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第I部 わが国を取り巻く安全保障環境

第7節 東南アジア

1 全般

東南アジアは、マラッカ海峡や南シナ海など、太平洋とインド洋を結ぶ交通の要衝を占めており、経済活動や国民の生活に必要な物資の多くを海上輸送に依存しているわが国にとって重要な地域である。

一方、この地域には、南シナ海の領有権などをめぐる対立や、少数民族問題、分離・独立運動などが依然として不安定要素として存在しているほか、イスラム過激派の問題や船舶の安全な航行を妨害する海賊行為なども発生している。こうした問題に対処するため、東南アジア各国は、国防や国内の治安維持のほか、テロや、海賊対処などの新たな安全保障上の課題にも対応した軍事力などの形成に努めているほか、米国、中国、ロシア、オーストラリア、インドなど諸外国との協力を進めている。近年では経済成長などを背景として、海・空軍力を中心とした軍の近代化や海上法執行能力の強化が進められている。

東南アジアは、新型コロナウイルス感染症により大きな影響を受けている。東南アジア各国は、新型コロナウイルス感染症を抑え込むために国境の封鎖や国内での都市封鎖・行動制限などの措置を講じた。一方、新型コロナウイルス感染症の流行拡大は各国経済に深刻な影響を与えており、東南アジア各国はコロナ対策費を捻出するため、国防予算の削減及び共同演習の中止・延期を決定するなどの対応をとっており、軍事面にも影響がみられた。