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第III部 わが国防衛の三つの柱(防衛の目標を達成するための手段)

2 「日米防衛協力のための指針」(ガイドラインの内容)

日米間の役割や協力などのあり方についての一般的な大枠及び政策的な方向性を示した「日米防衛協力のための指針」(ガイドライン)は、1978年に策定され、1997年及び2015年に逐次改訂されている。

2015年に改訂された現行のガイドラインは、日米両国の役割及び任務についての一般的な大枠及び政策的な方向性を更新するとともに、同盟を現代に適合したものとし、また、平時から緊急事態までのあらゆる段階における抑止力及び対処力を強化することで、より力強い同盟とより大きな責任の共有のための戦略的な構想を明らかにするものである。

参照資料16(日米防衛協力のための指針(平成27年4月27日)(仮訳))
図表III-2-1-1(日米同盟にかかわる主な経緯)
図表III-2-1-2(日米防衛協力のための指針の概要)

図表III-2-1-1 日米同盟にかかわる主な経緯

図表III-2-1-2 日米防衛協力のための指針の概要

1 同盟内の調整の強化
(1)同盟調整メカニズムの設置

2015年11月、日米両政府は、ガイドラインに基づき、わが国の平和と安全に影響を与える状況や、その他の同盟としての対応を必要とする可能性があるあらゆる状況に、切れ目のない形で実効的に対処することを目的として、同盟調整メカニズム(ACM:Alliance Coordination Mechanism)を設置した。

同盟調整メカニズムでは、図表III-2-1-3に示す構成に基づき、平時から緊急事態までのあらゆる段階における、自衛隊及び米軍により実施される活動に関連した政策面及び運用面の調整を行い、適時の情報共有や共通の情勢認識の構築・維持を行う。

エスパー米国防長官と会談する河野防衛大臣(2020年8月)

エスパー米国防長官と会談する河野防衛大臣(2020年8月)

その特徴は、①平時から利用可能であること、②日本国内における大規模災害やインド太平洋地域及びグローバルな協力でも活用が可能であること、③日米の関係機関の関与を確保した政府全体にわたる調整が可能であることであり、これらにより、日米両政府は、調整の必要が生じた場合に適切に即応できるようになった。例えば、国内で大規模災害が発生した場合においても、自衛隊及び米軍の活動にかかる政策面・運用面の様々な調整が必要になるが、同メカニズムの活用により、様々なレベルでの日米の関係機関の関与を得た調整を緊密かつ適切に実施することが可能になった。

同メカニズムの設置以降、例えば、熊本地震、北朝鮮の弾道ミサイル発射や尖閣諸島周辺海空域における中国の活動などについて、日米間では、同メカニズムも活用しながら、緊密な連携がとられている。

参照図表III-2-1-3(同盟調整メカニズム(ACM)の構成)

図表III-2-1-3 同盟調整メカニズム(ACM)の構成

(2)運用面の調整の強化

日米両政府は、ガイドラインに基づき、運用面の調整機能の併置の重要性を認識し、自衛隊及び米軍は、緊密な情報共有、円滑な調整及び国際的な活動を支援するための要員の交換を実施することとしている。

(3)共同計画策定メカニズムの設置

2015年11月、日米両政府は、ガイドラインに基づき、わが国の平和及び安全に関連する緊急事態に際して効果的な日米共同対処を可能とするため、平時において共同計画の策定をガイドラインにしたがって実施することを目的とし、共同計画策定メカニズム(BPM:Bilateral Planning Mechanism)を設置した。

同メカニズムは、共同計画の策定に際し、閣僚レベルからの指示・監督及び関係省庁の関与を確保するとともに、共同計画の策定に資する日米間の各種協力についての調整を実施する役割を果たすものであり、両政府は、同メカニズムを通じ、共同計画を策定していくこととしている。

参照図表III-2-1-4(共同計画策定メカニズム(BPM)の構成)

図表III-2-1-4 共同計画策定メカニズム(BPM)の構成

2 日米防衛協力の強化

ガイドラインでは、わが国の平和及び安全の切れ目のない確保のため、平時から、情報収集・警戒監視・偵察(ISR)活動、防空及びミサイル防衛、海洋安全保障、訓練・演習、アセットの防護、後方支援などの措置をとることや、日本における大規模災害への対処などにおいて日米が協力することなどが明示されている。

また、地域の及びグローバルな平和と安全のため、国際的な活動において日米が協力することや三か国及び多国間協力を推進・強化すること、宇宙及びサイバー空間に関して協力すること、日米協力の実効性をさらに向上させるための基盤として防衛装備・技術協力や情報協力・情報保全などの日米共同の取組を発展・強化することなどが明示されている。

日米共同統合演習(キーン・ソード21)における山崎統幕長とシュナイダー在日米軍司令官による共同記者会見(2020年10月)

日米共同統合演習(キーン・ソード21)における山崎統幕長とシュナイダー在日米軍司令官による共同記者会見(2020年10月)

参照2節(日米同盟の抑止力及び対処力の強化)
3節(幅広い分野における協力の強化・拡大)