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ダイジェスト 第IV部 防衛力を構成する中心的な要素など

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訓練・演習に関する諸施策

抑止力・対処力強化のための訓練

自衛隊はわが国を防衛するという厳しい任務を果たすため、平素から統合訓練や陸・海・空自衛隊による各種訓練などを実施しており、その内容は従来の領域にとどまらず、宇宙・サイバー・電磁波を含む新領域にも及んでいる。これらの領域をうまく活用し、防衛力を高めるべく、領域横断作戦能力の向上を図っている。

また、日米同盟の抑止力・対処力を強化するため、各自衛隊は、各軍種間での共同訓練や日米共同統合演習を実施するとともに、その内容を年々深化させている。

さらに、「自由で開かれたインド太平洋」(FOIP)というビジョンに基づき、多角的・多層的な安全保障協力を戦略的に推進するため、広くインド太平洋地域における同盟国、友好国との共同訓練・演習に積極的に取り組んでいる。

厳しさを増す安全保障環境において、わが国の平和と独立を守り抜くためには、現状の自衛隊が持つ抑止力・対処力に満足することなく、自らがより精強になるとともに、同盟国・友好国との連携能力を向上させる必要があることから、さらなる抑止力・対処力の獲得に努めている。

海自輸送艦「おおすみ」から発進する陸自水陸両用車(自衛隊統合演習の様子)

海自輸送艦「おおすみ」から発進する陸自水陸両用車
(自衛隊統合演習の様子)

訓練開始にあたり懇談する日米両指揮官(日米共同方面隊指揮所演習(YS-81)の様子)

訓練開始にあたり懇談する日米両指揮官
(日米共同方面隊指揮所演習(YS-81)の様子)

パートナーシップ強化のための訓練

自国の平和を維持するためには、抑止力・対処力を強化しつつ、自国を取り巻く安全保障環境の安定化が不可欠であるとの認識のもと、広くインド太平洋地域において同盟国・友好国との共同訓練を積極的に推進している。こうしたパートナーシップ強化により、一国のみでは対応が困難なグローバルな安全保障上の課題や不安定要因への対応に向けた連携強化に努めている。

日米豪の戦闘機による飛行訓練(共同訓練コープ・ノース22の様子)

米英空母3隻と海自護衛艦「いせ」(日米英蘭加新共同訓練の様子)

人的基盤・知的基盤の強化

自衛隊員は防衛力の中核(人的基盤の強化)

防衛力の中核は自衛隊員であり、自衛隊員の人材確保と能力・士気の向上は防衛力の強化に不可欠である。これらは、人口減少と少子高齢化の急速な進展によって喫緊の課題となっており、防衛力の持続性・強靭性の観点から、自衛官などの募集・採用、教育、人的資源の効果的な活用に向けた施策などに取り組んでいる。また、ワークライフバランスと女性の活躍推進にも積極的に取り組んでいる。

女性自衛官の活躍(水陸両用基本課程訓練中の様子)

女性自衛官の活躍
(水陸両用基本課程訓練中の様子)

未来の防衛政策の力に(知的基盤の強化)

わが国を取り巻く安全保障環境が一層厳しさを増していることを踏まえ、防衛省の研究・教育機関において、平素から研究の質をより高め、その成果をわが国の政策立案に反映している。

また、そうした研究の成果を踏まえ、わが国の安全保障政策に関する知識や情報について、より一層国民の理解を促進することが重要になってきていることから、防衛研究所を中心とする研究体制を強化している。

防衛研究所

防衛研究所

衛生機能の強化

自衛隊員の生命を最大限守るために

防衛省・自衛隊が任務を遂行するためには、隊員の健康を適切に管理し、部隊の壮健性を維持していくことが必要であり、各種事態に対応する隊員の生命を最大限に守ることができるよう衛生機能の充実・強化に不断に取り組んでいる。

このため、防衛省・自衛隊においては、第一線から最終後送先までのシームレスな医療・後送態勢を強化することとしているほか、自衛隊病院の拠点化・高機能化を図っており、令和3(2021)年度はその一環として自衛隊入間病院を開院した。

加えて、自衛隊の任務が多様化・国際化する中で、災害派遣や国際平和協力活動における衛生支援や医療分野における能力構築支援など様々な衛生活動のニーズに適確に応えていくこととし、自衛隊衛生の根幹となる人的基盤を強化すべく、防衛医科大学校の機能強化、医官・看護官などの確保・育成を推進している。

なお、国内における新型コロナウイルス感染症への対策の一環として、自衛隊病院における患者受け入れに加え、新型コロナウイルスワクチン接種を加速するため、東京及び大阪において2021年5月から同年11月にかけて自衛隊大規模接種センターを、2022年1月からは自衛隊大規模接種会場を設置・運営するなどの活動を実施した。

自衛隊入間病院

自衛隊入間病院

自衛隊大規模接種センターの様子

自衛隊大規模接種センターの様子

防衛装備・技術に関する諸施策

将来の戦闘様相を変える技術の進展

近年の軍事技術の進展は目覚ましいものとなっている。こうした技術の進展を背景に、現在の戦闘様相は、陸・海・空のみならず、宇宙・サイバー・電磁波といった新たな領域を組み合わせたものとなっており、各国は、全般的な軍事能力の向上のため、これら新たな領域における能力を裏付ける技術の優位を追求している。

さらに、各国は、人工知能(【AI】〈Artificial Intelligence〉)などのゲーム・チェンジャーとなりうる最先端技術を活用した兵器の開発や研究に多額の研究開発費を投じ、早期実用化に取り組んでいる。また、量子技術、第5世代移動通信システム(5G)などをはじめとする【ICT】〈Information and Communication Technology〉分野の今後のさらなる技術革新は、将来の戦闘様相をさらに予見困難なものにするとみられる。

主要国の国防研究開発費の推移

我が国の研究開発の状況と今後の焦点

装備品の高性能化・複雑化に伴い外国製装備品の輸入が高水準で推移していることに加えて、技術の高度化に伴い単価が高騰している装備品の導入により、近年の国内調達の増額にもかかわらず、国内企業からの調達数量は減少傾向にある。そのため、わが国の防衛産業・技術基盤は厳しい状況となっている。

このような中、多次元統合防衛力の構築に必要かつ十分な防衛力の「質」及び「量」を確保するには、①無人化・省人化を含めた統合運用の観点からの実効的かつ合理的な装備体系の見直し、②わが国の技術的優越の確保のため、戦略的な取組、研究開発の推進、民生技術の積極的活用などの技術基盤の強化、③装備品の高度化・複雑化によるコストの増加傾向に対して、装備品取得の効率化と組織的な管理体制に資する装備調達の最適化、④高性能な装備品の生産と高い可動率を確保する産業基盤の強靭化、⑤防衛装備移転三原則に基づく防衛装備・技術協力に取り組むことが不可欠である。

また、①~⑤の取組と合わせて、わが国経済の自律性や、わが国の技術などの他国に対する優位性、ひいては国際社会にとっての不可欠性などを高める観点から政府全体として重点的に推進している⑥経済安全保障の取組について、防衛省としても安全保障上の知見を活かして、積極的に協力していくことが極めて重要である。

先端技術に関する研究開発(高出力マイクロ波照射技術)

先端技術に関する研究開発(高出力マイクロ波照射技術)

12式地対艦誘導弾(能力向上型)の開発【三菱重工業(株)名誘より提供】

12式地対艦誘導弾(能力向上型)の開発
【三菱重工業(株)名誘より提供】

ウクライナへの装備品等の提供

ロシアのウクライナ侵略を受けて、ウクライナ政府からの装備品等の提供要請を踏まえ、自衛隊法に基づき、非殺傷の物資を防衛装備移転三原則の範囲内で提供した。

情報機能の強化

各種情報の迅速な収集などへの努力

情勢の推移に応じて的確に防衛政策を立案し、また、各種事態への対処において防衛力を効果的に運用するために、わが国周辺などにおける中長期的な軍事動向の把握や各種事態の兆候を早期に察知することが必須である。

そのため、防衛省は、次のような情報収集を実施している。

  1. ①わが国上空に飛来する軍事通信電波、電子兵器などの電波の収集・処理・分析など
  2. ②衛星からの画像データ収集・判読・分析など
  3. ③艦艇・航空機による警戒監視
  4. ④各種公刊情報の収集・整理
  5. ⑤各国国防機関などとの情報交換
  6. ⑥防衛駐在官などによる情報収集など

防衛駐在官については、2022年4月1日現在、86大使館6代表部、73名を派遣している。

防衛駐在官(ウクライナ)の業務の様子

地域社会や環境との共生に関する取組

地域社会との調和

防衛省・自衛隊の様々な活動は、国民一人一人、そして、地方公共団体などの理解と協力があってはじめて可能となる。こうした考えのもと、今後とも防衛省・自衛隊は、地域社会・国民と自衛隊相互の信頼をより一層深めていくために必要な各種施策を推進していく。

防衛省と地域社会との協力を象徴するエンブレム

防衛省と地域社会との協力を象徴するエンブレム

環境問題への取組

防衛省・自衛隊は、従前から環境関連法令を遵守し、環境保全の徹底や環境負荷の低減に努めてきたところ、さらなる環境への取組の推進を図ることとしている。防衛省では、2021年5月に、防衛副大臣を座長とする防衛省気候変動タスクフォースを設置し、気候変動がわが国の安全保障に与える影響について評価・分析し、防衛省が与えられた任務・役割を果たしていけるよう幅広く検討を行い、今後、防衛省としての戦略文書をとりまとめることとしている。

気候変動タスクフォースにおける議論の様子

情報発信

国民や諸外国の信頼と協力を得るため、防衛省・自衛隊の活動について、分かりやすい広報活動を様々な方法で、より積極的に行っていく。