Contents

ダイジェスト 第III部 わが国防衛の三つの柱(防衛の目標を達成するための手段)

防衛白書トップ > ダイジェスト 第III部 わが国防衛の三つの柱(防衛の目標を達成するための手段)

わが国自身の防衛体制

平時からグレーゾーンの事態への対応

わが国周辺における常続監視
  1. ➊自衛隊は、各種事態に迅速かつシームレスに対応するため、平素から領海・領空とその周辺の海空域において情報収集及び警戒監視を実施している。
  2. ➋自衛隊はわが国周辺海域において、平素実施している警戒監視活動の一環として、国連安保理決議違反が疑われる船舶についての情報収集も実施しており、18(平成30)年から19(令和元)年6月末までに計20回の北朝鮮籍船舶による違法な洋上での物資の積替え(「瀬取り」)と強く疑われる行為を確認し公表している。
  3. ➌「瀬取り」を含む違法な洋上での活動に対し、米国に加え、オーストラリア、カナダ、ニュージーランド及びフランスが、在日米軍嘉手納飛行場を拠点として航空機による警戒監視活動を行った。
    また、米海軍のほか、英国、カナダ、オーストラリア及びフランスの海軍艦艇がわが国周辺海域において警戒監視活動を行った。
  4. ➍18(平成30)年12月、能登半島沖(わが国排他的経済水域内)において警戒監視中の海自P-1哨戒機が、韓国海軍「クァンゲト・デワン」級駆逐艦から火器管制レーダーを照射されるという事案が発生した。防衛省は、客観的事実をとりまとめた最終見解を公表し、韓国側に再発防止を強く求めている。防衛省としては、今後とも安全に十分配意しつつ、警戒監視及び情報収集に万全を期していく。

東シナ海公海上で、「瀬取り」を実施していたことが強く疑われる北朝鮮籍タンカー(左)と船籍不明の小型船舶(19(平成31)年1月)

東シナ海公海上で、「瀬取り」を実施していたことが強く疑われる北朝鮮籍タンカー(左)と船籍不明の小型船舶(19(平成31)年1月)

「瀬取り」の警戒監視活動を実施したフランスFalcon200

「瀬取り」の警戒監視活動を実施したフランスFalcon200

領空侵犯に備えた警戒と緊急発進

  1. ➊空自は、わが国周辺を飛行する航空機を警戒管制レーダーや早期警戒管制機などにより探知・識別し、領空侵犯のおそれのある航空機を発見した場合には、戦闘機などを緊急発進(スクランブル)させ、その航空機の状況を確認し、必要に応じてその行動を監視している。
  2. ➋平成30(2018)年度の空自機による緊急発進(スクランブル)回数は999回であり、過去2番目に多い回数となった。このうち中国機に対するものは前年度比138回増の638回、ロシア機に対するものは前年度比47回減の343回であった。

冷戦期以降の緊急発進実施回数とその内訳

島嶼部を含むわが国に対する攻撃への対応

島嶼部に対する攻撃への対応
  1. ➊島嶼部を含むわが国への攻撃に対しては、必要な部隊を迅速に機動・展開させ、海上・航空優勢を確保しつつ、侵攻部隊の接近・上陸を阻止する。海上・航空優勢の確保が困難な状況になった場合でも、侵攻部隊の脅威圏の外から、その接近・上陸を阻止し、万が一占拠された場合には、あらゆる措置を講じて奪回する。
  2. ➋南西地域の防衛態勢強化のため、 19(平成31)年3月、奄美大島に警備部隊などを、宮古島には警備部隊を配置した。今後は、石垣島にも警備部隊などを配置する。
  3. ➌島嶼防衛に万全を期すため、平成30(2018)年度から島嶼防衛用新対艦誘導弾及び島嶼防衛用高速滑空弾の要素技術の研究に着手した。
  4. ➍迅速かつ大規模な輸送・展開能力を確保するため、輸送艦の改修、V-22オスプレイ及びC-2輸送機などの導入による機動・展開能力の向上を図っている。

「アイアン・フィスト19」において、着上陸訓練を行う水陸両用車(19(平成31)年1~2月)

「アイアン・フィスト19」において、着上陸訓練を行う水陸両用車(19(平成31)年1~2月)

ミサイル攻撃などへの対応
  1. ➊わが国の弾道ミサイル防衛は、現在、イージス艦による上層での迎撃とペトリオットPAC-3による下層での迎撃を、自動警戒管制システム(JADGE)により連携させて効果的に行う多層防衛を基本としている。
  2. ➋今後の陸上配備型イージス・システム(イージス・アショア)の導入により、イージス艦に加え、イージス・アショアも含めた上層での迎撃が可能となる。
  3. ➌複雑化・多様化する経空脅威に対処し被害を局限するため、ミサイル防衛に加え、防空のための装備品も併せ一体的に運用する体制を確立し、常時持続的にわが国全土を防護するとともに、多数の複合的な経空脅威にも同時対処できる総合ミサイル防空能力を強化していく。

宇宙・サイバー・電磁波の領域での対応

宇宙領域での対応
  1. ➊令和4(2022)年度までに宇宙状況監視(SSA)体制を構築することを目指し、わが国の人工衛星にとって脅威となる宇宙ゴミなどを監視するためのレーダーと運用システムの整備を進めている。
  2. ➋防衛省・自衛隊は、新中期防に基づき、
    • ① 宇宙状況監視(SSA)体制の構築、
    • ② 宇宙領域を活用した情報収集、通信、測位などの各種能力の向上、
    • ③ 相手方の指揮統制・情報通信を妨げる能力を含め、宇宙利用の優位を確保するための能力の強化に取り組んでいく。

宇宙状況監視(SSA)体制構築に向けた取組

サイバー領域での対応
  1. ➊防衛省・自衛隊では、情報システムの安全性確保や専門部隊によるサイバー攻撃対処など、総合的な施策を行っている。
  2. ➋今後は、これまでの取組に加え、新防衛大綱に基づき、有事において、わが国への攻撃に際して、当該攻撃に用いられる相手方によるサイバー空間の利用を妨げる能力を含め、サイバー防衛能力の抜本的強化を図ることとしている。
  3. ➌令和元(2019)年度に、サイバー防衛隊を約70名増員し、約220名へと拡充する。

防衛省・自衛隊におけるサイバー攻撃対処のための総合的施策

電磁波領域での対応
  1. ➊電磁波は、技術の発展により、活用範囲や用途が拡大し、現在の戦闘様相における主要な領域の一つと認識されるようになってきている。
  2. ➋防衛省・自衛隊においても、
    • ① 電磁波の利用を適切に管理・調整する機能の強化
    • ② 電磁波に関する情報収集・分析能力の強化及び情報共有態勢の構築
    • ③ わが国への侵攻を企図する相手方のレーダーや通信などを無力化するための能力の強化などに取り組んでいく。

相手方のレーダーや通信などを無力化するネットワーク電子戦装置

相手方のレーダーや通信などを無力化する
ネットワーク電子戦装置

大規模災害などへの対応

自然災害などへの対応
  1. ➊自衛隊は、地方公共団体などと連携・協力し、被災者や遭難した船舶・航空機の捜索・救助、防疫などの活動を行っており、平成30(2018)年度は、443件の災害派遣を実施した。
  2. ➋自衛隊は、離島などの救急患者を航空機で緊急輸送(急患輸送)しており、平成30(2018)年度の災害派遣総数443件のうち334件が急患輸送であった。

平成30年7月豪雨において、人命救助活動を行う陸自隊員(18(平成30)年7月)

平成30年7月豪雨において、人命救助活動を行う陸自隊員
(18(平成30)年7月)

平成30年北海道胆振東部地震において、警備犬を活用し捜索活動を行う空自隊員(18(平成30)年9月)

平成30年北海道胆振東部地震において、警備犬を活用し捜索活動を行う空自隊員(18(平成30)年9月)

急患の発生した船舶の近傍に着水し急患輸送を行う海自US-2(18(平成30)年10月)

急患の発生した船舶の近傍に着水し
急患輸送を行う海自US-2(18(平成30)年10月)

日米同盟

日米安全保障体制の意義

  1. ➊日米安保条約に基づく日米安保体制は、わが国自身の防衛体制とあいまってわが国の安全保障の基軸である。
  2. ➋日米安保体制を中核とする日米同盟は、わが国のみならず、インド太平洋地域、さらには国際社会の平和と安定及び繁栄に大きな役割を果たしている。
ガイドラインの概要

「日米防衛協力のための指針」(ガイドライン)は、同盟を現代に適合したものとし、また、平時から緊急事態までのあらゆる段階における抑止力及び対処力を強化することで、より力強い同盟とより大きな責任の共有のための戦略的な構想を明らかにするものである。

日米首脳による護衛艦「かが」訪問(19(令和元)年5月)

日米首脳による護衛艦「かが」訪問(19(令和元)年5月)

日米間の政策協議
  1. ➊日米安全保障協議委員会(「2+2」会合)
    19(平成31)年4月19日、ワシントンDCにおいて、日米「2+2」会合を開催し、宇宙、サイバー及び電磁波といった新たな領域における能力向上を含む領域横断(クロス・ドメイン)作戦のための協力を強化していくことなどで一致した。
  2. ➋日米防衛相会談
    18(平成30)年10月以降、累次の日米防衛相会談などにおいて、主として次のような点を確認した。
    • 宇宙・サイバー・電磁波といった新たな領域について、日米連携の深化をスピード感をもって進める必要性
    • 自由で開かれたインド太平洋を維持・強化するための米国の取組との連携強化
    • 北朝鮮による全ての大量破壊兵器及びあらゆる射程の弾道ミサイルの完全な、検証可能な、かつ不可逆的な廃棄に向け、引き続き、国連安保理決議の完全な履行を確保すること
    • 普天間飛行場の辺野古移設を含めた米軍再編計画の着実な進展のため、日米で緊密に協力していくこと

日米「2+2」共同記者会見(19(平成31)年4月)

日米「2+2」共同記者会見(19(平成31)年4月)

日米防衛相会談(19(令和元)年8月)

日米防衛相会談(19(令和元)年8月)

日米同盟の抑止力及び対処力の強化

平時から有事までのあらゆる段階や災害等の発生時において、わが国の平和と安全を確保するため、「宇宙及びサイバー空間に関する協力」、「総合ミサイル防空」、「共同訓練・演習」、「情報収集・警戒監視・偵察(ISR)活動」、「海洋安全保障」、「後方支援」、「わが国における大規模災害への対処における協力」など様々な分野で日米協力を進めている。

幅広い分野における協力の強化・拡大

自由で開かれた海洋秩序を維持・強化することを含め、望ましい安全保障環境を創出するため、インド太平洋地域における日米両国のプレゼンスを高めることも考慮しつつ、「能力構築支援」、「人道支援・災害救援」、「三か国及び多国間での訓練・演習」などについて日米共同の活動を実施するとともに、「防衛装備・技術協力」、「施設・区域の共同使用」などを推進する。

在日米軍の駐留の意義

  1. ➊日米同盟が、わが国の防衛や地域の平和と安定に寄与する抑止力として十分に機能するためには、在日米軍のプレゼンスの確保や、緊急事態に迅速かつ機動的に対応できる態勢の確保などが必要である。
  2. ➋このため、わが国は日米安保条約に基づいて米軍の駐留を認めており、在日米軍の駐留は、日米安保体制の中核的要素である。

沖縄在日米軍施設・区域(専用施設)の件数及び面積の推移

沖縄における在日米軍の駐留

  1. ➊わが国における在日米軍施設・区域(専用施設)のうち、面積にして、約70%が沖縄に集中し、沖縄本島の面積の約14%を占めており、引き続き負担の軽減について最大限努力する必要がある。
  2. ➋普天間飛行場の有する機能の分散について、緊急時に航空機を受け入れる基地機能を築城基地及び新田原基地へ移転するための施設整備を推進
  3. ➌普天間飛行場代替施設については、キャンプ・シュワブ南側の海域において埋立工事を開始
  4. ➍駐留軍用地の返還に関する主な進捗は、以下のとおり。
    • 15(平成27)年 3月:キャンプ瑞慶覧(西普天間住宅地区)(約51ヘクタール)の返還
    • 16(平成28)年12月:本土復帰後最大の返還となった北部訓練場の過半の土地(約4,000ヘクタール)の返還
    • 17(平成29)年 7月:普天間飛行場の一部土地(市道宜野湾11号線用地約4ヘクタール)の返還
    • 18(平成30)年 3月:牧港補給地区の一部土地(国道58号拡幅用地約3ヘクタール)の返還
    • 19(平成31)年 3月:牧港補給地区の一部土地(第5ゲート付近の区域約2ヘクタール)の返還
  5. ➎米軍オスプレイなどの沖縄県外への訓練移転の実施

沖縄県外への訓練移転として、饗庭野演習場(滋賀県)に着陸する米海兵隊オスプレイ(19(平成31)年2月)

沖縄県外への訓練移転として、饗庭野演習場(滋賀県)に着陸する米海兵隊オスプレイ(19(平成31)年2月)

沖縄を除く地域における在日米軍の駐留

  • 沖縄を除く地域においても、米軍の抑止力を維持しつつ、地元負担の軽減を図り、在日米軍の安定的な駐留を確保する施策を実施。在日米軍施設・区域の整理や在日米軍再編などを継続している。

在日米軍施設・区域がもたらす影響の緩和に関する施策

  • 在日米軍の運用に当たって、地域住民の方々の安全確保は大前提であり、事件・事故は、あってはならない。日米両国は安全の確保を最優先の課題として協力している。

安全保障協力

防衛省・自衛隊は、多角的・多層的な安全保障協力を推進し、わが国にとって望ましい安全保障環境を創出していく。

多角的・多層的な安全保障協力の戦略的な推進に向けて

「自由で開かれたインド太平洋」というビジョンの下での取組

インド太平洋地域は、世界人口の半数以上を養う世界の活力の中核であり、この地域を自由で開かれた「国際公共財」とすることにより、地域全体の平和と繁栄を確保していくことが重要である。防衛省・自衛隊は、「自由で開かれたインド太平洋」というビジョンを踏まえ、同地域における各国との防衛協力・交流などの取組を推進することとしている。

「自由で開かれたインド太平洋」に対する防衛省・自衛隊の取組(イメージ)

各国との防衛協力・交流の推進
  1. オーストラリア:18(平成30)年10月に日豪「2+2」及び防衛相会談、19(平成31)年1月及び6月に防衛相会談を開催。防衛協力の深化・拡大について確認
  2. インド・スリランカ:18(平成30)年10月、日印首脳会談の場において、日印閣僚級「2+2」の設置及び日印ACSA交渉開始で一致。18(平成30)年11月には陸軍種間で、 18(平成30)年12月には空軍種間で初となる日印共同訓練を実施。また、18(平成30)年8月には小野寺防衛大臣(当時)が防衛大臣として初めてスリランカを訪問
  3. ASEAN諸国:日ASEAN防衛協力の指針「ビエンチャン・ビジョン」に基づき、二国間協力に加え、多国間の枠組みでの協力を強化。19(平成31)年4月に日比防衛相会談、同年5月に日ベトナム及び日シンガポール防衛相会談を実施
  4. 韓国:自衛艦旗をめぐる韓国側の否定的な対応やレーダー照射事案が発生。こうした懸案については引き続き韓国側に適切な対応を求めていく。さらに、19(令和元)年8月、韓国政府から日韓GSOMIAを終了させる旨の通告あり。防衛大臣より、「極めて遺憾」「日韓・日米韓の間で適切な連携が行われるよう、韓国側の賢明な対応を強く求める」とのコメントを発表
  5. 欧州諸国:19(平成31)年1月に日仏「2+2」を開催。18(平成30)年10月、国内では初めてとなる日英陸軍種間の共同訓練を実施
  6. 中国:18(平成30)年10月、3年ぶりとなる日中防衛相会談を実施。19(平成31)年4月、海自艦艇が7年半ぶりに中国を訪問
  7. ロシア:18(平成30)年7月、小野寺防衛大臣(当時)が防衛大臣として初めてロシアを訪問し、日露「2+2」及び防衛相会談を開催。19(令和元)年5月には、東京で日露「2+2」及び防衛相会談を開催
  8. 太平洋島嶼国:18(平成30)年の太平洋・島サミット、同年に発表された防衛計画の大綱において、協力や交流を推進する旨を言及

日豪「2+2」の様子(18(平成30)年10月)

日豪「2+2」の様子(18(平成30)年10月)

日印首脳会談の場における日印海軍種間の協力深化にかかる「実施取決め」署名文書交換の様子(18(平成30)年10月)

日印首脳会談の場における日印海軍種間の協力深化にかかる「実施取決め」署名文書交換の様子(18(平成30)年10月)

日中防衛相会談の様子(18(平成30)年10月)

日中防衛相会談の様子(18(平成30)年10月)

多国間における安全保障協力の推進
  1. ➊拡大ASEAN国防相会議(ADMMプラス)や、ASEAN地域フォーラム(ARF)をはじめとした多国間枠組みの取組が進展しており、アジア太平洋地域の安全保障分野にかかる議論や協力・交流の重要な基盤となっている。
  2. ➋わが国としても、日ASEAN防衛当局次官級会合や東京ディフェンス・フォーラムを毎年開催するなど、地域における多国間の協力強化に寄与している。また、日ASEAN協力事業として、 18(平成30)年5月に乗艦協力プログラム、同年11月に国際法シンポジウム、19(平成31)年1月にHA/DR(人道支援・災害救援)に関する招へいプログラムを実施した。

日ASEAN防衛担当大臣会合の様子(18(平成30)年10月)

日ASEAN防衛担当大臣会合の様子(18(平成30)年10月)

インドにおいて開催された多国間フォーラム「ライシナ・ダイアローグ」の様子(19(平成31)年1月)

インドにおいて開催された多国間フォーラム「ライシナ・ダイアローグ」の様子(19(平成31)年1月)

能力構築支援への積極的かつ戦略的な取組
  1. ➊防衛省・自衛隊による能力構築支援は、12(平成24)年の開始以降、アジア太平洋地域を中心に、15か国・1機関に対し、人道支援・災害救援、PKO、海洋安全保障などの分野で行ってきている。
  2. ➋具体的な事業として、パプアニューギニア国防軍には軍楽隊新設から支援を実施し、18(平成30)年11月のAPECでは各国首脳などが集まる中、同軍楽隊は整斉と演奏を実施した。また、ベトナムにおけるPKO、航空救難、潜水医学などの分野におけるセミナー、ミャンマー空軍の気象部隊設立のための航空気象に関するセミナー及び実技教育、その他、モンゴル、東ティモール、スリランカ、タイ、ラオス、ジブチなどで事業を実施した。

パプアニューギニア軍楽隊がAPEC18において演奏するための準備を見守る陸自隊員(18(平成30)年11月)

パプアニューギニア軍楽隊がAPEC18において演奏するための準備を見守る陸自隊員(18(平成30)年11月)

海洋安全保障の確保

  1. ➊海洋国家であるわが国にとって、法の支配、航行の自由などの基本的ルールに基づく秩序を強化し、海上交通の安全を確保することは、平和と繁栄の基礎であり、極めて重要である。
  2. ➋自衛隊は、09(平成21)年以来、水上部隊、航空隊及び支援隊を派遣し、ソマリア沖・アデン湾において船舶を海賊行為から防護する活動を継続している。
  3. ➌共同訓練や寄港を通じインド太平洋地域沿岸国との連携を強化するともに、沿岸国などの海洋安全保障に関する能力構築支援の取組や拡大ASEAN国防相会議(ADMMプラス)などの地域の安全保障対話の枠組みにおいて海洋安全保障のための協力に取り組んでいる。

「インド太平洋方面派遣訓練」でのフィリピン海軍との共同訓練の様子

「インド太平洋方面派遣訓練」でのフィリピン海軍との共同訓練の様子

宇宙領域及びサイバー領域の利用にかかる協力

  1. ➊宇宙領域の利用にかかる協力として、米軍が主催する宇宙状況監視多国間机上演習(グローバル・センチネル)及び宇宙安全保障に関する多国間机上演習(シュリーバー演習)に参加した。
  2. ➋サイバー領域の利用にかかる協力として、米国、英国、オーストラリアなどと防衛当局間サイバー協議を実施している。また、NATOとの間では、国際会議やサイバー防衛演習へのオブザーバー参加のほか、19(平成31)年3月より防衛省からNATOサイバー防衛協力センターに職員を派遣している。

国際平和協力活動への取組

防衛省・自衛隊は、紛争・テロなどの根本原因の解決などのための開発協力を含む外交活動とも連携しつつ、国際平和協力活動への取組を積極的に実施している。

多国籍部隊・監視団(MFO)への派遣
  1. ➊19(平成31)年4月、シナイ半島国際平和協力業務の実施について閣議決定を行ったうえで、初めての国際連携平和安全活動としてMFOへの司令部要員2名の派遣を開始した。
  2. ➋司令部要員2名は、シナイ半島南部シャルム・エル・シェイクの南キャンプに所在するMFO司令部において、エジプト及びイスラエルの政府その他の関連機関とMFOとの連絡調整に従事する連絡調整部の副部長及び部員として勤務している。
  3. ➌この活動を通じ、中東の平和と安定へのわが国の一層積極的な関与の姿勢を示すことになるほか、米国などの他の要員派遣国との連携の促進にもつながり、人材育成の新たな機会となることも期待される。

MFO司令部要員の現地での活動状況

MFO司令部要員の現地での活動状況

国連南スーダン共和国ミッション(UNMISS)
  1. ➊南スーダンの平和と安定は、南スーダン一国のみならずアフリカ全体の平和と安定につながるものであり、国際社会で対応すべき重要な課題である。
  2. ➋UNMISS司令部に兵站、情報、施設、航空運用の各幕僚計4名を派遣しており、派遣施設隊の撤収後も引き続き、UNMISSの活動に貢献していく。

治安部門と電話での調整を実施するUNMISS司令部要員(情報幕僚)

治安部門と電話での調整を実施するUNMISS司令部要員(情報幕僚)

国連PKO支援部隊早期展開プロジェクトへの支援
  1. ➊15(平成27)年9月の試行訓練以来、ケニアにある国際平和支援訓練センターに陸上自衛官などを教官として派遣し、これまで、計7回の施設機材操作訓練をアフリカの8か国211名の要員に対し実施した。
  2. ➋PKO要員の30%以上がアジアから派遣されていることを踏まえ、本プロジェクトを初めてアジア及び同周辺地域で実施することとし、18(平成30)年はベトナムにおいてアジア及び同周辺地域9か国16名の要員に対して試行訓練を実施した。

ベトナムにおける国連PKO支援部隊早期展開プロジェクトにおいて、重機操作訓練を実施する陸自隊員(18(平成30)年11月)

ベトナムにおける国連PKO支援部隊早期展開プロジェクトにおいて、重機操作訓練を実施する陸自隊員(18(平成30)年11月)

国連PKO工兵部隊マニュアルの改訂
  1. ➊13(平成25)年以降、国連PKO工兵部隊マニュアル策定の分科会の議長国を務め、マニュアル完成に寄与した。
  2. ➋国連より、同マニュアルを改訂するにあたり、再度議長国の依頼を受け、議長国として専門家会合を18(平成30)年12月に東京で開催した。引き続きマニュアルの改訂作業や同マニュアルの普及に向け支援していく。

国連PKO工兵部隊マニュアル改訂のため、東京で実施した専門家会合の様子(18(平成30)年12月)

国連PKO工兵部隊マニュアル改訂のため、
東京で実施した専門家会合の様子(18(平成30)年12月)