防衛大学校National Defense Academy

学校長式辞

久保文明学校長式辞

本日、防衛大学校第70期本科生385名、理工学研究科および総合安全保障研究科前期課程学生55名、後期課程学生12名が卒業の佳き日を迎えました。この中には9カ国27名の留学生も含まれています。防衛大学校の教職員を代表して、本日小原台を巣立つすべての卒業生に対して、心からお祝いを申し上げます。

本日の式典には、高市早苗内閣総理大臣および小泉進次郎防衛大臣をはじめ、多数の方のご臨席を賜っています。ご多忙の中でのご来訪に衷心よりお礼申し上げます。
また来賓代表として北岡伸一JICA特別顧問にもご出席いただいています。北岡特別顧問が理事長時代に、JICAでの防大生のインターンシップを開始していただきました。
さらに、卒業生のご家族はもとより、防衛大学校ホームカミングデイの一環として防大第25期卒業生の皆様も多数、諸君の卒業を祝うためご臨席いただいています。《第25期生起立及び周りからの拍手》25期生の皆様、ご出席、誠にありがとうございます。また何より長い間のご勤務と国防へのご奉仕に深く感謝申し上げたいと思います。どうぞご着席ください。

本科生の皆さん。防衛大学校を卒業することは、一般大学よりはるかに難しいことであります。それだけに、卒業の喜びもひとしおではないかと拝察しています。よく頑張りました。
研究科・前期後期卒業学生の皆さん。研究科での勉強・研究は予想以上に厳しかったのではないかと想像しています。かつて執筆した卒業論文、あるいは修士論文をはるかに超える高い水準の論文執筆が求められる中、見事に修士あるいは博士の学位を取得されました。ぜひともその成果を今後、日本の防衛に、あるいは学術の発展に生かしていただければ幸いであります。
留学生の皆さん。言葉や文化の異なる国に来て、特に本科生の場合は5年の長きに渡って防大で学ばれ、そして本日晴れて卒業となりました。その努力を高く評価したいと思います。わが国と防大を信頼し、優秀な学生を長期に渡って預けてくださった関係各国政府のご英断にも感謝の気持ちを表したいと思います。また、文字通り日本におけるお父さん・お母さんとして、ホームシックになりがちな留学生の面倒を見てくださった留学生協力家庭の皆様、献身的なご協力まことにありがとうございました。
陸海空各自衛隊の要員のみならず研究科前期・後期の卒業生、さらには多数の留学生を送り出す本校の卒業式は、統合型幹部自衛官養成機関としての防大の強みを余すことなく示すものであります。

70期卒業生の皆さんに、3点ほど申し上げます。一つ、69期生に続いて指導力を発揮し、学生の上下関係の在り方を大きく変え、それを定着させた実績について高く評価したいと思います。退校者数が大きく減りました。長らく不変・不易と思われていたことが変わりました。リードした人だけでなく、フォローした人を含めて大きな拍手を送りたいと思います。
二つ目、国民、民族・家族、同胞を守るため、危険を顧みず職務を遂行することを誓った皆さんは、もっとも公益性の高い業務に従事し、まさに「公務員の中の公務員」としての職務を担うことになります。そのような誇りをぜひ持ち続けて下さい。
三つ目、中曽根康弘元首相はかつてこの卒業式の場で、幹部自衛官を「永遠の求道者」と定義しました。道を求めるものという意味です。「常に人格の陶冶に心がけ、上司の信頼と部下の尊敬を受けるに足る品格と特性を身に付けるよう不断の努力を傾注されたい」と述べられています。これは初代学校長の槙智雄先生が「まず人としての修養を積むこと」を重視されたことにも通じると思います。ぜひ皆さんにも、これを実践していただきたいと思います。
なお、三年前から、任官を辞退した方にも卒業式には出席してもらっています。防衛大学校の本旨からすれば、任官されないことは誠に残念でありますが、皆さんが立派に卒業要件を満たしたことには変わりがありません。全員が本校卒業生として胸を張って旅立って欲しいと念じています。ただ、皆さんには国民の寛大さに対して、今後、人生のどこかで感謝の気持ちを、どのような形でも結構ですので、示していただきたいと感じています。

我が国を取り囲む安全保障環境は顕著に悪化しています。しばらくは辛抱の時期が続きそうであります。しかしながら、希望を持ち続けることはできます。その最大の根拠は、まさに本日この小原台を飛び立つ皆さんの存在であります。日本に万が一のことがあった場合、その対応の中心になるのはここに集う皆さんです。国民の安全と生命を守るために奉仕する皆さんの生涯がやりがいと誇りに満ちたものになるのを願うと同時に、皆さん全員が、無事に職業的人生を全うされることも心よりお祈りいたしております。
ご臨席いただいている卒業生のご家族、ご親族の皆様、あらためて本日はまことにおめでとうございます。皆様からこれまで防衛大学校に対していただいたご支援に感謝しつつ、今後とも防大、防衛省、自衛隊、就中本日の卒業生諸君に対して、変わらぬご支援をいただくことができればまことに幸甚であります。

最後に私ごとで恐縮ですが、私はこの3月末に退任いたします。過去5年に渡っていただいた皆様からのご支援に対して心より御礼申し上げます。私は学校長就任後、以下のような要望事項を職員、学生に伝えました。
職員に対しては、防大生の可能性を信じよう。
学生に対しては、自分たちの可能性を信じよう。
と書きました。5年が経った今、強く感じることは、いかに職員、そして学生ともベストを尽くし、防大生の、そして防大の可能性を十分引き出してくれたかということであります。この点で、すべての防大教職員そして学生諸君に対し深く感謝申し上げたいと思います。

以上を持ちまして、本日の式辞とさせていただきます。

 

 令和8年3月14日

防衛大学校長 久保 文明