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令和3年 自衛官たちの足跡

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令和3年 自衛官たちの足跡

新型コロナ感染症対応(自衛隊大規模接種センターの運営)

防衛省・自衛隊は、新型コロナウイルス感染症対策の決め手となるワクチン接種を推進し、感染拡大防止に寄与するため、2021年5月24日から同年11月30日まで、東京及び大阪において大規模接種センターを開設・運営し、延べ196万回の接種を行いました。

私は大阪大規模接種センターにおいて、2つあるフロア(3階と10階)の10階フロアにおけるフロアリーダーとして勤務しました。フロアリーダーとして、民間看護師と全国から派遣された看護官が配属される予診ブース、接種ブース、経過観察ブース、救護ブースの全般的な運用を行いました。

中部方面衛生隊(伊丹駐屯地)1尉 小島貴子

中部方面衛生隊(伊丹駐屯地)1尉 小島 貴子(こじま たかこ)

Interview

本業務において実施した事項を教えてください

私は看護官として、業務開始前後には、自衛隊の看護官と民間の看護師の方へ認識共有を図るミーティングを行いました。日々の接種状況を確認しながら業務要領の変更を行い、勤務員に周知徹底を図る機会教育を行いました。センター長の指針「ともに安全・安心・ありがとう」のもと、自分たちの感染防止を常に意識し勤務に臨んでいました。

打ち合わせの様子(写真右が筆者)

打ち合わせの様子(写真右が筆者)

業務において困難だった点を教えてください

全国の部隊から派遣された自衛官と民間の看護師間で、お互いの認識の統一を図るまでが困難でした。意見聴取や意見交換を行い「官民一体」を築き、それぞれが出した案の中でより良い方法を取り入れ、業務調整を行いました。

業務においてやりがいを感じた点を教えてください

自衛隊の看護官として、国の接種を後押しする大規模接種に関われたことにやりがいを感じました。国家の安全のため、感染抑制のためのワクチン接種の担い手のひとりになれたこと、そして、国としてのワクチン接種率が高まったことで、私たち自衛官がその一員としての役割を果たせたのではないかと感じています。

そのほか、現場で感じたことなどについて教えてください

近畿圏内の高齢者へのワクチン接種から、感染拡大に伴い全国の若年者への接種へと拡大されていきました。接種状況が刻々と変化しそのニーズに自分たちが対応していることを実感しました。

大規模接種センターでの勤務風景

大規模接種センターでの勤務風景

パシフィック・クラウン21への参加

2021年8月25日から28日までの間、護衛艦「いせ」、「あさひ」及び「てるづき」が、日本周辺海域において、英空母「クイーン・エリザベス」をはじめとする英・米・蘭海軍による空母打撃群と「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向けて連携を強化すべく、パシフィック・クラウン21に参加し各種戦術訓練を実施しました。

英空母打撃群との共同訓練は、長い歴史と伝統のある日英防衛協力が、「新たな段階」に入ったことを象徴するものとなりました。また、オランダ海軍の日本寄港は21年ぶりであり、海上自衛隊とオランダ海軍との関係強化につながりました。

護衛艦いせ船務長(佐世保基地)2等海佐 磯部洋平

護衛艦いせ船務長(佐世保基地)2等海佐 磯部 洋平(いそべ ようへい)

Interview

本訓練において実施した業務を教えてください

いせ船務長として、艦の任務を遂行するとともに、共同訓練参加艦の動静を注視し、本艦にて訓練の指揮を執った第2護衛隊群司令と幕僚の補佐を行いました。

業務において困難だった点を教えてください

新型コロナウイルスの影響もあり、訓練に参加した各国の士官とは、直接顔を合わせる機会はありませんでしたが、オンラインで交流を深め、円滑に訓練を行うことができました。また、台風シーズンということもあり、荒天時は搭載航空機の飛行にも大きな影響が出るため天候にも絶えず注意を払いました。幸いにも期間中は好天に恵まれ、絶好の訓練日和でした。

訓練の進捗を確認する筆者(右)

訓練の進捗を確認する筆者(右)

業務においてやりがいを感じた点を教えてください

事前に対面せずとも、洋上で英米蘭各国の艦艇と会合した後は、まるで艦同士が旧知の友であるかのように、阿吽の呼吸で任務を遂行することができました。海上自衛隊と各国海軍が共通の価値観と不変のシーマンシップを共有していることを肌で感じ、その中の1人として、共に行動していることに大きな喜びを感じました。

そのほか、現場で感じたことなどについて教えてください

英蘭海軍は遥々欧州から日本までやってきましたが、本訓練を通じて、改めて世界が海でつながっていることを強く意識しました。インド太平洋地域と国際社会の平和と安定の確保のため、関係国との連携を一層深化させ、海軍種間の強固な絆を維持することの重要性について、改めて考える機会となりました。

入港時、艦橋にてタグボートを指揮する筆者

入港時、艦橋にてタグボートを指揮する筆者

東京オリンピックに参加して

柔道は、「己を完成」し「世を補益」する事を目的とし、柔術の様々な利点と創意工夫された技術を加えた武道で、現在では、世界200か国以上の国と地域が国際柔道連盟に加盟している競技です。

自衛隊においては、体育活動及びその意義を隊員に普及・発展させ、自衛隊の精強化に寄与するために重要な武道の種目のうちの一つです。

今回の東京五輪では、個人競技(男女各7階級)と男女混合団体が実施され、濵田1尉が、1990年の創部以来、初めてのオリンピック出場選手として、2個(個人「金メダル」、混合団体「銀メダル」)のメダルを獲得しました。

自衛隊体育学校柔道班 1等陸尉 濵田尚里

自衛隊体育学校柔道班 1等陸尉 濵田 尚里(はまだ しょうり)

Interview

平素実施している業務について教えてください

特別体育課程学生として、国内外大会で優秀な成績を獲得できるよう、柔道の競技力強化(自衛隊体育学校、大学、実業団での実戦訓練)をするとともに、各種イベントに参加するなど、隊員の士気の高揚、自衛官の募集、広報に寄与しています。

オリンピックまでの訓練について、またその中で困難だった点を教えてください

五輪開催延期が決まり、「新型コロナ」の影響から、試合ができない時期に練習場所を確保するのに苦労しました。

そのような中、ライバルの実業団チームで、日本トップレベル選手との質の高い訓練により、自分の技を磨く練習ができたことで、日本代表という自覚と自信を持って東京五輪に臨む事ができました。心より感謝しています。

©フォートキシモト

©フォートキシモト

メダル取得後の感想を教えてください

入隊9年目での成果という事で、率直に嬉しさを実感するとともに、心から皆様に感謝しています。

1人だけの力ではなく、それまでの長い期間、支えて頂いた全ての方の力を結集した総合力で成し得た成果だと思っています。

そのほか、大会参加を通じて感じたことなどについて教えてください

今回の成果が、様々な任務で、活動している全ての自衛官の方々の励みになる事ができたのであれば、大変有り難いと思います。

特に最後のメダルセレモニーで、同じ自衛官が国旗掲揚して、敬礼している姿は、心に響きました。これからも自覚と責任感、感謝の気持ちを持って、自衛官アスリートとして、できる事を追求していきたいと思います。

©フォートキシモト

©フォートキシモト

東京オリンピック開会式の支援に参加して

東京2020オリンピック開会式が2021年7月23日、国立競技場においてオリンピック憲章に基づき挙行されました。

防衛省・自衛隊は式典など大会運営への協力として、陸上自衛隊東部方面総監の下に「東京2020オリンピック・パラリンピック支援団」を陸上・海上・航空自衛官約8,500名をもって編成し、式典協力及び会場整理支援などの大会運営協力にかかる業務を行いました。その中で私は、式典協力隊・開閉会式支援班に配置され、オリンピック旗の掲揚要員として参加しました。

第1航空団(浜松基地)空曹長 山田幸雄

第1航空団(浜松基地)空曹長 山田 幸雄(やまだ ゆきお)

Interview

平素の業務と開会式で実施した業務について教えてください

平素は、部隊の訓練担当者として、各種訓練の計画、立案及び隊員に対する教育指導を行い、精強な部隊及び自衛官育成のための業務に邁進しています。開会式では、陸上・海上・航空自衛官の代表6名でフラッグベアラーからオリンピック旗を引継ぎステージ上の掲揚ポールまで運搬するとともに、オリンピック賛歌に合わせて掲揚を行いました。

式典協力業務までどのような準備や訓練を実施したのかを教えてください

真夏の過酷な環境下における任務を想定し、酷暑の中、体力強化などの事前準備に万全を期しました。また、朝霞駐屯地において、陸上自衛隊第302保安警務中隊(特別儀じょう隊)から基本動作の教育指導を受け、練度向上を図りました。

オリンピック開会式におけるオリンピック旗掲揚(旗の左手前を持ち、掲揚台を上がる筆者)【AFP=時事】

オリンピック開会式におけるオリンピック旗掲揚
(旗の左手前を持ち、掲揚台を上がる筆者)【AFP=時事】

式典協力業務において困難だった点などを教えてください

陸上・海上・航空自衛隊における訓練内容の違いから、当初基本動作に違いがあり、斉一な動作の修得に時間を費やしましたが、オリンピックを成功させるという崇高な目的のため、隊員同士が相互に修正点を指摘するなど一致団結し、短期間で急成長を遂げることができました。

そのほか、現場で感じたことなどについて教えてください

リハーサル会場などでは、陸上・海上・航空自衛官の男女が制服を着用し、勢揃いするという精悍な光景に、一般市民の方々からいつも熱い視線を浴びていました。

また、防衛省・自衛隊に対する注目度の高さを実感しました。

パラリンピック開会式における国旗掲揚(旗の左端を持つ筆者)【EPA=時事】

パラリンピック開会式における国旗掲揚(旗の左端を持つ筆者)【EPA=時事】