Contents

コラム

防衛白書トップ > コラム > <解説>宇宙領域の特性と「宇宙領域シミュレータ」について

<解説>宇宙領域の特性と「宇宙領域シミュレータ」について

現在、防衛省は宇宙状況監視の体制を構築するため、わが国の人工衛星にとって脅威となる宇宙ゴミなどを監視するレーダーと情報の収集・処理・共有などを行う運用システムの整備を進めています。監視の対象となる宇宙ゴミや各種の人工衛星が周回する高度や軌道の種類は様々で、また人工衛星の運動に影響を与える外力も存在します。したがって、人工衛星に対する脅威を認識するためには、各種軌道の特性や外力による影響などを理解したうえで、例えば人工衛星と宇宙ゴミがいつ、どこで、どの程度まで接近するのかといった解析を行うことが重要な技術の一つとなります。また、地球を取り囲む宇宙の状況を正確に認識するためには、国内関係機関や宇宙関連企業、米国を含めた関係国などとの連携も必要になり、様々な関係部署との連携要領を確立していくことも必要です。こうした宇宙領域における運用に必要な知識及び技能を備えた要員をシステムの本格的な運用開始までに育成していく必要があります。

このため、航空自衛隊は2020年10月に宇宙領域シミュレータを導入し、宇宙領域に携わる隊員の育成に活用しています。本シミュレータでは、レーダー及び光学望遠鏡などによる宇宙物体の観測データのシミュレーションや軌道決定、地球を含む宇宙空間の模擬、各種アセットの模擬が可能であり、宇宙物体同士の接近や再突入などの様々な事象の解析、教育訓練などで使用する宇宙で起こる事象の作成を行うことができる汎用ソフトウェアが搭載されています。本シミュレータを使用し、隊員は宇宙領域における作戦運用全般に必要となる知識及び技能を習得するため、日々教育訓練に励んでいます。

宇宙領域シミュレータを使用した訓練風景

宇宙領域シミュレータを使用した訓練風景

接近事象のシミュレーション結果

接近事象のシミュレーション結果