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<解説>ロシアと中国の軍事協力の動向

かつてロシア(ソ連)と中国の間では、イデオロギー対立や武力衝突に至るほどの国境紛争により長らく関係が悪化していましたが、04(平成16)年に国境画定で最終合意して以降、根底には相互不信感を抱えつつも、ロシアによるウクライナ危機や中国の南シナ海問題などによる国際社会からの非難や米国の一極支配への対抗などを背景に「便宜的結婚」と呼ばれる戦略的な友好関係を築いてきました。最近では、プーチン大統領と習国家主席のもと、両国の関係は「蜜月時代」を迎えており、軍事分野においても、急速な経済発展に伴い軍事力増強を推し進める中国と、ソ連崩壊後衰退した軍事産業の復興を企図するロシアの利害が一致し、協力関係が進展しています。

注目すべき事例としては、ロシアの中国への武器輸出が挙げられます。従来、中国はロシア製兵器の最大の顧客でしたが、07(平成19)年のロシア製Su-27戦闘機の中国による違法コピー問題などから、ロシアは中国に対して最新兵器の輸出を抑制していたといわれています。しかし、ウクライナ危機以降、西側諸国によるロシアへの経済制裁の影響から、両国間の軍事技術協力が増えているほか、中国向けに最新兵器が輸出される傾向がうかがえます。例えば、18(平成30)年までに新型のSu-35戦闘機24機の中国への納入が確認されたほか、防空用兵器として各国から引合いの多い地対空ミサイルコンプレクスS-400の初の輸出先としてロシアは中国を選定しています。

また、演習面での協力も拡大している様子が見られます。12(平成24)年以降ほぼ毎年、実施している海軍共同演習「海上協力」の内容は年々ハイレベルなものとなっているほか、18(平成30)年には、ロシアが自軍の任務遂行能力や態勢を検証するために毎年実施している大規模演習に中国がモンゴルとともに初めて参加し、注目を集めました。さらに19(令和元)年7月には、ロシアのTu-95長距離爆撃機2機と中国のH-6爆撃機2機が日本海から東シナ海にかけて初の共同哨戒飛行を実施しました。通常、編隊飛行には綿密な調整が必要となることから、両軍によるこの飛行は事前に十分な計画が練られていたものとみられます。

さらに、19(令和元)年6月の中露首脳会談で「両軍関係の新たなレベルへの格上げ」を謳う共同声明を発表し、同年9月4日には、93(平成5)年に署名した軍事協力協定に代わって新たに「軍事及び軍事技術協力に関する文書」に署名するなど、軍事協力の深化を目指す動きがみられます(内容は非公表)。この点、19(令和元)年10月、プーチン大統領が中国との関係について、「全方面における戦略的パートナーシップの同盟関係」と表現したことから、一時は中露軍事同盟復活(両国は1950(昭和25)年から1980(昭和55)年)まで、わが国及びその同盟国を仮想敵国とする軍事同盟を締結)との見方もありましたが、両国の外務・防衛当局が公式にこれを否定しています。

こうした両国の軍事・技術協力を通じて、中国軍の装備性能や運用能力が向上することは、わが国周辺の安全保障上の懸念増大につながりかねず、両国の軍事連携の動向を注視する必要があります。

共同声明署名式でのプーチン大統領と習主席(19(令和元)年6月)【ロシア大統領府】

共同声明署名式でのプーチン大統領と習主席
(19(令和元)年6月)【ロシア大統領府】

ロシアのショイグ国防相と中国中央軍事委員会の張副主席【ロシア国防省】

ロシアのショイグ国防相と中国中央軍事委員会の張副主席
【ロシア国防省】