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第II部 わが国の安全保障・防衛政策

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4 わが国を取り巻く安全保障環境とわが国の安全保障上の課題

わが国の安全保障上の目標を定めるに当たり、わが国を取り巻く安全保障環境と安全保障上の課題は次のとおりである。

1 グローバルな安全保障環境と課題

グローバルなパワーの重心が、インド太平洋地域に移る形で、国際社会は急速に変化している。国際秩序に挑戦する動きが加速している。こうした現在の国際環境の複雑さ、厳しさを表す顕著な例は次のとおりである。

  • 他国の領域主権などへの力による一方的な現状変更及びその試みがなされている。
  • サイバー空間・海洋・宇宙空間・電磁波領域などにおけるリスクが深刻化している。
  • 経済安全保障の必要性が拡大している。一部の国家が、他国に経済的な威圧を加え、自国の勢力拡大を図っている。
  • 国際社会のガバナンスが低下しつつある。気候変動など共通の課題対応で国際社会が団結しづらくなっている。
2 インド太平洋地域における安全保障環境と課題

「自由で開かれたインド太平洋」(FOIP)というビジョンのもと、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の実現、地域の平和と安定の確保は、わが国の安全保障にとって死活的に重要である。

(1)中国の安全保障上の動向

中国は、十分な透明性を欠いたまま、軍事力を広範かつ急速に増強しており、東シナ海、南シナ海などにおける、力による一方的な現状変更及びその試みを継続・強化している。また、ロシアとの戦略的な連携の強化、国際秩序への挑戦を試みている。さらに、十分な透明性を欠いた開発金融、他国の中国への依存を利用した経済的な威圧を加える事例も起きている。台湾について武力行使の可能性を否定せず、また、台湾周辺における軍事活動が活発化している。

現在の中国の対外的な姿勢や軍事動向などは、わが国と国際社会の深刻な懸念事項であり、わが国の平和と安全及び国際社会の平和と安定を確保し、法の支配に基づく国際秩序を強化するうえで、これまでにない最大の戦略的な挑戦であり、わが国の総合的な国力と同盟国・同志国などとの連携により対応すべきものである。

(2)北朝鮮の安全保障上の動向

北朝鮮のミサイル関連技術及び運用能力は急速に進展している。また、核戦力を最大限のスピードで強化する方針である。

北朝鮮の軍事動向は、わが国の安全保障にとって、従前よりも一層重大かつ差し迫った脅威となっている。

また、拉致問題は、わが国の主権と国民の生命・安全にかかわる重大な問題であり、国の責任において解決すべき喫緊の課題である。

(3)ロシアの安全保障上の動向

ウクライナ侵略など、ロシアの自国の安全保障上の目標のために軍事力に訴えることを辞さない姿勢は顕著である。北方領土でも軍備増強及び活動が活発化している。また、中国との間で戦略的な連携を強化してきている。

ロシアの対外的な活動、軍事動向などは、今回のウクライナ侵略などによって、国際秩序の根幹を揺るがし、欧州方面においては安全保障上の最も重大かつ直接の脅威と受け止められている。また、わが国を含むインド太平洋地域におけるロシアの対外的な活動、軍事動向などは、中国との戦略的な連携と相まって、安全保障上の強い懸念である。

参照図表II-2-2(わが国周辺国などの軍事動向に関する記述の対比表)

図表II-2-2 わが国周辺国などの軍事動向に関する記述の対比表