衛装備品の高度化・複雑化に対応しつつ、リードタイムを考慮した部品費と修理費の確保により、部品不足による非可動を解消し、2027年度までに装備品の可動数を最大化する。このため、例えば部品の需要量をAIにより見積もる機能を補給管理システムに付加するなど、ロジスティクスにかかるシステムの改修により、需給予測を精緻化し、適正在庫を確保することにより自衛隊全体として部品の効率的な分配を図ることで、部隊が部品を受け取るまでの時間を短縮化する。また、主要な補給倉庫を自動化・省人化、システム化された倉庫に改修を進めることで、正確な在庫管理を可能とし、部隊のニーズに応じて迅速に部品を供給することとしている。

参照図表II-4-3-5(装備品の維持整備費及び弾薬の整備費の推移)

(2)部外委託の推進

可動数の増加にあたっては、限られた資源を有効に活用するため、維持整備などの部外委託を推進するなど、部外力を活用する。

一部の装備品においては、維持整備計画の分析や、必要なデータ収集などを行い、検査・整備項目の削減を目指す部外委託の取組を行っているところ、このような、部外委託の取組の成果を活用した装備品の部隊整備や部品修理など、より効率的な維持整備に向けた取組を一層推進することとしている。これらの取組により、維持整備業務に従事する隊員を中心に部隊負担を軽減しつつ、装備品の可動数の増加を図っていくこととしている。

(3)デジタルトランスフォーメーション(DX)の導入

各種業務を効率的に実施していくためには、最新のデジタル基盤の整備などによりデジタルトランスフォーメーション(DX)を通じて、業務のあり方を大きく変革していく必要がある。そのうえで、後方支援分野において、DXの導入を推進し、維持整備の最適化を図ることとしている。具体的には、AIを活用した補給管理システムを導入するほか、部品などの在庫状況をより一層適切に把握するため、電波を用いてICタグの情報を非接触で読み書きする自動認証技術(RFID:Radio Frequency Identification)や、装備品の部品などを応急的に製造するための3Dプリンターについて、実証試験の成果も踏まえ、その導入を図ることにより、在庫管理などの効率化を進め、後方支援分野における維持整備体制を最適化することとしている。

(4)PBL(Performance Based Logistics)2などの包括契約の拡大

2012年度から航空機を対象としたPBL契約を締結していたところ、2021年度には艦船用ガスタービン機関のPBL契約を締結するなど、航空機以外にも対象範囲を拡大している。効果的・効率的な維持・整備を実現するために費用対効果を検証しつつ、装備品の可動率向上につながるPBLの適用対象の拡大に取り組むこととしている。

2 装備品の可動状況を向上させるため、装備品の検査・修理などの維持整備業務について、修理期間の短縮や一定の部品在庫の確保などを条件に加えた複数年間の包括的契約を結ぶもの。