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第II部 わが国の安全保障・防衛政策

10 いわば防衛力そのものとしての防衛生産・技術基盤

1 防衛生産基盤の強化

わが国の防衛産業は装備品のライフサイクルの各段階を担っており、装備品と防衛産業は一体不可分であり、防衛生産・技術基盤はいわば防衛力そのものと位置づけられるものである。一方、企業にとって、防衛事業は高度な要求性能や保全措置への対応など多大な経営資源の投入を必要とする反面、収益性が低く、現状では販路が自衛隊に限られるなど、産業として魅力が乏しい。これに加え、防衛事業からの撤退にみられる国内の製造体制の弱体化、製造設備の老朽化、サプライチェーン上のリスク、サイバー攻撃の脅威といった課題が顕在化している。

これらの課題に対応するため、企業による適正な利益の確保などによる防衛事業の魅力化、様々なリスクへの対応や基盤維持・強化のため、製造等設備の高度化、サイバーセキュリティ強化、サプライチェーン強化、事業承継といった企業の取組に対する適切な財政措置や金融支援などを行う。

C-2輸送機の製造の様子【川崎重工業(株)から提供】

C-2輸送機の製造の様子【川崎重工業(株)から提供】

2 防衛技術基盤の強化

将来の戦い方に必要な研究開発事業を特定し、装備品の取得までの全体像を整理することにより、研究開発プロセスにおける各種取組による早期装備化を実現する。将来の戦い方を実現するための装備品を統合運用の観点から体系的に整理した統合装備体系も踏まえ、将来の戦い方に直結するスタンド・オフ防衛能力、極超音速滑空兵器(HGV)等対処能力、ドローン・スウォーム攻撃等対処能力、無人アセット、次期戦闘機に関する取組などの装備・技術分野に集中的に投資を行う。また、従来装備品の能力向上なども含めた研究開発プロセスの効率化や、要求性能に基づいて設計や試験を繰り返しながら各段階を一歩ずつ進める従来型(ウォーターフォール型)の手法ではなく、試作品を速やかに部隊に配備し、運用のフィードバックを得ながら改善を図り、装備品としての完成度を高めていく新たな手法(アジャイル型)の導入により、研究開発に要する期間を短縮し、早期装備化につなげていく。

将来にわたって技術的優越を確保し、他国に先駆け、先進的な能力を実現するため、民生先端技術を幅広く取り込む研究開発や海外技術を活用するための国際共同研究開発を含む技術協力を追求及び実施する。また、防衛用途に直結しうる技術を対象に重点的に投資し、早期の技術獲得を目指す。

3 防衛装備移転の推進

政府が主導し、官民の一層の連携のもとに装備品の適切な海外移転を推進するとともに、基金を創設し、必要に応じた企業支援を行っていく。

4 各種措置と制度整備の推進

以上のような政策を実施するため、必要な予算措置や法整備に加え、政府系金融機関などの活用による政策性の高い事業への資金供給を行うとともに、その執行状況を不断に検証し、必要に応じて制度を見直していく。