星合いの空 ~天つ少女のためのエレジー

作曲者
井澗 昌樹
初演年月日
2016年2月18日
解説
 2016年、舞鶴音楽隊は創設40周年を記念して、作曲家の井澗昌樹氏に郷土にちなんだ作品を委嘱しました。そこで井澗氏が選んだのは、京都北部に伝わる「丹後羽衣伝説」。初演に際し、作曲者である井澗氏は次のように寄せています。
 「天の世界から降りてきた天女が衣を脱いで水浴びをしていると・・・羽衣伝説は日本各地に存在する伝説です。「丹後国風土記」には京都府京丹後市峰山町を舞台としたものが記されていますが、地元峰山町にはそれとは少々異なった伝説が残っています。多くの説話に同じく、天女は男に羽衣を隠されてしまい、天に帰れなくなってしまいます。男の妻となり子をもうけますが、褪せぬ寂しさに耐え切れません。
 やがて、自分の羽衣を見つけ出して天に帰ってしまいました。「七日七日に会いましょう」と云い残した天女の言葉は「七月七日に会いましょう」と男に伝わってしまい、一年に一度しか会えないと思い込んだ男は天上まで追いかけ、自分も天上界で暮らしたいと天帝に願い出ます。天帝は、天の川への橋を架けることを条件にその願いを認めます。加えて、その橋が完成するまで天女のことを思い出さないという約束も・・。しかし、男はその約束を守ることができず、天の川の大洪水によって下界に流されてしまいました。
 このような、天から舞い降りた乙女が人間の妻や子供になるという説話は日本のみならず、世界中に数多く存在します。それらの中で目を通すことの出来たもののほとんどは、乙女は長く留まることはなく、脱いだ羽衣を再びまとい昇天するという結びを取っていました。
 これらが人間の祖先にとって「本当の話」であるならば、終生、愛を貫いて幸せに暮らしたと語っても良さそうなものです。ロマンティックな様相のその裏に一体何が隠されているのでしょう。天に昇る、天上界・・・文字面だけみれば、それは死そのものだと思うのですが。
 真実は分かりません。しかし、物語から溢れ出る悲しみの質感に手を伸ばすことだけが、随分と時を経てしまった我々にできることだろうと思います。憐憫だけでは寂しいかもしれませんね。
 「七日七日に会いましょう」と言い残した天女の言葉が真に愛に満ちたものであったと願っています。なお、星合いとは七月七日の夜を指す言葉です。」
出版社
ブレーン
演奏時間
約9分

星合いの空 ~天つ少女のためのエレジー

作曲者
井澗 昌樹
初演年月日
2016年2月18日
解説
 2016年、舞鶴音楽隊は創設40周年を記念して作曲家の井澗昌樹氏に郷土にちなんだ作品を委嘱しました。そこで井澗氏が選んだのは、京都北部に伝わる「丹後羽衣伝説」。初演に際し、作曲者である井澗氏は次のように寄せています。
 「天の世界から降りてきた天女が衣を脱いで水浴びをしていると・・・羽衣伝説は日本各地に存在する伝説です。「丹後国風土記」には京都府京丹後市峰山町を舞台としたものが記されていますが、地元峰山町にはそれとは少々異なった伝説が残っています。多くの説話に同じく、天女は男に羽衣を隠されてしまい、天に帰れなくなってしまいます。男の妻となり子をもうけますが、褪せぬ寂しさに耐え切れません。
 やがて、自分の羽衣を見つけ出して天に帰ってしまいました。「七日七日に会いましょう」と云い残した天女の言葉は「七月七日に会いましょう」と男に伝わってしまい、一年に一度しか会えないと思い込んだ男は天上まで追いかけ、自分も天上界で暮らしたいと天帝に願い出ます。天帝は、天の川への橋を架けることを条件にその願いを認めます。加えて、その橋が完成するまで天女のことを思い出さないという約束も・・。しかし、男はその約束を守ることができず、天の川の大洪水によって下界に流されてしまいました。
 このような、天から舞い降りた乙女が人間の妻や子供になるという説話は日本のみならず、世界中に数多く存在します。それらの中で目を通すことの出来たもののほとんどは、乙女は長く留まることはなく、脱いだ羽衣を再びまとい昇天するという結びを取っていました。 これらが人間の祖先にとって「本当の話」であるならば、終生、愛を貫いて幸せに暮らしたと語っても良さそうなものです。ロマンティックな様相のその裏に一体何が隠されているのでしょう。天に昇る、天上界・・・文字面だけみれば、それは死そのものだと思うのですが。
 真実は分かりません。しかし、物語から溢れ出る悲しみの質感に手を伸ばすことだけが、随分と時を経てしまった我々にできることだろうと思います。憐憫だけでは寂しいかもしれませんね。 「七日七日に会いましょう」と言い残した天女の言葉が真に愛に満ちたものであったと願っています。なお、星合いとは七月七日の夜を指す言葉です。」
出版社
ブレーン
演奏時間
約9分