自衛官の若年定年年齢を20(令和2)年から現中期防期間中に1歳、次期中期防期間中に1歳、階級毎に段階的に引き上げることとしており、20(令和2)年に1尉から1曹の定年年齢を引き上げた。また、限られた人員で稼働率を確保していく観点から、海自の一部艦艇では、複数クルーで交替勤務し稼働日数の増加を図るクルー制を導入しており、新型艦艇(FFM)についてもクルー制の導入を検討している。
即応性確保などのために必要な隊舎・宿舎の確保及び建替えを加速し、同時に、施設の老朽化対策及び耐震化対策を推進するほか、老朽化した生活・勤務用備品を確実に更新し、日用品などの所要数を確保している。
また、任務や勤務環境の特殊性などを踏まえ、処遇を改善することとしている。自衛官の任務の危険性や特殊性、官署が所在する地域の特性に応じた適切な処遇を確保するため、特殊勤務手当などの改善を図るとともに、災害対処能力などの向上のため簡易ベッドの整備や非常用糧食の改善を実施している。
全ての隊員が能力を十分に発揮して活躍できるよう、ワークライフバランス確保のため、長時間労働の是正や休暇の取得の促進などに努めている。
防衛省・自衛隊においては、女性自衛官の採用・登用に際しては、機会均等のさらなる徹底を図るとともに、本人の意欲と能力・適性に基づく適材適所の配置に努めることを、人事管理の方針としている。19(令和元)年12月には、女性自衛官初のイージス艦艦長が就任するなど、女性自衛官の活躍が推進されている。また、女性自衛官の配置制限について順次見直しを行い、18(平成30)年12月に潜水艦の配置制限を解除したことにより、「母性の保護」の観点から女性が配置できない部隊(陸上自衛隊の特殊武器(化学)防護隊の一部及び坑道中隊)を除き、配置制限を全面的に解除した。
女性初のイージス艦艦長として着任した
大谷1佐(19(令和元)年12月)
次期戦闘機(イメージ)
幕張メッセで開催された
「防衛・セキュリティ技術国際展示会/カンファレンスDSEI Japan 2019」
(19(令和元)年11月)
マレーシア防衛駐在官 五十嵐2佐
各自衛隊の部隊などで行う訓練・演習は、隊員それぞれの職務に必要な技量の向上を目的とした隊員個々の訓練と、部隊の組織的な能力の練成を目的とした部隊の訓練・演習とに大別される。隊員個々の訓練は、職種などの専門性や隊員の能力に応じて個別的、段階的に行われる。部隊の訓練・演習は、小部隊から大部隊へと訓練を積み重ねながら、部隊間での連携などの大規模な総合訓練も行っている。
各自衛隊は、大綱及び中期防に基づき、各種事態発生時に効果的に対処し、抑止力の実効性を高めるため、自衛隊の統合訓練・演習や日米共同訓練・演習を計画的かつ目に見える形で実施するとともに、これらの訓練・演習の教訓などを踏まえ、事態に対処するための各種計画を不断に検証し、見直しを行っている。
基本的な訓練に臨む新入隊員
自衛隊が、その任務を遂行するためには、隊員の健康を適切に管理し、部隊の壮健性を維持していくことが必要である。また、各種事態に対応する隊員の生命を最大限に守れるよう衛生機能の充実・強化に不断に取り組んでいくことが重要である。
加えて、自衛隊の任務が多様化・国際化する中で、災害派遣や国際平和協力活動における衛生支援や医療分野における能力構築支援など様々な衛生活動のニーズに適確に応えていくことが重要である。
新型コロナウイルス感染拡大を受けた防衛省・自衛隊の取組として、自衛隊病院や防衛医科大学校病院においては、20(令和2)年2月1日から新型コロナウイルス感染症患者を受入れている。これまでに、自衛隊中央病院のほか札幌、横須賀、阪神、福岡、熊本の各自衛隊地区病院及び防衛医科大学校病院において、430名の新型コロナウイルス感染症患者を受入れた(5月31日時点)。
防衛省・自衛隊は、不発弾や機雷の処理など、民生支援として様々な協力活動を行っている。また、令和元年度は国家的行事である「即位の礼」に際して儀礼を実施した。2021年に開催されることとなった東京オリンピック・パラリンピックに関しても、選手として参加するのみならず、競技会場周辺を含むわが国上空・海域の警戒監視、大規模テロ等が発生した場合の被災者救援、サイバー攻撃等への対処に関する支援等に取組んでいくこととしている。
手動による不発弾の信管除去
「即位の礼」における礼砲(19(令和元)年10月)
防衛施設と周辺地域との調和を図るため、飛行場をはじめとする防衛施設の設置・運用により、その周辺地域において生じる航空機騒音などの障害の防止、軽減、緩和などの措置を講じている。
在日米軍の安定的な駐留のためには、基地周辺の自治体や住民の方々の理解と協力を得ることが不可欠であり、在日米軍の部隊運用等に関する地方公共団体等との調整、在日米軍再編に係る交付金等の交付、事件・事故発生時の自治体等への速やかな情報提供、在日米軍と地域住民の交流の促進など、様々な取組を不断に行っていくこととしている。
さらに、国内外で持続可能な地球環境の達成のための取組が加速していることを受け、防衛省としても、政府の一員として環境問題の解決に貢献するとともに、自衛隊施設及び米軍施設・区域と周辺地域の共生についてより一層重点を置いた施策を進めていくこととしている。
防衛省・自衛隊では、自衛隊の現状を広く国民に紹介する活動を行っている。この活動には、陸自の富士総合火力演習や海自の体験航海、空自のブルーインパルスによる展示飛行や体験搭乗などがある。さらに、自衛隊記念日記念行事の一環として、自衛隊音楽まつりを日本武道館で毎年開催している。19(令和元)年は、日本武道館の改修工事により国立代々木競技場第1体育館で開催し、延べ約3万8,500人が来場した。
ブルーインパルスを率いる第11飛行隊長の福田2佐
令和元年度自衛隊音楽まつりの様子
防衛省・自衛隊は、職員の意識や組織の文化を改革し、チェック態勢を充実させるなど、行政文書の管理や情報公開請求への対応の適正化に取り組んでいる。