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第III部 わが国防衛の三つの柱(防衛の目標を達成するための手段)

防衛白書トップ > 第III部 わが国防衛の三つの柱(防衛の目標を達成するための手段) > 第2章 日米同盟 > 第2節 日米同盟の抑止力及び対処力の強化 > 1 宇宙領域やサイバー領域などにおける協力

第2節 日米同盟の抑止力及び対処力の強化

防衛大綱は、日米同盟の抑止力及び対処力の強化のため、平時から有事までのあらゆる段階や災害などの発生時において、日米両国間の情報共有を強化するとともに、すべての関係機関を含む両国間の実効的かつ円滑な調整を行い、わが国の平和と安全を確保するためのあらゆる措置を講ずることとしている。

このため、各種の運用協力及び政策調整を一層深化させることとしている。特に、宇宙領域やサイバー領域などにおける協力、総合ミサイル防空、共同訓練・演習、共同のISR(Intelligence, Surveillance and Reconnaissance)活動及び日米共同による柔軟に選択される抑止措置の拡大・深化、共同計画の策定・更新の推進、拡大抑止協議の深化などを図ることとしている。これらに加え、米軍の活動を支援するための後方支援や、米軍の艦艇、航空機などの防護といった取組を一層積極的に実施することとしている。

1 宇宙領域やサイバー領域などにおける協力

1 宇宙に関する協力

宇宙分野における協力としては、2009年11月の日米首脳会談において、日米同盟深化の一環として、宇宙における安全保障協力の推進に一致したことを受け、2010年9月に関係省庁が参加して安全保障分野における第1回日米宇宙協議を実施するなど、今後の日米協力のあり方についての協議を定期的に行っている。

また、2012年4月の日米首脳会談において、民生及び安全保障上の宇宙に関するパートナーシップの深化並びに宇宙に関する包括的対話の立ち上げに一致したことを受け、2013年3月に関係省庁が参加して第1回包括的日米対話を実施するなど、両国の宇宙政策に関する情報交換や今後の協力に関する議論を定期的に行っている。

さらに、2015年4月の日米防衛相会談における指示に基づき、宇宙分野における日米防衛当局間の協力を一層促進する観点から、「日米宇宙協力ワーキンググループ(SCWG)」を設置し、同年10月以降計7回の会合を開催した(直近の会合は2021年3月に実施)。引き続き、本ワーキンググループを活用して、①宇宙に関する政策的な協議の推進、②情報共有の緊密化、③専門家の育成・確保のための協力、④机上演習の実施など、幅広い分野での検討を一層推進していくこととしている。

2021年5月には、ディキンソン米宇宙コマンド司令官が岸防衛大臣を表敬するとともに、統幕長・空幕長と会談し、宇宙空間における脅威や、宇宙空間の安定的な利用の確保の重要性、宇宙状況監視(SSA)を含めた日米防衛当局間の協力について意見交換を行い、宇宙領域における日米同盟のさらなる強化に向けて協力を加速させていくことで一致した。

ディキンソン米宇宙コマンド司令官と会談する井筒空幕長(2021年5月)

ディキンソン米宇宙コマンド司令官と会談する井筒空幕長(2021年5月)

参照3章3節1項(宇宙領域の利用にかかる協力)

2 サイバー空間に関する協力

サイバー分野における協力としては、2013年10月、防衛当局間の枠組みとして「日米サイバー防衛政策ワーキンググループ(CDPWG:Cyber Defense Policy Working Group)」を設置し、政策レベルを含む情報共有のあり方や人材育成、技術面における協力など、幅広い分野に関する専門的・具体的な検討を行っている。また、サイバー協力に関する日米両政府全体の枠組みである「日米サイバー対話」に日米の防衛当局が参加を続けており、情報通信に関する防衛当局間の枠組みである「日米ITフォーラム」も開催している。

2015年4月にはガイドラインが、同年5月にはCDPWG共同声明が発表され、日米政府の協力として、迅速かつ適切な情報共有体制の構築や、自衛隊及び米軍が任務遂行上依拠する重要インフラの防衛などがあげられるとともに、自衛隊及び米軍の協力として、各々のネットワーク及びシステムの抗たん性の確保や教育交流、共同演習の実施などがあげられた。また、2019年4月の「2+2」では、サイバー分野における協力を強化していくことで一致し、国際法がサイバー空間に適用されるとともに、一定の場合には、サイバー攻撃が日米安保条約第5条にいう武力攻撃に当たり得ることを確認した。

運用協力の面では、日米共同統合演習(実動演習)及び日米共同方面隊指揮所演習においてサイバー攻撃対処訓練を実施しており、2020年10月から同年11月までの日米共同統合演習(実動演習)においても実施した。このほか、米陸軍サイバー教育機関への連絡官の派遣、米国防大学のサイバー戦指揮官要員課程への隊員の派遣など、人材面での協力も実施している。

参照3章3節2項(サイバー領域の利用にかかる協力)

3 その他の協力

その他の協力として、AI分野において、2018年に米国防省が設立した統合AIセンター(JAIC:Joint Artificial Intelligence center)が2020年9月に開催した「AIパートナーシップに関する防衛対話」(AIPfD:AI Partnership for Defense)に防衛省として参加した。その後もAIPfDに継続して参加し、安全保障分野でのAIの活用や多国間にまたがる課題などについて、情報交換などを実施している。