現代において宇宙空間は、各種の観測衛星、通信・放送衛星、測位衛星などが打ち上げられ、社会、経済、科学など幅広い分野における重要インフラとなっています。
また、近年の情報通信技術の発展により、インターネットなどの情報通信ネットワークは人々の生活のあらゆる側面において必要不可欠なものになっており、そのため情報通信ネットワークに対するサイバー攻撃は、人々の生活に深刻な影響をもたらしうるものです。
電磁波は、テレビ、携帯電話による通信、GPSによる位置情報など日常生活において、さまざまな用途で利用されています。
このように、われわれの暮らしの中に深く浸透してきている宇宙・サイバー・電磁波領域ですが、安全保障という観点からもこれらの領域の重要性は非常に大きなものとなってきています。
皆さまの中には、外出時に天気予報や地図アプリを利用される方も多くいらっしゃると思います。
外出先で通信が途切れてしまい、苦労されたご経験もあるかもしれません。
自衛隊が各地に展開する際も同じで、気象状況や部隊位置の把握、味方との通信手段の確保は欠かせません。
日頃の情報収集や警戒監視を含め、こうした自衛隊の活動は人工衛星から得られるデータ・情報に大きく支えられています。
一方、スペースデブリの急増や対衛星兵器の開発など、人工衛星の機能が損なわれる危険性も高まっており、宇宙空間の安定的利用の確保が重要な課題となっています。
情報通信ネットワークは、様々な領域における自衛隊の活動の基盤であり、これに対する攻撃は、自衛隊の組織的な活動に重大な障害を生じさせます。サイバー攻撃は相手の活動を低コストで阻害可能な非対称的な攻撃手法として認識されており、各国の軍隊はネットワークやシステムに侵入してマルウェアを埋め込むなどして、指揮統制や通信機能を無力化する能力の獲得を図っていると指摘されています。また、サイバー攻撃により、情報の窃取や重要インフラ等の脆弱性が高まる可能性も懸念されています。サイバー領域の安定的な利用は自衛隊の活動、ひいては国家・国民の安全に不可欠なものです。
通信機器の普及、装備品の近代化、技術進歩などにより、近年、軍事における電磁波への依存はますます進んでいます。例えば、装備品のネットワーク化や、小形無人機のスウォーム(群れ)飛行といった技術は、電磁波の利用が不可欠です。
これに伴い、相手の電磁波の利用を妨害する技術も進歩しており、諸外国では、無線通信への妨害や、測位信号の妨害による無人機の活動の阻害といった事例も報告されています。
このように、電磁波は、現代の戦闘様相における攻防の最前線であり、自衛隊もこうした電磁波領域の能力を強化していく必要があります。
軍事力の質・量に優れた脅威を抑止及び対処するためには、陸・海・空という従来の領域における能力と宇宙・サイバー・電磁波といった新たな領域における能力を有機的に融合させる領域横断作戦の実現が必要です。
航空自衛隊を中心として、米軍などと連携しつつ、宇宙空間の安定的利用を妨げるリスクの監視及び回避のためのSSAの強化を進めています。
複数の小型衛星をネットワーク化して運用する小型衛星コンステレーションの利用による衛星画像の取得や、Xバンド防衛通信衛星の活用などによる、宇宙を利用した情報収集、通信、測位などの各種能力の向上を進めています。
衛星を介した通信手段の多重化・多様化など、宇宙利用における抗たん性強化を図っています。
サイバーセキュリティにかかる最新のリスク、対応策、技術動向を常に把握しておくため、民間企業や米国をはじめとする諸外国と効果的に連携しています 。
部内におけるサイバー教育の強化とともに、サイバーセキュリティに関する専門的知見を備えた優秀な人材を発掘することを目的にしたサイバーコンテストの開催や、高度な知見を有するサイバーセキュリティ統括アドバイザーの採用に向けた取組など部外の人材の活用も進めています。
自衛隊のみならず相手方が使用する電磁波が入り乱れる場においても、自衛隊が使用する電磁波が効果を発揮できるよう、電磁波を適切に管理・調整するための研究や運用態勢の構築を進めています。