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第IV部 共通基盤の強化

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第2節 各種訓練環境の整備や安全管理

1 訓練環境

一層厳しさが増す安全保障環境にあっては、自衛隊が持つ能力を最大限発揮できるよう部隊などの体制整備を図るとともに、訓練の質を向上させることが重要である。このため、自衛隊の訓練は、可能な限り実戦に近い環境で行うよう努めているが、自衛隊の即応性を維持・向上させるためには、訓練環境をより一層充実させていく必要がある。こうした認識のもと、防衛省・自衛隊では、効率的・効果的な訓練・演習を行うため、国内外での訓練実施基盤の拡充にかかる取組を推進している。

その一環として、防衛省・自衛隊は、北海道をはじめとする国内の演習場の整備・活用の拡大を図るとともに、地元との関係に留意しつつ、国内に所在する米軍施設・区域の共同使用を促進することとしている。また、自衛隊施設や米軍施設・区域以外の場所の利用や米国・オーストラリアなど国外の良好な訓練環境の活用を促進するとともに、シミュレーターなどを一層積極的に導入することとしている。

このほか、馬毛島(まげしま)(鹿児島県)に自衛隊が訓練・活動を行うことができる施設などの整備を進めている。

さらに、あらゆる事態において自衛隊の能力を最大限発揮するため、平素から民間空港を使用した訓練を行うことが必要との考えのもと、自衛隊統合演習において、民間空港における空自戦闘機の訓練を実施している。

参照1節1項1(1)(自衛隊統合演習「JX」)

1 陸上自衛隊

演習場や射場は、地域的にも偏在しているうえ、広さも十分でないこともあり、大部隊の演習や戦車、長射程火砲の射撃訓練などを十分には行えない状況にある。これらの制約は、装備の近代化に伴い大きくなる傾向にある。また、演習場や射場の周辺地域の都市化に伴う制約もある。

このため、国内では実施できない地対空誘導弾部隊や地対艦誘導弾部隊の実射訓練などを米国などで実施するほか、海外における多国間共同訓練など、国内にはない良好な演習基盤を活用した実動訓練への参加を通じて、戦術技量の向上を図っている。

また、師団レベルや方面隊レベルの実動演習では、限られた国内の演習場などを最大限に活用しているほか、地元の理解と協力を獲得しながら自衛隊施設・区域以外を活用した、より実戦的な訓練を実施している。

広大な米国射撃訓練場を活用した最大射程の射撃訓練「ライジング・サンダー」(2023年11月)

広大な米国射撃訓練場を活用した最大射程の射撃訓練
「ライジング・サンダー」(2023年11月)

2 海上自衛隊

わが国周辺の訓練海域は、気象、海象、船舶交通や漁業などの関連から使用できる時期や場所に制約がある。

このため、例えば、比較的浅い海域で行うことが必要な掃海訓練や潜水艦救難訓練などについては、陸奥湾や相模湾などで行うほか、2024年3月、新たに九州西方の角力灘(すもうなだ)において掃海訓練を実施した。また、中東地域で実施される米国主催国際海上訓練(IMX-CE:International Maritime Exercise-Cutlass Express)への掃海部隊の派遣など、海外で実施される多国間共同訓練への参加を通じて、戦術技量の向上を図っている。

このほか、海外任務が増加するなか、短期間により多くの部隊が訓練成果をあげられるよう、計画的・効率的な訓練に努めており、海外で実施される多国間共同訓練への参加や同訓練海域への進出、帰投時における二国間・多国間共同訓練などを通じ、効率的・効果的な戦術技量の向上や同盟国・同志国などとの連携、対処力の強化を図っている。

3 航空自衛隊

現在、わが国周辺の訓練空域の多くは、広さが十分でないため、一部の訓練では、航空機の性能や特性を十分に発揮できないこともある。また、基地によっては訓練空域との往復に長時間を要する。さらに、飛行場の運用にあたっては、航空機の騒音に関連して早朝や夜間の飛行訓練について十分配慮した訓練を行うことが必要である。

このため、例えば、硫黄島の訓練空域では、逐次、部隊から航空機を派遣し、本土では十分に実施できない訓練などを中心に集中的な訓練を行うなど、計画的・効率的な訓練に努めている。また、在日米軍の射爆撃場の共同使用などにより、実弾の射爆撃訓練を行っている。

このほか、高射部隊による米国でのペトリオット実射訓練など、国外の訓練環境の活用にも努めている。

参照資料58(多国間共同訓練への参加など(2020年度以降))資料72(演習場一覧)