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第I部 わが国を取り巻く安全保障環境

2 軍事態勢

1 全般

米軍の運用は、軍種ごとではなく、軍種横断的に編成された統合軍(Unified Combatant Command)の指揮のもとで行われており、統合軍は、機能によって編成された4つの機能統合軍と、地域によって編成された7つの地域統合軍から構成されている。

陸上戦力は、陸軍約48万人、海兵隊約18万人を擁し、ドイツ、韓国、日本などに戦力を前方展開している。

海上戦力は、艦艇約970隻(うち潜水艦約70隻)約730万トンを擁し、西太平洋及びインド洋に第7艦隊、東太平洋に第3艦隊、南米及びカリブ海に第4艦隊、米東海岸、北大西洋及び北極海に第2艦隊、東大西洋、地中海及びアフリカに第6艦隊、ペルシャ湾、紅海及び北西インド洋に第5艦隊を展開している。

航空戦力は、空軍、海軍と海兵隊を合わせて作戦機約3,530機を擁し、空母艦載機を洋上に展開するほか、ドイツ、英国、日本や韓国などに戦術航空戦力の一部を前方展開している。

核戦力を含む戦略攻撃兵器については、オバマ前政権において米国は2011年2月に発効した新戦略兵器削減条約に基づく削減を進め、配備戦略弾頭7は1,357発、配備運搬手段は651基・機であると公表した8。米国はさらに、核兵器への依存を低減させるための新たな能力の一つとして、「通常兵器による迅速なグローバル打撃」(CPGS:Conventional Prompt Global Strike)構想を研究している。

また、サイバー空間での脅威の増大に対処するため、2018年5月、戦略軍の隷下にあったサイバー軍を、統合軍に格上げした。

さらに、米国は2019年8月、地域別統合軍として宇宙コマンドを創設するとともに、同年12月には6番目の軍種として空軍省内に宇宙軍を創設している。

参照図表I-2-1-2(統合軍の構成)

図表I-2-1-2 統合軍の構成

2 インド太平洋地域における現在の軍事態勢

太平洋国家である米国は、インド太平洋地域に陸・海・空軍と海兵隊の統合軍であるインド太平洋軍を配置し、この地域の平和と安定のために、引き続き重要な役割を果たしている。インド太平洋軍は、最も広い地域を担当する地域統合軍であり、隷下には、統合部隊である在韓米軍や在日米軍などが存在している。

インド太平洋軍は、太平洋陸軍、太平洋艦隊、太平洋海兵隊、太平洋空軍などから構成されており、それらの司令部は全てハワイに置かれている。

太平洋陸軍は、ハワイの第25歩兵師団、在韓米軍の陸軍構成部隊である韓国の第8軍、また、アラスカ陸軍などを隷下に置くほか、日本に第1軍団の前方司令部・在日米陸軍司令部など約2,500人を配置している9

太平洋艦隊は、西太平洋とインド洋などを担当する第7艦隊、東太平洋やベーリング海などを担当する第3艦隊などを有し、艦艇約200隻を擁している10。このうち第7艦隊は、1個空母打撃群を中心に構成されており、日本、グアムを主要拠点として、領土、国民、シーレーン、同盟国その他米国の重要な国益を防衛することなどを任務とし、空母、水陸両用戦艦艇やイージス巡洋艦などを配備している。

太平洋海兵隊は、米本土と日本にそれぞれ1個海兵機動展開部隊を配置している。このうち、日本には第3海兵師団とF-35B戦闘機などを装備する第1海兵航空団約2万1,000人が展開しているほか、重装備などを積載した事前集積船が西太平洋に配備されている11

太平洋空軍は3個空軍を有し、このうち、日本の第5空軍に3個航空団(F-16戦闘機、C-130輸送機などを装備)を、韓国の第7空軍に2個航空団(F-16戦闘機などを装備)を配備している。

参照図表I-2-1-3(米軍の配備状況)
図表I-2-1-4(インド太平洋地域への関与(イメージ))

図表I-2-1-3 米軍の配備状況

図表I-2-1-4 インド太平洋地域への関与(イメージ)

7 配備済みのICBM及び潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM:Submarine-Launched Ballistic Missile)に搭載した弾頭並びに配備済みの重爆撃機に搭載した核弾頭(配備済みの重爆撃機は1つの核弾頭としてカウント)

8 2021年3月1日現在の数値であるとしている。

9 本項で用いられている米軍の兵力数は、米国防省公刊資料(2020年12月31日現在)による現役実員数であり、部隊運用状況に応じて変動しうる。

10 ブレイスウェイト海軍長官は2020年12月、上院の公聴会において、インド太平洋地域における態勢を向上させるため、インドと南アジア地域を責任海域とする「第1艦隊」を編成すると発言した。同長官は、同艦隊について、太平洋艦隊に属し、現在の第7艦隊の責任地域を分割して担当すると説明している。

11 脚注9参照