Contents

第I部 わが国を取り巻く安全保障環境

➐ エジプト情勢

エジプトでは、11(平成23)年、それまで約30年間にわたり大統領を務めたムバラク大統領(当時)が辞任し、12(平成24)年、「イスラムの復興」を目指す大衆組織として1928(昭和3)年に設立されたスンニ派の政治組織であるムスリム同胞団出身のムルスィー大統領(当時)が就任した。しかし、13(平成25)年6月、経済状況や治安の悪化を背景に大規模な民衆デモが発生し、これを受けた軍の介入により同大統領は解任され、14(平成26)年5月、エルシーシ前国防大臣が新たに大統領に就任した。エルシーシ政権はその後、変動為替相場制への移行、補助金の廃止などの経済改革に取り組んできたが、国内の治安対策などが大きな課題となっている。特に、同国本土では、13(平成25)年の政変から17(平成29)年まで大規模テロ事件が散発し、18(平成30)年11月にも同国中部で少数派コプト教徒を標的とするテロ事件が発生した。また、シナイ半島においては、南部地域はおおむね平穏であるものの、北部を中心に軍や警察を狙った攻撃が散発している。18(平成30)年2月以降、シナイ半島北部では、エジプト国軍によるテロリスト掃討作戦「シナイ2018」が進展している。