防大かわら版
防大かわら版vol.160
掲示内容一覧
- 中期学生隊学生長としての決意・抱負
- 遠泳訓練所感
- 夏季定期訓練所感
- 前期を振り返って
中期学生隊学生長としての決意・抱負
酒井 学生
令和6年度中期学生隊学生長という任に就くにあたり決意と抱負を述べます。
初めに、学生隊学生長という責任ある役職に就き勤務を出来ることに感謝し、より良い防衛大学校のために、自らの能力を最大限に発揮していく決意です。
学生隊の年間方針は「日本の未来を担う者としての自覚の芽生」です。前期勤務学生を中心とした全学生の努力によって、年間方針を達成するための土台は築かれています。中期で更なる高みを目指すために中期方針として「考動」を掲げます。
今年で72年目を迎え、旧海軍兵学校69年の歴史を超えた防衛大学校は、防衛大学校のみならず、視野を広げ多角的視点から将来の自衛隊や、日本の行く末を考えながら日々行動していくべきであると自覚をしています。
上記を踏まえて、考えながら動くという意味で「考動」を中期方針としました。
日々様相が変化している世界情勢からも、我々は慣習にとらわれず、リーダーに求められる資質を涵養していく必要があります。全学生が将来の勤務に必要な資質の涵養のために「考動」していけるよう、我々69期はその核心となり後輩や職員と連携しながら、より良い学生隊のための変革の原動力となっていきます。
以上を達成するために「信頼」をモットーに勤務していきます。
約1800人ひとりひとりを同時に見ることは不可能です。しかし、学生隊として「考動」を達成するためには、信頼されることはもちろん大切ですが、それ以上に「信頼する」ことが大切だと思います。
信頼関係は、一方的なものでは成立しません。学生隊学生長である私が、大隊学生長、学生隊本部とお互いに信頼し合うことで強固な信頼関係が構築でき、大隊学生長は中隊学生長と、中隊学生長は小隊学生長と、小隊学生長は部屋長とそれぞれ信頼関係を連鎖させていくことで学生隊全体が一つになることができます。
その結果、全学生に「考動」を浸透させることが可能になると考えます。
私は学生隊学生長として、その信頼関係の連鎖の源流になるべく勤務をしていきます。
中期は、開校記念祭を含む行事が盛り沢山です。より良い防衛大学校を感じて頂けるよう日々の生活に励んでいきますので、今後も変わらぬご支援、ご協力をよろしくお願い致します。掲示内容一覧
遠泳訓練所感
深田 学生
防衛大学校1学年の夏季定期訓練における、8キロ遠泳は、身体面と精神面の両方が鍛えられる、幹部自衛官となる過程の一つの山場であると思います。遠泳訓練は、校内でのプール訓練から始まり、30分、60分、90分、120分泳と訓練時間が伸びていきました。プール訓練では、6月から行っていた準備訓練の成果もあり、ほとんどの学生が難なく泳ぎきり、私自身も、幼少期より水泳を習っていたこともあり、余裕を持って実施することができました。
続く海面訓練において私は、約60名の先頭を泳ぐ区隊長に任命されたこともあり、意気揚々と海面訓練に臨みました。
しかし、実際に海面訓練が始まると、徐々に余裕は消えていきました。
特に、3キロ泳に臨んだ日は海の条件が悪く、走水海岸は赤潮に覆われ、アカクラゲに加えてクラゲの中でも特に危険なカツオノエボシまで漂っていたため、私の区隊は隊列が乱れ、上手く泳ぐことができませんでした。
そのような状況において私は、「隊列を乱すことなく全員を完泳させる」という任務を持つ区隊長の重責を再認識しました。
それ以降は、区隊学生の声を参考にペースに気を配ったり、教官と話し合い、区隊全体の現況把握をしたり、先導者として全体をみることに努めました。
多くの上級生等から激励をいただき、迎えた8キロ遠泳本番。
雨が降っていたものの波は穏やかで、比較的泳ぎやすかったです。途中クラゲに翻弄されながらも、同期と励ましあい、途方もなく思えた8キロもあっという間に感じました。海から上がると、そこではたくさんの保護者や地元の方々が拍手で迎えてくださり、大きな達成感を感じることができました。
今回の遠泳訓練を通して、同期と団結するとどんな試練も乗り越えられ、大きな達成感を得られ絆が更に深まることや、リーダーとしての全体への気配りの大切さを学びました。今後の訓練等においてもこの経験を活かし、仲間と切磋琢磨しながら更に努力する所存です。
大隅 学生
防衛大学校第1学年は、夏季定期訓練において遠泳訓練を実施しました。これは、走水海岸沖合を泳いで周回するもので、今年度は、訓練の開始から終了までに約5時間を要しました。
4月の泳力判定に始まり、校内プールでの準備訓練を重ねてきましたが、泳力に自信がない学生も多く、不安や戸惑いも多い中始まった遠泳訓練でした。
結果としては、水泳の得手不得手に関わらず区隊全員の学生が遠泳訓練を完泳することができました。
遠泳訓練は、当初、屋外プールにおいて、時間泳(30分、60分、80分、120分)を実施してから、海上における慣熟訓練実施後、1キロ、2キロ、3キロと徐々に泳ぐ距離を伸ばしていきました。
東京湾は濁りがひどく視界が悪いうえに、クラゲも多く発生しており、泳ぎにくさを感じることが多々ありましたが、隊列を組み、互いに励まし合いながら、指定の訓練距離を泳ぎ切ることができました。また、泳ぎながら口にした練乳やゼリー飲料の美味しさが、疲労と海水のしょっぱさを忘れさせてくれました。他にも、潮の流れや高波、赤潮や低水温と、様々な状況下での訓練は、新鮮で楽しかったです。
8キロ遠泳当日は、小雨が降り水温もこれまでよりやや冷たく感じましたが、波が穏やかで、クラゲも少なく海の条件が比較的良かったため、区隊としてスムーズに進んでいくことができました。後半になるにつれて、疲労が感じられましたが、6月から当日までの練成を思い出しながら、同期からの激励と同期の頑張る姿に力をもらい8キロを区隊全員で泳ぎ切ることができました。今回の訓練に携わっていただいた職員の皆様及び当日応援に来てくださった関係者に感謝するとともに、共に泳いだ同期との信頼関係を大切にこれからも、学業、訓練等に励んでいきます。
籠谷 学生
入校して以来、初めて本格的訓練として取り組むのが夏季定期訓練での8キロ遠泳です。
私は、4月の泳力判定で100メートルを泳ぎ切り、5月からの水泳補備訓練は回避しましたが、泳力判定時のタイムが遅かったため、6月からの水泳補備訓練に参加することになってしまいました。
初めは、校友会の時間を水泳補備訓練に充てなくてはならないことから少し憂鬱な気持ちで補備訓練に臨みましたが、いざ数百メートル泳いでみると、中々進まずバテてしまい、自分の泳力のなさを痛感しました。それから約3週間、ほぼ毎日1キロ以上泳ぎ続け、7月の夏季定期訓練を迎えました。
定期訓練の最初の一週間はプールで時間泳を行いました。
徐々に泳ぐ時間が長くなり60分、70分、90分、そして120分…それでも何とかついていけたのは、補備訓練で長時間泳ぐことに慣れ、泳ぎ方を大幅に改善したおかげだと思います。プール訓練を終え、少し自信が湧いてきた私は、続く海面訓練が楽しみでさえありました。
海面訓練では、距離が伸びたこともあり、パニックで船に収容される人や、クラゲの大量出現により区隊がバラバラになってしまい、距離泳(1キロ泳、2キロ泳)を時間内に泳ぎ切ることができませんでしたが、訓練の中で一番長い距離である4キロ泳を、海への慣れもあり何とか泳ぎ切ることができたことで本番に向けての自信につながりました。
上級生からのアドバイスの中に「アカクラゲに気を付けるように」とありましたが、実際はミズクラゲもアカクラゲもどちらも痛いことには変わりなく、決して気持ちのいいものではありませんでした。当分、水族館のクラゲコーナーは避けようと思います。
そして迎えた8キロ遠泳本番。当日は朝から雨が降っており水温もこれまでより冷たく感じましたが、クラゲが比較的少なく、波も高くなかったことが幸いし、割とスムーズに4キロ地点まで到達することができました。
しかし、ここからさらに倍の距離を泳がなければならないことに心が折れそうになりましたが、バディをはじめ周りの同期たちが頑張って泳いでいる姿に励まされ無事8キロを完泳しました。
私はこの遠泳訓練で改めて、防大生活においても、またその先の人生においても同期は大切にすべき存在であることを実感することができました。辛くても周りを見れば力をもらえるこの関係を今後も大事にしたいと思います。
山田 学生
第1学年の夏季定期訓練一番の山場が遠泳訓練であり、泳ぐ距離は、8キロという途方もない距離です。しかし、私は小学生の時に水泳を習っていたのに加え、高等工科学校では海上での水泳訓練もあったため、特段苦しい訓練だとは思っていませんでした。
6月から、校内のプールでの訓練が始まりましたが、私の想像通り、プールでの訓練はそこまで苦しいものではなく、難なく訓練を実施することができました。そのまま7月の夏季定期訓練期間に入り、毎日泳ぐ生活が続く中、海面訓練が始まりました。
そこで私は、区隊の救護班に所属することになりました。救護班とは、クラゲに刺された学生やパニックになった学生を救助する任務を持つ学生のことであり、私の区隊は10名が割り当てられました。訓練中、実際にクラゲに刺された同期の泳ぎを補助し、伝馬船へ収容する等、非常にやりがいを感じるとともに、任務に対する誇りと責任を胸に日々の訓練に臨みました。
そして迎えた8キロ遠泳当日、今まで通り泳げば完泳できると十分な自信を持って臨みましたが、5キロ地点付近で、私自身が赤クラゲに刺さてしまいました。これまで味わったことのない激痛が走り、パニックになりかけましたが、自分が救護班である責任と、同じく刺されても泳ぎ続ける同期の姿に勇気をもらい、より一層強い気持ちで泳ぎ続け、私の区隊は全員完泳することができました。
今回の遠泳訓練で感じたことは、どんなに自信をもって臨んだことであっても、想定外はあるという事と、同期の頑張りが自分の頑張りに直結するという事です。この2つを胸に、これからの防衛大学校での生活においても同期を大切に共に頑張っていきます。
夏季定期訓練所感[陸上]
田島 学生
2学年陸上要員の夏季定期訓練は、防衛大学校校内及び関山演習場において、陸上戦闘における各個動作を概ね修得することを目的とし、訓練を実施しました。特に、関山演習場では、校内では実施できない訓練を行うことで、陸上自衛官として必要な実践的知識及び技能を修得することができました。
特に印象に残っているのは、行軍(行進)及び分隊長として行動したことです。
行軍は、当初校内で12キロ行軍を行い、行進要領等を確認したのち、関山演習場において32キロ行軍を実施しました。12キロ行軍では、背嚢(リュック)の腰ベルトを上手く使えず、肩に負担が集中してしまいました。この反省を活かし32キロ行軍では、背嚢の肩、腰ベルトの調整、背嚢の重心を考慮した入れ組要領等により、肩のみに負荷を感じることなく完歩することができました。
また、本訓練間、我々の訓練班は3個分隊を編成し、その中で私は、分隊長を命ぜられました。
分隊長を実施するにあたり、日頃から訓練担当指導教官に指導いただいていた「気配り目配り心配りを心掛ける」という点を、常に念頭に置き分隊を指揮しました。
今回の訓練で、分隊長という役職を経験したことで、状況判断、命令下達、その実行を監督することの難しさという新たな課題を見つけることができました。
本定期訓練期間中、慣れない環境に加え、長時間に亘る訓練等により疲労が溜まることもありましたが、隣には常に同期がおり、互いに助け合い、共に鼓舞し合うことで団結を更に深めることができ、厳しい訓練も乗り越えることができました。
これからの学生生活を、卒業まで2年半もあるではなく、2年半しかないという心持ちで、同期と切磋琢磨しながら精悍な陸上自衛官となれるよう日々精進していきたいです。
尾堂 学生
3学年陸上要員の夏季定期訓練は、東北、東部、中部及び西部方面隊の普通科連隊又は即応機動連隊に分かれ、約3週間部隊で生活しながら訓練を行いました。
私は、近年注目度が高まっている南西方面の防衛警備を担任する、西部方面隊の第42即応機動連隊(北熊本駐屯地)において部隊実習を実施しました。本訓練において防衛大学校では経験できない部隊ならではの訓練を行うことができ、自身の練度を向上させるとともに防衛大学校と実任務に就く部隊との訓練、生活の差について学ぶ事が多くありました。
特に、防衛大学校ではそれぞれ別の科目として訓練していた行進、陣地構築及び戦闘訓練等を一連の行動として実施し、行進においては地形に合わせて警戒する方向や行進隊形を変化させ、陣地構築を実施する前には地域一帯に敵が侵入していないか確認をする等、常に敵を意識して行動していたことが印象に残っています。
また、即応機動連隊に配備されている機動戦闘車と連携して敵を攻撃する普戦協同訓練等、防衛大学校の訓練では経験できないことを経験できたことが印象に残っています。
この他にも、訓練期間を営内で生活したことにより、年齢の近い陸士や経験豊富な陸曹、准陸尉と接する機会が多くあり、防衛大学校で生活していては知ることのできない現場の隊員の意見や、約2年半後に私達が幹部に任官するにあたり必要なことについて考える時間が多くありました。
今回の訓練を通じて、訓練において自身の能力を向上させるだけでなく、今後の学生舎生活や任官後の理想とする幹部自衛官像について自身の考えを明確にすることができました。今後は、その理想に1日も早く近づけるように日々努力していきます。
春日 学生
これまで経験したあらゆる訓練の中で、4学年の夏季定期訓練は、私にとってまさに“集大成”といえるものでした。これまで実施してきた、基本訓練を実任務により近い形で再現し、訓練を通じてあらゆる場面で学生自ら小部隊指揮官となり、訓練班を指揮したことはこれから幹部自衛官になる上でとても良い経験となりました。
本定期訓練では、北海道大演習場において攻撃総合訓練、防御総合訓練及び統合幕僚監部をはじめとする各種部隊研修等を実施しました。
中でも最も印象深い訓練は、行進に引き続き偵察、陣地攻撃を2夜3日かけて行う攻撃総合訓練です。この訓練は4年間の中で最も体力的、精神的に厳しい訓練でした。これまでは、それぞれ別の科目として実施してきましたが、今回は、約40キロというこれまで最長の夜間行進に始まり、わずかな休養の後、敵陣地の偵察(昼間及び夜間)、陣地攻撃・目標奪取までを一連の流れで実施しました。連続した状況下での行動により蓄積した疲労と睡魔に加えて行進開始前から雨が降ったり止んだりと生憎の天候の中での訓練でしたが、同期の頑張る姿や声掛けに支えられなんとか無事に訓練を終えることが出来ました。
今後は、訓練を“実施する立場“ではなく“実施させる立場”へと進んでいきます。同期の頑張りを見て苦しいときに踏ん張れたように、今後幹部自衛官になる人間として、部下を背中で引っ張ることのできる自衛官となれるよう残り7ヶ月間、学科・訓練・校友会等に勤しんでいきます。
夏季定期訓練所感[海上]
内山 学生
私達2学年海上要員は、夏季定期訓練で実施された校内訓練、呉・江田島研修、乗艦実習等を通じ、海上自衛隊の基礎的な知識等について理解を深めることができました。
校内訓練では、海上での法律や特性、国際信号について学び、海上航行を行う上で必要な基礎的知識を身につけました。またカッター訓練では、長距離とう漕、ダビット作業等を実施したほか、総短艇(予期せぬ戦闘を想定した訓練で「総短艇用意」の号令後、すべての作業等を中断し、速やかに短艇準備、荷物積載等を行い指定地点までとう漕する一連の訓練)を行う等基礎的技能を向上させました。
呉・江田島研修では、幹部候補生学校、潜水艦教育訓練隊等を研修しました。
その中でも特に印象に残っている幹部候補生学校での研修では、幹部候補生との生活、懇談を通じ入校後の姿を想像することができたことに加え、日々の生活や防衛大学校との違い、幹部として大切な資質などを学ぶことができ、防衛大学校での訓練や生活の重要性を改めて認識しました。
乗艦実習では、護衛艦「うみぎり」に乗艦し、艦内生活を体験しながら、蛇行運動、でき者救助訓練等を行いました。
座学で学んできたことを、動く艦艇で実習できたのは貴重な経験であり、特に、蛇行運動では、操艦者や操舵員等を体験し、座学と実践の違いと難しさを感じるとともに、様々な役割を経験できたことで、業務への理解が深まり、より具体的に自身の将来像を考えることに繋げられました。
今回の夏季定期訓練を通じて、海上自衛隊の基礎的な知識及び貴重な経験を得ることができました。今後は、今回得た知識及び経験を活かして日々の訓練等に励んでいきたいと思います。
野原 学生
今年の夏季定期訓練は、これまでの訓練の中で、最も記憶に残る訓練でした。
乗艦実習での操艦練習や部署訓練、航空部隊実習でのP-1哨戒機の体験搭乗や航空管制塔等の施設見学、クルーザーヨット実習等を通じて、海上自衛官としての素養や各職種への理解を深めることができました。
特に印象深かったことは、P-1哨戒機の体験搭乗です。私は固定翼機のパイロットを志望しており、実際に航空機に搭乗して、パイロットや戦術航空士、ソーナー員等の方々が働く姿を見て、さらにその気持ちは強いものとなり任官意欲も向上しました。
また、実習中に若手幹部や海曹・海士の方々と交流する機会も多く、その中で、勤務する上での苦労や大変さを感じつつも、それ以上に自分たちの仕事にやりがいや魅力を感じて勤務されていることを知りました。このように現場の声を生で聴くことはとても貴重な機会であり、将来勤務する上で参考にしていきます。
今回の訓練では、実習科目や信号受信等の査定が多く、昨年までの訓練と比べると多忙でしたが、忙しい反面、多くのことを1ヶ月という短期間に行うことで、とても充実した時間を過ごし、大きな達成感を得ることができました。これからの学生生活や訓練を通じて、幹部自衛官としての資質を向上し、教養をさらに深めていく所存です。
最後に、今回の実習を支援していただいた各部隊の方々に深くお礼申し上げます。ありがとうございました。
湯元 学生
2学年進級時、憧れであった海上自衛官と同じ仕様の青い迷彩服に初めて袖を通してから約2年半の月日が流れ、「任官」という言葉がいよいよ現実味を帯び始めた私達に、防大生活最後の夏季定期訓練の季節が訪れました。
4学年海上要員の訓練の根幹をなすのは、機動艇による横浜巡航訓練と乗艦実習でした。
横浜巡航訓練では、学生が主体となって機動艇を運用し、走水港から横須賀港を経由して横浜港までの航海を実施しました。灯台や煙突などの陸上目標が見える方位から自分たちが乗っている機動艇の位置を測定したり、海事法規に基づいて周囲の船舶を避航したりしながら、定められた航路に沿って航行することで、操艦の基礎を習得することができました。
乗艦実習では、私は最新鋭のイージス艦「まや」に乗艦し、部署訓練や機関、艦橋実習等の実習・見学を行いました。「まや」の乗員の方々と接する中で、弾道ミサイル対処というまさに国防の最前線で任務を遂行することへの高い誇りと責任を感じ取ることができました。同時に、実習を行う過程で自らの知識や技能の未熟さも痛感し、今後はより一層真剣かつ貪欲に、運動盤、海事法規などの教務や操艦、副直士官演習、信号通信などの訓練に取り組まなければならないことを痛感しました。
このように、濃密な訓練期間を過ごしたことで、実践的な術科及びシーマンシップを学んだだけでなく、約半年後に控えた海上自衛官への任官と幹部候補生学校入校に対する意識・自覚が大きく向上しました。残りの防大生活でもたゆまぬ努力を続けて、一人前の艦乗りになれるよう精進します。
夏季定期訓練所感[航空]
山谷 学生
第2学年航空要員は、夏季定期訓練において航空機運用実習(グライダー訓練)、輸送航空隊実習を実施しました。
初めに行われた航空機運用実習では、「富士川航空団(訓練名称)」に所属する隊員として、グライダーへの体験搭乗や各種勤務を行いました。私は、本実習を通して空中勤務特性に対する理解を深めるとともに、積極的なフォロワーシップの発揮が航空団の円滑な任務遂行に寄与することを学びました。
特に、各部署の隊員が強い責任感をもって勤務することで初めて、一機の航空機を飛ばすことができる事等、積極進取及び協力協調の重要性を改めて実感することができました。
続く輸送航空隊実習では、小牧基地に所在する第1輸送航空隊を研修しました。その中の第401飛行隊に所属するC-130Hの体験搭乗では、防大を卒業後パイロットとして活躍する方々を目にして、操縦職域を志望する私は、その意思がより一層高まりました。また、様々な職種の隊員の活躍を実際に見ることで、航空自衛隊が「掛け算」の組織であるということを改めて認識することができました。
「航空自衛隊魂(エアマンシップ)」という言葉があります。これは、航空自衛官として任務を遂行するにあたり重要となる4つの行動規範―積極進取、迅速機敏、柔軟多様、協力協調―を指しますが、私はこの定期訓練を通じて、航空自衛官としての識能に加え資質を高めることが出来たと感じています。
夏季定期訓練で得た様々な経験を糧に、将来の航空自衛官としての自覚と誇りを胸にこれからも不断の努力を重ねていきます。
溝下 学生
3学年航空要員の夏季定期訓練は、7月2日から19日までの間、戦闘航空団が所在する小松、百里、築城、新田原、那覇基地の5箇所に分かれ、部隊実習が行われました。
私は、F-15戦闘機に興味があったため、F-15を運用している部隊所在する基地の中から、地元である新田原基地を実習先として希望しました。
新田原基地では、基地に所在する各部隊の見学をはじめ、F-15、T-4の体験搭乗や救難訓練に参加するとともに、宮崎地本の地元高校生及び保護者に対する防大説明会に参加し、高校生と懇談する等、充実した研修となりました。
中でも戦闘機の体験搭乗は最も印象的であり、航空自衛隊の最前線で勤務する方々と、訓練で同乗できたことは、貴重な体験となりました。
また、部隊実習の間、営内で曹士の方々と共に生活をし、曹士の方々の心情や幹部に求めていることなどを知ることができました。「航空自衛隊は掛け算の組織」と言われていますが、階級や年齢が違えど、コミュニケーションを積極的にとり、人の繋がりを強化することは、部隊の任務遂行及び精強化には欠かせないことだと感じました。
最後に、今回の部隊実習では、多くの方が防大生のために準備や教育をしてくださったおかげで、とても充実した時間を過ごすことができました。
私達は、期待に応えられるよう、感謝の気持ちを忘れず、日々成長することが求められていると改めて実感しました。
広岡 学生
4学年航空要員の夏季定期訓練は、航空機運用総合訓練、教育集団研修等を実施しました。これらは、防大4年間で学んできたことを実践する集大成であり、最も厳しく、最も充実した期間でした。その中でも、とりわけ印象に残っている訓練は、航空機運用総合訓練(グライダー訓練)です。
グライダー訓練では、富士川航空団(グライダー訓練における模擬航空団のこと。以下「団」と記載)を編組し、4学年が基幹隊員、2学年が新隊員の立場に分かれて訓練に参加しました。基幹隊員は、団司令部の幕僚や現場指揮官等の役職に就き、「団の精強化」という任務の達成に向けて、それぞれの立場で新隊員を指揮することが求められました。
当初、校内において計画を作成したのち、富士川滑空場における訓練に臨みました。私は、訓練の前段で整備分隊長として、2学年を指揮しグライダーの整備にあたり、後段の訓練では団司令部幕僚(防衛部長)として、指揮所の立ち上げ、運営等を行いました。各役職において作成した計画に基づき任務達成に向けて各部署等と調整したものの、計画通りに進まない状況に直面しました。そのため、何度も指導官に指導を仰ぐとともに計画変更を余儀なくされてしまい、大変頭を悩ませましたが、各役職に就いた同期と意見・情報交換しながら、任務達成のためにどうするべきか共に考え実践していく過程で得るものも多くありました。
特に、目的を明確化し、臨機応変に対応できるようやや余裕のある計画の作成が必要であること、また、自ら積極的に現場から情報を吸い上げ、全体の流れのイメージを持ち続けることの大切さを学びました。
今後は、この経験を踏まえ普段の訓練等に取り組み、卒業後の幹部候補生学校入校に備えていきます。
前期を振り返って
濵地 学生
前期第1大隊学生長の任に就くにあたり「年度最優秀大隊獲得に向けた基盤作り」を目標に定めました。年度最優秀大隊とは、防大で行われる各種競技会(カッター、棒倒し、パレード等)の結果を年度末に表彰するというもので、残念ながら近年の第1大隊は下位に沈んでいました。
この現状を打破するべく、大隊には繰り返し「強い第1大隊をつくる」ことを伝えてきました。
各競技会に向けて、競技会練成スタッフ、中隊学生長、大隊幕僚等と連携して練成状況を把握し必要な練成基盤の確保に努めたほか、下級生の各種作業負担を上級生にも分担し練成時間を確保するとともに、各中隊、各学年単位でランダムに学生を抽出しミーティングの場を設け自分の考え及び熱意を伝えることで競技会練成への参加人員の拡大に努めました。また、日頃から学生と積極的にコミュニケーションをとり逐次意見を収集・反映する等風通しの良い大隊にすることで団結の強化を図った結果、前期の2大競技会であるカッター競技会と隊歌コンクールにおいて優勝、準優勝を獲得し、未だ中後期が残ってはいるものの、第1大隊は現段階で最も年度最優秀大隊に近い位置につけています。
日本の防衛を任務とする自衛隊に負けは許されず、当然、その中枢を担う幹部も同様だと考えています。大隊学生長として全力で勝利を追い求め、負け慣れの脱却を目指す姿勢を率先して示し大隊を鼓舞したことで、第1大隊の勝ちに対する意識が強くなったと感じます。また、良い結果が出ずとも本気で勝利を目指し努力した過程が必ず今後の自衛官生活の糧になるという共通認識を全学生にもたせ、ただ勝てばいい訳ではなく真の意味で精強な大隊をつくることに尽力しました。中期以降は役職からは外れますが、前期の経験を活かして第1大隊の更なる飛躍に貢献したいです。
麻生 学生
令和6年度第2大隊の年間方針は、『追求~創ろう俺たちの時代~』であり、前期第2大隊学生長を拝命した私の勤務方針を『陶冶』として始動した大隊運営は、簡単なものではありませんでした。
なぜならば、学生隊学生長を核心として取り組んでいるハラスメントの根絶と防大の風習の改善という大きな改革に注力する必要があったからです。ハラスメントの根絶と防大の風習の改善を達成する上で課題となったのが、各学生のハラスメントへの正しい理解が不足していることから、ハラスメントを恐れて必要な指導までしなくなることで、必要な資質等を身につけられなくなる可能性があるということでした。
学生隊として、ハラスメントに対する正しい理解を促進するとともに、学生間指導の在り方を考え直し、これまでの威圧指導から心服指導への転換に取り組みました。
大隊では、清掃、自習時間中、点呼後等に週番による巡回を行い不適切な指導の根絶を図るとともに、良好な人間関係の構築及び上級生の振る舞いを今一度見直し、理想的な上級生像を追求しました。
前期の勤務を通して、学生隊の取り組みについて概ね達成しつつあると思います。しかしながら、改革は始まったばかりであり、上記の課題も解決したとは言えず、学生間指導に対する考え方も完全に変わったとは言い切れない状態です。そのため、今後も継続して不適切な指導の根絶を図るとともに、心服指導の効果を高めるために、より良好な人間関係の構築に加え、上級生は更に自らを律し学生としてのあるべき姿を、日々示していくことが必要ではないかと考えます。
また、大隊学生長として、大隊幕僚、中隊学生長等とより良い防衛大学校を築いていくために何度も検討し試行錯誤する中で、学生のあるべき姿や任官後の姿について明確なイメージを持つことができ、自分自身が残りの防大生活で身につけなければならない資質を、明確化することができた貴重な機会になりました。この前期で培った経験を中期以降に継承するとともに、今後の防大生活に活かしていきます。
鬼頭 学生
令和6年度前期という走り出しの重要な時期に、第3大隊の学生長の任を命ぜられたことに誇りと重責を感じながらも、その役割を全うできるだけの能力、気概、忍耐力があるのかと自問自答しながら過ごした4ヶ月間でした。
勤務期間中、大隊学生長としての任務に対する気持ちに陰りや、やる気の低下は一度もなかったと断言できます。
その要因としては、400人以上所在する3大隊の長としての自覚に加え、安心感のある大隊幕僚及び率直かつ建設的な意見をくれたとても信頼できる各中隊学生長の存在が大きかったと思います。1学年のころ上級生から教わった「同期を大切に、下級生に対して真摯に向き合う」という言葉を実行できたことで、一人では達成できないことに対して共に取り組み、達成できたと思っています。
大隊学生長として、現情勢に合わせたハラスメントの撲滅等に関する学生の意識を改革することができ、これにより防衛大学校がより良い修養の場へ変わる為の基盤を作れたと考えています。しかしながら、変化した意識を最大限に活かす制度を作り切れなかったことが悔やまれます。今後は、これまでの経験及び思いを胸に、中期以降の長期勤務学生等を積極的にサポートしていきたいです。
そして、これから長期勤務学生となりうる下級生に対しては、経験しなければわからないことが本校には数多く存在するため、その場を活用して積極的に希望し、企画力、指揮能力等の資質向上を図って欲しいです。そこから得られる経験や自信、使命感等は言葉や文章では表せられないほど貴重なものとなるからです。
最後に、私がこのような重要な役職を任され、有意義な経験を得られたのも、支えてくれた多くの同期・下級生、信頼してくださった指導官の方々の存在があったからこそだと感じています。この経験を、全力をもって今後の生活に反映させたいと思います。
鈴木 学生
前期第4大隊学生長を務めた鈴木学生です。令和6年度学生隊は学生隊学生長を中心に防衛大学校の改革に取り掛かりました。そんな中、第4大隊の約400名の代表としての勤務は、非常に緊張感のあるものであり、私自身大きく成長できたと実感しています。
ここで、第4大隊の改革について少し紹介したいと思います。
前期大隊学生長として取り組んだのは、4学年の意識改革です。与えられた職務を達成するために頭を悩まし、より厳しい環境に身を置くのが上級生であるものの、「楽そうだから、早く上級生になりたい」と下級生に思わせてしまっていたのが現実でした。
そこで、4学年に対し今一度上級生としてのあるべき姿を見つめなおすことを要望しました。学年競技会である2学年のカッター競技会、3学年の断郊競技会を優勝している69期は、団結力及び協力精神が非常に強く私の要望に真摯に向き合ってくれ、下級生の手を取り正しい方向へ導き、自らを律し下級生の手本になろうと必死に頑張ってくれました。
これにより第4大隊では、正しい上級生像とは何かを模索、実践し、それを下級生に見せることで、上級生への憧れを抱かせる結果となりました。
しかしながら、これは69期が在学する1年間だけ続けても意味がなく、後輩にこの意志を継いでもらうことで、第4大隊の伝統として受け継がれていきます。だからこそ正しい上級生の在り方を下級生に見せることができたことは、伝統継承の大きな一歩だと感じます。
これからの課題は、継続して上級生としてのあるべき姿を模索することはもちろんですが、継承していくことが重要になります。69期が卒業しても正しく意志が継がれ、第4大隊が「常昇鷲団」※のごとく、常に高みを目指して進化し続けていけるように前期大隊学生長として得た経験を中期、後期へとつなげていきます。
※常に高みを目指し続けることと、第4大隊のシンボルである鷲を用いた令和6年度の大隊運営方針