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第IV部 防衛力を構成する中心的な要素など

第2節 各種訓練環境の整備

1 訓練環境

一層厳しさが増す安全保障環境にあっては、自衛隊が持つ能力を最大限発揮できるよう部隊などの体制整備を図るとともに、訓練の質を向上させることが重要である。

このため、自衛隊の訓練は、可能な限り実戦に近い環境で行うよう努めているが、自衛隊の即応性を維持・向上させるためには、訓練環境をより一層充実させていく必要がある。こうした背景のもと、防衛省では、効率的・効果的な訓練・演習を行うため、国内外での訓練実施基盤の拡充にかかる取組を推進している。

その一環として、防衛省は、防衛大綱に基づき、北海道をはじめとする国内の演習場の整備・活用の拡大を図っているところであり、

2020年6月と8月には、陸自において訓練評価支援隊が矢臼別演習場(北海道野付郡別海町など)において連隊級の実動対抗演習を行った。

また、国内に所在する米軍施設・区域の活用についても、地元との関係に留意しつつ、自衛隊による共同使用の拡大を促進することとしている。

さらに、自衛隊施設や米軍施設・区域以外の場所の利用や米国・オーストラリアなどの国外の良好な訓練環境の活用を促進するとともに、シミュレーターなどを一層積極的に導入することとしている。

このほか、馬毛島(鹿児島県)に、陸海空自衛隊が訓練・活動を行うことができる施設などの整備を進めている。

1 陸上自衛隊

演習場や射場は、地域的にも偏在しているうえ、広さも十分でないこともあり、大部隊の演習や戦車、長射程火砲の射撃訓練などを十分には行えない状況にある。これらの制約は、装備の近代化に伴い大きくなる傾向にある。また、演習場や射場の周辺地域の都市化に伴う制約もある。

このため、国内では実施できない地対空誘導弾部隊や地対艦誘導弾部隊の実射訓練などを米国で行っている。

また、師団レベルや方面隊レベルの実動演習では、大規模な演習場や自衛隊施設・区域以外も活用して訓練を行うなど、限られた国内の演習場などを最大限に活用した訓練を行っているほか、演習場の改善などにも努めている。

練度の定量的な評価のためレーザーの照準を調整する陸自隊員

練度の定量的な評価のためレーザーの照準を調整する陸自隊員

2 海上自衛隊

訓練海域は、気象、海象、船舶交通及び漁業などの関連から使用できる時期や場所に制約がある。このため、例えば、比較的浅い海域で行うことが必要な掃海訓練や潜水艦救難訓練などについては陸奥湾や周防灘の一部などで行っている。

このほか、短期間により多くの部隊が訓練成果をあげられるように計画的・効率的な訓練に努めている。

3 航空自衛隊

現在、わが国周辺の訓練空域の多くは、広さが十分でないため、一部の訓練では、航空機の性能や特性を十分に発揮できないこともあり、また、基地によっては訓練空域との往復に長時間を要している。さらに、飛行場の運用にあたっては、航空機の騒音に関連して早朝や夜間の飛行訓練について十分配慮した訓練を行うことが必要である。

このため、例えば、硫黄島の訓練空域では、逐次、部隊から航空機を派遣し、本土では十分に実施できない訓練などを中心に集中的な訓練を行っている。

また、在日米軍の射爆撃場の共同使用などにより、実弾の射爆撃訓練を行っている。

このほか、米国において高射部隊によるペトリオットの実射訓練を行っているなど、国外の訓練環境の活用に努めている。

動画アイコンQRコード動画:国外の訓練環境を活用した空自高射部隊実弾射撃訓練
URL:https://youtu.be/YkEhg6prw_g(別ウィンドウ)

参照資料57(演習場一覧)