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第IV部 防衛力を構成する中心的な要素など

3 研究開発に関する取組

1 研究開発体制の強化

近年、防衛技術と民生技術との間でボーダレス化が進展し、両者の相乗効果によるイノベーションの創出が期待されており、既存の防衛産業が有する技術のみならず、わが国が保有する幅広い分野の技術にも目を向け、これらを進展させることにも留意しなければ、真に優れた防衛装備品の創製にはつながらなくなってきている。

先進技術の研究開発体制を強化するため、令和3(2021)年度には、新たな領域や既存装備品の枠を超えた領域横断的な機能の創製につながる研究開発を、先進的な基礎研究の成果の活用から装備品としての実現に至るまで一貫して実現する「次世代装備研究所」を防衛装備庁に新設した。

また、同年度には、「政府関係機関移転基本方針」3に基づき、デュアル・ユース技術を活用したUUVなどの研究開発を効率的かつ効果的に実施するとともに、地元の高等教育機関など民生分野においても活用可能な新たな試験評価施設として「艦艇装備研究所岩国海洋環境試験評価サテライト(仮称)」を山口県岩国市へ新設予定である。

加えて、革新的・萌芽的な技術の早期発掘やその育成のための体制を強化するため、国内外の先端技術動向の調査・分析に関する企画立案に従事する「先進技術戦略官」と、大学、民間企業、国立研究機関などの先進的研究の成果活用を推進する「技術連携推進官」を新設した。

2 研究開発の短縮化

テクノロジーの進化が安全保障のあり方を根本から変えようとしていることから、諸外国は先進技術を活用した兵器の開発に注力している。防衛省においても、新たな領域に関する技術や、人工知能(AI)などのゲーム・チェンジャーとなり得る最先端技術など、戦略的に重要な装備・技術分野において技術的優越を確保できるよう、将来的に有望な技術分野への重点化及び研究開発プロセスの合理化などにより、研究開発期間の大幅な短縮を図ることとしている。

具体的には、島嶼防衛用高速滑空弾、モジュール化UUV(Unmanned Underwater Vehicle)、スタンド・オフ電子戦機などについては、研究開発期間を大幅に短縮させるため、装備品の研究開発を段階的に進めるブロック化、モジュール化などの取組を活用することとしている。また、将来潜水艦にかかる研究開発について、既存の潜水艦を種別変更した試験潜水艦を活用し、試験評価の効率化を図ることとしている。さらに、AIやレーザーなどの新しい技術については、運用者が使用方法をイメージできるように防衛装備庁で実証を行うとともに、企業などから技術的実現可能性に関する情報を早期に収集し、十分な分析を行うことで、将来の装備品の能力を具体化することとしている。

また、平成29(2017)年度から、新技術の短期実用化の取組として、運用ニーズを踏まえながら、AI、VR、ドローンといった技術革新サイクルの速い民生先端技術を活用し、短期間での実用化を推進している。

3 次期戦闘機の開発

F-2戦闘機の後継機である次期戦闘機については、開発を効率的に実施するため、2020年4月、防衛装備庁に「装備開発官(次期戦闘機担当)」を新設した。また、同年10月には、戦闘機全体のインテグレーションを担当する機体担当企業として、令和2(2020)年度事業に関し三菱重工業株式会社と契約を締結し、開発に着手した。

同年12月には、次期戦闘機の開発にあたり、米国ロッキード・マーチン社をインテグレーション支援の候補企業として選定した。また、日米間の相互運用性の確保のため、令和3(2021)年度から米国装備品とのデータリンク連接にかかる研究事業を新たに開始するなど、米国から必要な支援と協力を受けながら、わが国主導の開発を行うこととした。なお、次期戦闘機のエンジン、搭載電子機器などの各システムについては、開発経費や技術リスクの低減のため、米国及び英国と引き続き協議を行い、協力の可能性を追求している。

参照I部3章1節(軍事科学技術をめぐる動向)

3 平成28年3月22日まち・ひと・しごと創生本部決定