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第I部 わが国を取り巻く安全保障環境

第9節 欧州・カナダ

1 全般

冷戦終結以降、欧州の多くの国では、欧州域内やその周辺における地域紛争の発生、国際テロリズムの台頭、大量破壊兵器の拡散、サイバー空間における脅威の増大といった多様な安全保障課題に対処する必要性が認識されてきた一方で、国家による大規模な侵攻の脅威は消滅したと認識されてきた。しかし、2014年2月以降のウクライナ情勢の緊迫化を受け、ロシアによる力を背景とした一方的な現状変更の試みや、「ハイブリッド戦」に対応すべく、既存の戦略の再検討や新たなコンセプト立案の必要に迫られている。また、国際テロリズムに関しては、各国国内におけるテロとみられる事案の発生を受け、その対応が急務となっている。さらに、長期化するシリア内戦など、混迷する中東情勢を背景として急増した難民・移民をめぐる問題をはじめ、依然として国境の安全確保が課題となっている。

こうした課題・状況に対処するため、欧州では、北大西洋条約機構(NATO:North Atlantic Treaty Organization)や欧州連合(EU:European Union)といった多国間の枠組みをさらに強化・拡大しつつ、欧州域外の活動にも積極的に取り組むなど、国際社会の安全・安定のために貢献している。また、各国レベルでも、安全保障・防衛戦略の見直しや国防改革、二国間・多国間での防衛・安全保障協力強化を進めている。

参照図表I-2-9-1(NATO・EU加盟国の拡大状況)

図表I-2-9-1 NATO・EU加盟国の拡大状況