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ダイジェスト 第IV部 防衛力を構成する中心的な要素など

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防衛力を支える人的基盤

人的基盤の強化

  • 防衛大綱は、防衛力の中核は自衛隊員であり、自衛隊員の人材確保と能力・士気の向上は防衛力の強化に不可欠としている。そして、これらは人口減少と少子高齢化の急速な進展によって喫緊の課題となっており、防衛力の持続性・強靭性の観点からも、防衛力を支える人的基盤の強化をこれまで以上に推進していく必要があるとしている。

採用対象人口の推移

人材の有効活用

自衛官の若年定年年齢を20(令和2)年から現中期防期間中に1歳、次期中期防期間中に1歳、階級毎に段階的に引き上げることとしており、20(令和2)年に1尉から1曹の定年年齢を引き上げた。また、限られた人員で稼働率を確保していく観点から、海自の一部艦艇では、複数クルーで交替勤務し稼働日数の増加を図るクルー制を導入しており、新型艦艇(FFM)についてもクルー制の導入を検討している。

生活・勤務環境の改善及び処遇の向上

即応性確保などのために必要な隊舎・宿舎の確保及び建替えを加速し、同時に、施設の老朽化対策及び耐震化対策を推進するほか、老朽化した生活・勤務用備品を確実に更新し、日用品などの所要数を確保している。

また、任務や勤務環境の特殊性などを踏まえ、処遇を改善することとしている。自衛官の任務の危険性や特殊性、官署が所在する地域の特性に応じた適切な処遇を確保するため、特殊勤務手当などの改善を図るとともに、災害対処能力などの向上のため簡易ベッドの整備や非常用糧食の改善を実施している。

ワークライフバランス・女性の活躍の更なる推進

働き方改革

全ての隊員が能力を十分に発揮して活躍できるよう、ワークライフバランス確保のため、長時間労働の是正や休暇の取得の促進などに努めている。

女性の活躍

防衛省・自衛隊においては、女性自衛官の採用・登用に際しては、機会均等のさらなる徹底を図るとともに、本人の意欲と能力・適性に基づく適材適所の配置に努めることを、人事管理の方針としている。19(令和元)年12月には、女性自衛官初のイージス艦艦長が就任するなど、女性自衛官の活躍が推進されている。また、女性自衛官の配置制限について順次見直しを行い、18(平成30)年12月に潜水艦の配置制限を解除したことにより、「母性の保護」の観点から女性が配置できない部隊(陸上自衛隊の特殊武器(化学)防護隊の一部及び坑道中隊)を除き、配置制限を全面的に解除した。

女性初のイージス艦艦長として着任した大谷1佐(19(令和元)年12月)

女性初のイージス艦艦長として着任した
大谷1佐(19(令和元)年12月)

防衛装備・技術に関する諸施策

技術基盤の強化

  • 新たな領域に関する技術やゲーム・チェンジャーとなり得る重要技術など、戦略的に重要な装備・技術分野で技術的優越を確保し得るよう「中長期技術見積り」を見直している。
  • 次期戦闘機の開発にあたっては、技術的信頼性の向上やわが国が負担するコストの低減のため、国際協力を視野に入れ、わが国が主導で開発する上で最適な開発手法を検討している。

次期戦闘機(イメージ)

次期戦闘機(イメージ)

装備調達の最適化

  • 18品目のプロジェクト管理重点対象装備品を選定し、装備品の効果的・効率的な取得を推進するとともに、長期契約を活用した装備品などの一括調達により、調達コストの縮減に取り組んでいる。
  • FMS調達の履行に関する防衛省内の管理体制を強化しつつ、日米間で物品の納入及び役務の提供の状況を常続的に把握していくとともに、日米間の緊密な協議などを通じて米国政府との連携を強化することで、履行管理の強化を図っている。

産業基盤の強靱化

  • わが国の産業基盤の強靭化のため、①企業間の競争環境の創出に向けた契約制度の見直し、②装備品のサプライチェーンのリスク管理強化、③輸入装備品などの維持整備などへのわが国防衛産業のさらなる参画、④防衛装備移転三原則のもとでの装備品の適切な海外移転の推進に取り組んでいくこととしている。

防衛装備・技術協力

  • わが国は、自国の安全保障、平和貢献・国際協力の推進及び技術基盤・産業基盤の維持・強化に資するよう、防衛装備移転三原則に基づき、諸外国との防衛装備・技術協力を推進している。
  • UH-1Hの部品などのフィリピンへの無償譲渡について、19(平成31)年3月、引き渡しを開始し、19(令和元)年9月に完了した。
  • 防衛装備・技術協力の推進のため、国際防衛装備品展示会に出展するとともに、フィリピンなどとの間で官民防衛産業フォーラムを開催した。

幕張メッセで開催された「防衛・セキュリティ技術国際展示会/カンファレンスDSEI Japan 2019」(19(令和元)年11月)

幕張メッセで開催された
「防衛・セキュリティ技術国際展示会/カンファレンスDSEI Japan 2019」
(19(令和元)年11月)

情報機能の強化

  • 情勢の推移に応じて的確に防衛政策を立案し、また、各種事態への対処において防衛力を効果的に運用するためには、わが国周辺などにおける中長期的な軍事動向を把握するとともに、各種事態の兆候を早期に察知することが必要である。このため、防衛省・自衛隊は、平素から、各種の手段による情報の迅速・的確な収集に努めている。
    防衛省・自衛隊による具体的な情報収集の手段としては、①わが国上空に飛来する軍事通信電波や電子兵器の発する電波などの収集・処理・分析、②各種画像衛星(情報収集衛星を含む)からのデータの収集・判読・分析、③艦艇・航空機などによる警戒監視、④各種公刊情報の収集・整理、⑤各国国防機関などとの情報交換、⑥防衛駐在官などによる情報収集などがあげられる。

マレーシア防衛駐在官 五十嵐2佐

マレーシア防衛駐在官 五十嵐2佐

防衛力を支える要素

自衛隊の訓練

各自衛隊の部隊などで行う訓練・演習は、隊員それぞれの職務に必要な技量の向上を目的とした隊員個々の訓練と、部隊の組織的な能力の練成を目的とした部隊の訓練・演習とに大別される。隊員個々の訓練は、職種などの専門性や隊員の能力に応じて個別的、段階的に行われる。部隊の訓練・演習は、小部隊から大部隊へと訓練を積み重ねながら、部隊間での連携などの大規模な総合訓練も行っている。

各自衛隊は、大綱及び中期防に基づき、各種事態発生時に効果的に対処し、抑止力の実効性を高めるため、自衛隊の統合訓練・演習や日米共同訓練・演習を計画的かつ目に見える形で実施するとともに、これらの訓練・演習の教訓などを踏まえ、事態に対処するための各種計画を不断に検証し、見直しを行っている。

基本的な訓練に臨む新入隊員

基本的な訓練に臨む新入隊員

衛生機能の強化

自衛隊が、その任務を遂行するためには、隊員の健康を適切に管理し、部隊の壮健性を維持していくことが必要である。また、各種事態に対応する隊員の生命を最大限に守れるよう衛生機能の充実・強化に不断に取り組んでいくことが重要である。

加えて、自衛隊の任務が多様化・国際化する中で、災害派遣や国際平和協力活動における衛生支援や医療分野における能力構築支援など様々な衛生活動のニーズに適確に応えていくことが重要である。

新型コロナウイルス感染拡大を受けた防衛省・自衛隊の取組として、自衛隊病院や防衛医科大学校病院においては、20(令和2)年2月1日から新型コロナウイルス感染症患者を受入れている。これまでに、自衛隊中央病院のほか札幌、横須賀、阪神、福岡、熊本の各自衛隊地区病院及び防衛医科大学校病院において、430名の新型コロナウイルス感染症患者を受入れた(5月31日時点)。

地域社会・国民とのかかわり

地域コミュニティーとの連携

防衛省・自衛隊は、不発弾や機雷の処理など、民生支援として様々な協力活動を行っている。また、令和元年度は国家的行事である「即位の礼」に際して儀礼を実施した。2021年に開催されることとなった東京オリンピック・パラリンピックに関しても、選手として参加するのみならず、競技会場周辺を含むわが国上空・海域の警戒監視、大規模テロ等が発生した場合の被災者救援、サイバー攻撃等への対処に関する支援等に取組んでいくこととしている。

手動による不発弾の信管除去

手動による不発弾の信管除去

「即位の礼」における礼砲(19(令和元)年10月)

「即位の礼」における礼砲(19(令和元)年10月)

防衛施設と周辺地域との調和を図るための施策

防衛施設と周辺地域との調和を図るため、飛行場をはじめとする防衛施設の設置・運用により、その周辺地域において生じる航空機騒音などの障害の防止、軽減、緩和などの措置を講じている。

在日米軍の安定的な駐留のためには、基地周辺の自治体や住民の方々の理解と協力を得ることが不可欠であり、在日米軍の部隊運用等に関する地方公共団体等との調整、在日米軍再編に係る交付金等の交付、事件・事故発生時の自治体等への速やかな情報提供、在日米軍と地域住民の交流の促進など、様々な取組を不断に行っていくこととしている。

さらに、国内外で持続可能な地球環境の達成のための取組が加速していることを受け、防衛省としても、政府の一員として環境問題の解決に貢献するとともに、自衛隊施設及び米軍施設・区域と周辺地域の共生についてより一層重点を置いた施策を進めていくこととしている。

イベント・広報施設など

防衛省・自衛隊では、自衛隊の現状を広く国民に紹介する活動を行っている。この活動には、陸自の富士総合火力演習や海自の体験航海、空自のブルーインパルスによる展示飛行や体験搭乗などがある。さらに、自衛隊記念日記念行事の一環として、自衛隊音楽まつりを日本武道館で毎年開催している。19(令和元)年は、日本武道館の改修工事により国立代々木競技場第1体育館で開催し、延べ約3万8,500人が来場した。

ブルーインパルスを率いる第11飛行隊長の福田2佐

ブルーインパルスを率いる第11飛行隊長の福田2佐

令和元年度自衛隊音楽まつりの様子

令和元年度自衛隊音楽まつりの様子

公文書管理・情報公開に関する取組

防衛省・自衛隊は、職員の意識や組織の文化を改革し、チェック態勢を充実させるなど、行政文書の管理や情報公開請求への対応の適正化に取り組んでいる。