国家防衛戦略では、自衛隊が能力を十分に発揮し、厳しさ、複雑さ、スピード感を増す戦略環境に対応するためには、宇宙・サイバー・電磁波の領域を含め、戦略的・機動的な防衛政策の企画立案が必要としている。こうした機能を抜本的に強化するため、関係省庁や民間の研究機関、防衛産業を中心とした企業との連携を強化するとともに、防衛研究所を中心とする防衛省・自衛隊の研究体制を見直し・強化し、知的基盤としての機能を強化することとしている。
国家防衛戦略などに基づき、戦略的・機動的な防衛政策の企画立案機能を抜本的に強化するにあたっての政策的な助言を得るため、各界を代表する有識者や専門家からなる「防衛力の抜本的強化に関する有識者会議」において、安全保障分野における産学官の研究開発エコシステムの構築やわが国の防衛産業と装備品などについて率直な議論が行われた。
そのほか、国家防衛戦略などでは、自衛隊の将来の戦い方とそのために必要な先端技術の活用・育成・装備化について、関係省庁や民間の研究機関、防衛産業を中核とした企業との連携を強化しつつ、戦略的な観点から総合的に検討・推進する態勢を強化することとしている。
防衛研究所をはじめとする防衛省の研究・教育機関では、知的基盤としての機能強化のため、平素から政策立案に資する成果を生むべく、研究の質的向上に取り組んでいる。また、こうした研究成果を含め、わが国の安全保障政策に関する知識や情報について、国民の理解をより一層増進する観点から、
など、知的基盤の強化に関する各種取組を進めている。
防衛研究所は、国立の安全保障に関する学術研究・教育機関という特色を活かし、主に安全保障、戦史に関する政策指向の調査研究や政策立案部門との連携促進を目的とする政策シミュレーションを行っている。また、諸外国の国防大学に相当する教育機関として、防衛省・自衛隊の幹部、他省庁の職員などへの教育7を行うほか、公文書管理法8に基づく歴史資料等保有施設として、多数の戦史史料の管理、公開を行っており、わが国最大の戦史研究センターとしての役割も担っている。
防衛力整備計画において、戦略的・機動的な防衛政策の企画立案の機能強化を支援するための研究体制の見直しや、知的基盤としての機能強化が示されたことを踏まえ、重要性を増すサイバー安全保障分野での研究ニーズへの対応として、2023年度に防衛研究所にサイバー安全保障研究室を設置している。
さらに、防衛研究所は、防衛交流・安全保障対話の一翼を担う機関として国際交流も重視しており、各国との信頼関係の増進による安全保障への貢献と調査研究、教育の質的向上を主目的に、諸外国の国防大学・安全保障研究機関などとの研究交流などを行っている。具体的には、研究者の相互派遣による講義、研究会の実施や国際会議への参加、諸外国の政府・軍高官の訪問受入れや海外の研究者・専門家の招へいなどがあり、こうした交流を通じ、防衛研究所の調査研究の質的向上と知的ネットワークの強化を図っている。
加えて、主な研究成果をホームページ上で公開しており、これまで毎年刊行してきた『中国安全保障レポート』や『NIDSパースペクティブ』、『安全保障戦略研究』を含む、各種刊行物を発行するとともに、主催イベントの録画映像や刊行物のポイント解説動画を配信するなど、積極的に情報発信を行っている。このほか、防衛研究所の研究者は研究成果の一端を著書や論文、論考として多数発表しており、第34回「アジア・太平洋賞」大賞受賞、第43回「石橋湛山賞」受賞の実績がある。
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資料:防衛研究所が発信する出版物
URL:https://www.nids.mod.go.jp/publication/
防衛大学校は、自衛隊の幹部となるべき者の教育訓練や自衛官などに対するより高度な教育訓練に加え、これらに必要な研究を行う役割を担っている。このような役割のもと、一般学術研究や防衛政策に関連する基礎研究を多数実施し、高度な研究水準の維持・向上を図っている。防衛大学校の研究成果については、グローバルセキュリティセンター9が扱うテーマを中心に、防衛大学校が主催するセミナーやコロキアムでの発表、『セミナー叢書』や『研究叢書』といったオンライン媒体の発行などを通じ、広く部外に発信している。
自衛隊の幹部学校などにおいては、定期的に安全保障に関する各種のセミナーやシンポジウムを開催し、産官学からの研究員、海外研究者、外国軍人などの参加を得て、様々な視点からの討議や意見交換を通じ、将来のわが国の安全保障などに関する調査研究の資としている。
また、客員研究員の受入れや、国内外の教育機関、研究機関などとの交流などにより、調査研究に必要な知見や情報を得て、教育・研究の質の維持向上に努めている。主な研究成果や取組については、ホームページで公開しているほか、各種刊行物を発行するなど、積極的に情報発信10を行っている。
7 防衛研究所では、戦略性をより一層向上させたカリキュラムを追求・展開すべく、2024年度に開始する課程から、これまでの一般課程を安全保障戦略課程に、特別課程を安全保障戦略特別課程にそれぞれ移行した。
8 公文書等の管理に関する法律。
9 グローバルセキュリティセンターは、先端学術推進機構に設置された部署であり、グローバルセキュリティにかかる研究または共同研究(防衛装備庁などと共同して行う研究をいう。)の企画、立案、実施やグローバルセキュリティにかかる研究成果の部外発信に関する事務を担っている。
10 陸上自衛隊教育訓練研究本部は『陸上防衛』、海上自衛隊幹部学校は『海幹校戦略研究』、航空自衛隊幹部学校は『エア・アンド・スペースパワー研究』などを公開している。