

本部長 1等陸佐 宮内 雅也
~5月のあいさつ~
皆様こんにちは。当ホームページをご覧いただき、ありがとうございます。
桜も散り、新緑が目にまぶしい季節になりました。時折暑い日もありますが、気候も比較的穏やかで梅雨を前にしたこの季節は多くの方にとって自然を楽しむ絶好のタイミングですね。このような平穏な日々の裏で自衛隊は我が国を静かに支えています。具体的には、艦船や航空機による警戒監視や情報収集、戦闘機によるスクランブル(対領空侵犯措置)を始め、災害発生時の派遣活動や平素の教育訓練、海外にあってはジプチ共和国での海賊対処行動や国連の実施する各種PKOへの司令部要員の派遣等、数多くの任務や訓練を遂行しています。そのような中、先般愛知県でT4練習機の墜落という痛ましい事故が発生しました。原因究明にはしばらくの時間がかかると思われますが、先ずは行方不明者の早期の発見を祈るばかりです。当該事故のように、自衛官は平時あっても生命をかけて任務に当たっていますが、今回は厳しくも現実的なお話をしたいと思います。
自衛官が殉職(公務中の死亡)した場合、政府からは公務による危険に対する国家の責任と遺族支援の観点から次のような補償や給付が行われます。①災害補償制度として、遺族補償年金(扶養家族に対する定額支給)または遺族補償一時金(階級や経歴によるも多くて数千万円)、葬祭料、損害補償(遺族への慰謝料的意味合い)、②退職手当(勤務年数に応じた金額に加え特別加算あり)、③扶助として、地方自治体や公益団体(自衛隊援護協会からの支援等)の扶助制度、④重大事故、災害派遣や特別の任務中の殉職に際しては、特別弔慰金が支給、⑤防衛大臣からの表彰や感謝状・勲章等の名誉措置、等があります。
殉職された事故の形態、殉職自衛官の階級や経歴により、支給される金額等に違いがありますが、国の防衛に任ずる自衛官に対するものとしてどのように感ずるかは人それぞれでしょう。その補完ではありませんが、ご遺族を支える仕組みの一つとして「防衛省共済組合の団体生命保険」があります。防衛省共済組合は、陸海空自衛官に加え防衛省職員で構成する約27万人の巨大な組合であり、それがため民間の保険に比して割安で万が一に備えた団体生命保険(月々1万円で最大6千万円の補償)が整備されています。これは、単なる金銭的補償にとどまらず、国のための働く者への社会的な責任の一端として機能しています。金銭が悲しみを癒すわけではありませんが、生活の不安が和らぐことで大事な方の喪失の悲しみに向き合う余裕が生まれるのもまた事実なのをこれまで見てきました。
各種任務につく自衛官が殉職する事故が今後発生しないとは言い難いとは思いますが、国民の方々が平和な日常を送れるのは、誰かの覚悟と犠牲の上に成り立っているとの思いを持っていただければ有難いと思います。
~4月のあいさつ~
皆様こんにちは。当ホームページをご覧いただき、ありがとうございます。
諸般の事情により2月と3月のコメントが掲載できませんでした。申し訳ありません。
4月に入り令和7年度の業務がスタートしましたが、今回は陸上自衛隊での平素の業務を作戦、いわゆるオペレーションと捉えた一場面を紹介したいと思います。
陸上自衛隊では、年2回、4月と10月(北海道では5月と11月)に約10日間かけて演習場の整備を行っています。演習場を自分たちの道場と捉え、より使いやすいように中期的な計画をたてて定期的に整備を行っています。この際、演習場に野営して整備に当たることが多いです。
各部隊においては、与えられた任務(整備作業)を遂行するため、作戦計画をたてて隷下部隊に任務を付与します。具体的には、与えられた期間内で整備作業を終了させるため、必要な器資材や装備を準備し、実効性ある作業工程表を作成して、隷下部隊に実行可能な任務を付与します。次に現場に進出したならば、現場の状況を偵察・確認して、必要に応じ事前に作成した作業工程表や付与した任務を修正し、実際に隷下部隊に作業を命じます。そして、作業が始まった以降は、日々作戦会議等を行い、作業進捗状況の認識を共有しつつ、必要に応じて新たな命令を付与します。具体的には、計画通りの進捗状況ならば必要ありませんが、ある部隊の作業進捗が遅れている場合は、その原因を探求し、人員や器材の増加や任務の変更等の処置を行い、全体として任務を遂行できるように最適化を図っていきます。
ちなみに、野営で当該整備を行う場合は、隊員たちが装備を使用して野外炊事を行ったり、朝や夕の一定の時間を訓練で使用したり(我々は間稽古と言っています)、夜は宴を行い部隊の団結を図ったりしています。私が連隊長であった際は、当該整備期間を活用してトーナメント方式で野外炊事競技会を行ったりもしました。
陸上自衛隊の部隊の大半は、他自衛隊と異なり、教育訓練を主体として1年を費やしますが、事態が発生した場合いつでも対応できるように、努めて平素の訓練をオペレーションと捉えて隊務を運営していることをご承知おきください。