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第II部 わが国の安全保障・防衛政策

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第5章 自衛隊の行動などに関する枠組み

本章では、各種事態などにおける政府としての対応や自衛隊の行動について概説する。

参照資料12(自衛隊の主な行動の要件(国会承認含む)と武器使用権限等について)

1 武力攻撃事態等及び存立危機事態における対応

事態対処法1は、武力攻撃事態及び武力攻撃予測事態(「武力攻撃事態等2」)並びに存立危機事態3への対処のための態勢を整備し、もってわが国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に資することを目的としている。同法では、武力攻撃事態等及び存立危機事態への対処についての基本理念、基本的な方針(対処基本方針)として定めるべき事項、国・地方公共団体の責務などについて規定している。

1 武力攻撃事態等及び存立危機事態

事態対処法に基づき、政府は、武力攻撃事態等又は存立危機事態に至ったときは、次の事項を定めた対処基本方針を閣議決定し、国会の承認を求める。

ア 対処すべき事態に関する次に掲げる事項

  1. ① 事態の経緯、武力攻撃事態等又は存立危機事態であることの認定及び当該認定の前提となった事実
  2. ② 事態が武力攻撃事態又は存立危機事態であると認定する場合には、わが国の存立を全うし、国民を守るために他に適当な手段がなく、事態に対処するため、武力の行使が必要であると認められる理由

イ 対処に関する全般的な方針

ウ 対処措置に関する重要事項

参照図表II-5-1-1(武力攻撃事態等及び存立危機事態への対処のための手続)

図表II-5-1-1 武力攻撃事態等及び存立危機事態への対処のための手続

2 自衛隊による対処

内閣総理大臣は、武力攻撃事態及び存立危機事態に際して、わが国を防衛するため必要があると認める場合には、自衛隊の全部又は一部に防衛出動を命ずることができる。防衛出動の下令に際しては、原則として国会の事前承認を得なければならない。防衛出動を命じられた自衛隊は「武力の行使」の三要件を満たす場合に限り武力の行使ができる。

3 国民保護

国民保護法4には、武力攻撃事態等及び緊急対処事態5において、国民の生命、身体及び財産を保護し、国民生活などに及ぼす影響を最小とするための、国・地方公共団体などの責務、避難、救援、武力攻撃災害への対処などの措置を規定している。防衛大臣は、都道府県知事からの要請を受け、事態やむを得ないと認める場合、又は事態対策本部長6から求めがある場合は、内閣総理大臣の承認を得て、部隊などに国民保護措置又は緊急対処保護措置(住民の避難支援、応急の復旧など)を実施させることができる。

参照図表II-5-1-2(国民保護等派遣のしくみ)

図表II-5-1-2 国民保護等派遣のしくみ
III部1章2節5項(国民保護に関する取組)

1 正式な法律の名称は、「武力攻撃事態等及び存立危機事態における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律」

2 「武力攻撃事態」とは、わが国に対する外部からの武力攻撃が発生した事態又は当該武力攻撃が発生する明白な危険が切迫していると認められるに至った事態。また、「武力攻撃予測事態」とは、武力攻撃事態には至っていないが、事態が緊迫し、武力攻撃が予測されるに至った事態。両者を合わせて「武力攻撃事態等」と呼称

3 「存立危機事態」とは、わが国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これによりわが国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある事態

4 正式な法律の名称は、「武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律」

5 武力攻撃の手段に準ずる手段を用いて多数の人を殺傷する行為が発生した事態、又は当該行為が発生する明白な危険が切迫していると認められるに至った事態で、国家として緊急に対処することが必要なもの

6 対策本部長は内閣総理大臣を充てることとされているが、両者は別人格として規定されている。