日米安全保障協議委員会(日米「2+2」)(概要)

令和6年1月12日
外務省・防衛省

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1月12日4時00分(米国時間:11日14時00分)から、米国ワシントンD.C.において、約2時間30分、日米安全保障協議委員会(日米「2+2」)が開催され、日本側からは、林芳正外務大臣及び浜田靖一防衛大臣が、米側からは、アントニー・ブリンケン国務長官及びロイド・オースティン国防長官がそれぞれ出席したところ、概要以下のとおり(また、今回の会合後、共同発表が発出された。)。

1 総論

  1. 冒頭、米側から、両大臣の訪米を心から歓迎する、今般、日米「2+2」を日米両国の戦略文書発表直後という時宜を得た形で約2年ぶりに対面で開催することができたのは大変喜ばしい、安全保障環境が一層厳しさを増す中で、日米同盟の重要性はかつてないほど高まっており、自由で開かれたインド太平洋を実現するため、米国のインド太平洋地域への揺るぎないコミットメントを示していきたい旨発言があった。日本側から、双方の戦略文書を踏まえ、安全保障環境についての両国の認識をすり合わせつつ、日米同盟の更なる深化について議論する絶好の機会である、日米同盟を絶えず強化することに完全にコミットしており、両長官と緊密に連携していくことを心から楽しみにしている、戦略は策定して終わるものではなく、今後、日米が連携してそれぞれの戦略を速やかに実行していくことが重要である旨発言した。
  2. 日米双方は、それぞれの国家安全保障戦略及び国家防衛戦略の公表を歓迎し、両者のビジョン、優先事項及び目標がかつてないほど整合していることを確認した。
  3. 日本側から、相当増額した防衛予算の下で、新たな能力の獲得や継戦能力の増強等を早期に行い、防衛力を強化していく旨発言した。これに対して米側から、同盟の抑止力・対処力を強化する重要な取組であり、強く支持する旨発言があった。
  4. 米側は、核を含むあらゆる種類の米国の能力を用いた日米安全保障条約の下での日本の防衛に対する揺るぎないコミットメントを再確認するとともに、日米安全保障条約第5条が尖閣諸島に適用されることを改めて確認した。

2 地域情勢

日本側から、日本は平和で安定した国際環境を能動的に創出すべく、外交・安全保障上の役割を強化し、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を強化していく旨発言した上で、日米双方は、下記のとおり情勢認識のすりあわせを行った。

  1. 日米双方は、自らの利益のために国際秩序を作り変えることを目指す中国の外交政策に基づく行動は同盟及び国際社会全体にとっての深刻な懸念であり、インド太平洋地域及び国際社会全体における最大の戦略的挑戦であるとの見解で一致した。
  2. また、米側は、尖閣諸島に対する日本の長きにわたる施政を損なおうとする行為を通じたものを含む、中国による東シナ海における力による一方的な現状変更の試みが強まっていることに強い反対の意を改めて表明した。
  3. 日米双方は、台湾に関する両国の基本的な立場に変更はないことを認識するとともに、国際社会の安全と繁栄に不可欠な要素である台湾海峡の平和と安定の維持の重要性を改めて表明し、両岸問題の平和的解決を促した。
  4. 日米双方は、北朝鮮による昨年来の、前例のない数の不法かつ無謀な弾道ミサイルの発射を強く非難した。日本側から、戦術核の大量生産の方針等を明らかにしている北朝鮮が核実験に踏み切れば、過去6回の核実験とは一線を画すものである旨発言した。また、拉致問題について、米側から引き続き全面的な支援を得た。
  5. 日米双方は、ロシアによるウクライナに対する残虐でいわれのない不当な戦争を強く非難した。日本側から、欧州とインド太平洋地域の安全保障は相互に不可分と言えるものであり、本年のG7議長国として、ロシアへの対応及びウクライナ支援に向けた議論をリードしていく旨発言した。

3 同盟の現代化

日本側から、日米双方の戦略は、抑止力を強化するため、自らの防衛力を抜本的に強化し、そのための投資も増加させること、そして同盟国や同志国等との連携強化を目指すといった点において、軌を一にしている旨発言した上で、そのような戦略の下、同盟としての抑止力・対処力を最大化する方策について議論を行った。

  1. 日本側から、抜本的に強化された日本の防衛力を前提とした、日米間でのより効果的な役割・任務の分担を実現していく必要がある旨発言した。日米双方は、起こり得るあらゆる事態に適時かつ統合された形で対処するため、同盟調整メカニズムを通じた二国間調整を更に強化する必要性を改めて強調した。また、米側からは、日本による常設の統合司令部設置の決定を歓迎する旨発言があった。
  2. 日米双方は、米国との緊密な連携の下での、日本の反撃能力の効果的な運用に向けて、日米間での協力を深化させることを決定した。
  3. 日米双方は、情報収集、警戒監視及び偵察(ISR)活動並びに柔軟に選択される抑止措置(FDO)を含む二国間協力を深化させることを決定した。
  4. 日本側から、装備・技術面での協力は、同盟の技術的優位性の確保、日本の防衛力強化の速やかな実現の双方において重要であり、更に加速する必要がある旨発言し、米側から、技術的優位性の確保に向け、日米で共に努力していきたい旨発言があった。
  5. 日本側から、宇宙・サイバー領域における協力の深化は同盟の近代化における核となるものである旨発言した。日米双方は、宇宙関連能力に係る協力の深化にコミットした。その上で、日米双方は、宇宙領域に関し、宇宙への、宇宙からの又は宇宙における攻撃が、同盟の安全に対する明確な挑戦であると考え、一定の場合には、当該攻撃が、日米安全保障条約第5条の発動につながることがあり得ることを確認した。日本側から、本件は同盟全体の抑止力強化の観点で重要な成果である旨発言した。
  6. 日本側から、多国間協力については、同盟国・同志国のネットワークの重層的な構築・拡大を図り、抑止力を強化していく旨発言した。

4 拡大抑止

日米双方は、米国の「核態勢の見直し」の公表も踏まえ、拡大抑止を議題の1つとし、時間を割いて突っ込んだ議論を行った。

  1. 日米双方は、米国の拡大抑止が信頼でき、強靱なものであり続けることを確保することの決定的な重要性を改めて確認した。
  2. さらに、日米双方は、日米拡大抑止協議及び様々なハイレベル協議を通じ、実質的な議論を深めていくことで一致した。

5 米軍の態勢

日米双方は、地域における安全保障上の増大する課題に対処するために、日本の南西諸島の防衛のためのものを含め、向上された運用構想及び強化された能力に基づいて同盟の戦力態勢を最適化する必要性を確認するとともに、普天間飛行場の固定化を避けるための唯一の解決策である辺野古への移設を含め、在日米軍再編を着実に推進することの重要性について一致した。

  1. 日米双方は、現下の厳しい安全保障環境を踏まえ、在日米軍の態勢見直しに関する再調整で一致した。日米双方は、厳しい競争環境に直面し、日本における米軍の前方態勢が、同盟の抑止力及び対処力を強化するため、強化された情報収集・警戒監視・偵察能力、対艦能力及び輸送力を備えた、より多面的な能力を有し、より強靱性があり、そして、より機動的な戦力を配置することで向上されるべきであることを確認した。そのような政策に即して、2012年4月27日の日米安全保障協議委員会で調整された再編の実施のための日米ロードマップは再調整され、第3海兵師団司令部及び第12海兵連隊は沖縄に残留し、第12海兵連隊は2025年までに第12海兵沿岸連隊に改編されることを確認した。この取組は、地元の負担に最大限配慮した上で、2012年の再編計画の基本的な原則を維持しつつ進められる。
  2. 日本側から、厳しい安全保障環境に対応するための、在日米軍の献身的な活動への謝意を述べた。また、日本側から普天間飛行場代替施設の建設事業や馬毛島における施設整備が着実に進捗していることを紹介した上で、日米双方は、在日米軍の施設及び区域の再編を支える現在行われている事業の着実な実施並びに地元との関係の重要性を再確認し、普天間飛行場の継続的な使用を回避するための唯一の解決策である、キャンプ・シュワブ辺野古崎地区及びこれに隣接する水域における普天間飛行場代替施設の建設継続へのコミットメントを強調した。また、馬毛島における自衛隊施設の整備の進展及び将来の見通しを歓迎した。
  3. 日米双方は、沖縄における移設先施設の建設及び土地返還並びに2024年に開始される米海兵隊要員の沖縄からグアムへの移転を含む、米軍再編に係る二国間の取組を加速化させる重要性を確認した。日本側から、地元への影響に最大限配慮した安全な運用、早期の通報を含む事件・事故での適切な対応、環境問題などについても米側に改めて要請し、日米双方は緊密に連携していくことを確認した。

(了)