日米安全保障協議委員会共同記者会見(概要)

日時
令和5年1月11日(水)17:11~18:04(現地時間)
場所
米国国務省
備考
日米安全保障協議委員会「2+2」後

1 発表事項

ブリンケン国務長官

 バイデン大統領が岸田総理を金曜日にホワイトハウスへお招きするのに先立ち、オースティン長官と私は、林大臣、浜田大臣と大変生産的で幅広い議論を行った。
 日米同盟の重要性は強調してもし過ぎることはない。日米同盟は70年以上にわたって、インド太平洋地域の平和と安全の礎となっており、私たちや地域全体の人々の安全、自由、繁栄を確保してきた。
 同盟の永続的な強さの源泉の一つは、変化する課題や目の前の機会に対応するために同盟を適応させる我々の能力である。日本の新たな国家安全保障戦略、国家防衛戦略及び防衛力整備計画は変革の規模と範囲を反映したものである。これらの新たな戦略文書は、日本が能力強化に投資し、新たな役割を担い、米国や共通のパートナーとの防衛協力をより緊密化するという日本のコミットメントを明確にしている。2027年までに防衛費を倍増するという日本の決意を賞賛する。
 日本の戦略文書は、主要課題の特定やどのように効果的に対処すべきかの認識において、米国の国家安全保障戦略と極めて整合的なものである。
 我々は、民主主義、人権といった共通の価値観や国際的な法の支配を守り、気候変動や致死性ウイルスのような一国だけでは解決できないグローバルな課題に取り組む上で、世界をリードし続けることにコミットする。
 我々は、中国が、我々と同盟国・パートナーにとって共通する、最大の戦略的挑戦であることに同意する。
 我々は、プーチン大統領による戦争に立ち向かうウクライナと共にある。この戦争は、すべての国が自らの道を切り開き、その主権、独立、領土保全が尊重されるべきという、ルールに基づく国際秩序の中核をなす原則を脅かすものである。
 これら課題に直面する中、本日我々は、同盟に基づく指揮・統制、情報収集、警戒監視及び偵察、施設の共同使用、二国間演習の増加など、連携を深める方法について議論した。
 我々は、これまで以上に、地域や多国間の枠組を通じて他の同盟国やパートナーとの協力を深めることにより、日米同盟を強固なものにしている。
 10月に日本上空を飛翔した長距離弾道ミサイルの発射を含め、北朝鮮による不法かつ無謀なミサイル発射に直面する中、侵略を抑止し、必要となれば防衛するために、韓国との三カ国協力を深めている。これは、11月の日米韓首脳会談で強調された約束である。
 幅広い脅威に対する同盟の能力と信頼を強化するため、「2+2」という形式で初めて拡大抑止に関する公式な対話を行った。
 2022年6月、岸田総理は日本の指導者として初めてNATO首脳会議に出席した。日本は、NATOのアジア太平洋地域パートナーグループの中で主導的な役割を果たしており、大西洋と太平洋の同盟関係の相乗効果が高まっていることを示している。
 我々は、G7パートナーとともに、ロシアのウクライナ侵略に対し、協調して制裁を課し、ウクライナの不安定なエネルギー網の修復、回復、防衛を支援するために取り組んでいる。 日本が今年のG7議長国として、広島サミットを頂点にこれら様々な優先事項に関する野心的なアジェンダを推進する上で、リーダーシップを発揮することを期待している。
日本はまた、プーチン大統領によるエネルギーの武器化に対する、欧州によるLNG供給の多様化への支援に向け前進してきている。
 また、その中心性がインド太平洋地域にとって不可欠であるASEANやクアッドといった地域的組織を通じて、違法漁業や人身売買、気候変動による災害など、領海内の課題を察知し対処するパートナーの能力を高め、平和と安全の推進に努める。これには、いわゆる海洋状況把握を拡充するためのインド及び豪州との取組によるものが含まれる。
 国連では、国連憲章の中核をなす権利を守るため、加盟国をまとめている。日本が安保理の非常任理事国に就任してから2週間足らずだが、すでに平和構築、アフガニスタン、そして明日林外務大臣が議長を務める法の支配に関する閣僚級公開討論など、重要な優先事項において日本がリーダーシップを発揮している。
 また、我々の国家安全保障戦略は、経済やエネルギーの安全保障と密接に関係しているため、これらの分野でも協力を強化している。5月には、世界のGDPの40%を占める他の12カ国とともに、インド太平洋経済枠組みを立ち上げた。この枠組みは、我々の経済がより速く、より公正に成長し、すべての国民がその潜在能力を十分に発揮できるようにするためのロードマップを定めるものである。
 先月、我々は第1回日米エネルギー安全保障対話を開始し、明日は東京で第5回インド太平洋ビジネスフォーラムを両政府で共催予定である。
 我々は、地球を越えて、常に協力の地平を広げている。今週、林外務大臣と私(ブリンケン長官)は、宇宙における日米の協力に関する新たな協定に署名予定である。この協定は10年かけて作られたもので、共同研究から、女性や有色人種を初めて月面に着陸させるための協力まであらゆることが網羅されている。
 我々とその仲間の人々は、共にいることで、常に強く、より安全である。我々は、本日、既に信じられないほど強い絆を、より一層強固にするための新たな一歩を踏み出したのである。

林外務大臣

 先ほど、ブリンケン長官、オースティン長官及び浜田大臣と日米「2+2」を対面で開催し、極めて有意義な意見交換を行うことができた。
 前回の日米「2+2」から約1年が経過したが、この間にロシアによるウクライナ侵略といった国際秩序の根幹を揺るがす出来事が生じ、国際社会は歴史の岐路に立たされることになった。安全保障環境が一層厳しさを増す中、今回の日米「2+2」は、日米両国の戦略文書発表後のタイミングでの開催となった。
 本日の「2+2」では、大きく以下の3点の成果があった。
 第一に、両国の戦略文書を踏まえながら、地域の戦略環境に関する認識を丁寧にすり合わせるための突っ込んだ議論を行うことができた。
 具体的には、まず、中国はこれまでにない最大の戦略的挑戦であり、同国の自らの利益のために国際秩序を作り変えようとする外交政策は、日米同盟及び国際社会全体にとっての深刻な懸念であるとの認識を共有した。
 その上で、尖閣諸島での日本の長きにわたる施政を損なおうとする行為を含め、東シナ海における中国の力による一方的な現状変更の試みに日米で引き続き結束して反対することを確認した。
 南シナ海における中国の不法な主張や威嚇的で挑発的な活動への強い反対についても確認した。また、両国の台湾に関する基本的立場に変更はないこと、さらに、国際社会の安全と繁栄に不可欠な要素である台湾海峡の平和と安定の維持の重要性を確認した。同時に、中国との間で安全保障面を含む意思疎通を強化していく方針に変更はないことも確認した。
 また、ロシアについては、ウクライナ侵略が国際秩序の根幹を揺るがすものである点を改めて確認しつつ、ロシアによる無謀な核のレトリックや民生インフラへの攻撃を非難するとともに、ウクライナに対する強力な支援を継続していくことで一致した。加えて、中露の軍事面での協力強化についての懸念を共有した。
 さらに、北朝鮮については、過去1年間の前例のない数の弾道ミサイル発射を強く非難するとともに、安保理決議に基づく北朝鮮の完全な非核化への揺るぎないコミットメントを再確認し、拉致問題の即時解決を含め、北朝鮮への対応において引き続き緊密に連携することで米国と完全な意見の一致を見た。また、日米韓協力の深化の必要性についても一致した。
 第二に、一層厳しさを増す安全保障環境における新たな戦略を踏まえた日米同盟の抑止力・対処力強化に向けた今後の取組を確認した。
 米国による日本を含むインド太平洋地域における戦力態勢を最適化するとの決意を歓迎し、今般発表された在日米軍再編計画の再調整を含め、日本における米国の戦力態勢を一層最適化するための方策について緊密な協議を継続することを決定した。
 また、拡大抑止をアジェンダの1つとし、閣僚レベルで時間を割いて突っ込んだ議論を行った。その上で、米国の核を含むあらゆる種類の能力に裏打ちされた、日本防衛に対する米国の力強いコミットメントを再確認した。
 さらに、日本の新たな国家安保政策が同盟の抑止力を抜本的に強化するものとして、米国から力強い支持の表明があった。
 加えて、宇宙・サイバー分野での協力深化、技術協力の推進、情報保全の一層の強化の重要性につき一致した。また、宇宙における攻撃等への日米安全保障条約第5条の適用可能性を宣言することで一致できたことは、同盟全体の抑止力強化の観点で重要な成果であった。
 第三に、沖縄を始めとする地元の負担軽減を図ることの重要性について改めて確認した。普天間飛行場の継続的な使用を避けるためには、辺野古への移設が唯一の解決策であることを改めて確認した。
 また、私からは、地元への影響に最大限配慮した安全な運用、早期の通報を含む事件事故での適切な対応、環境問題などについても米側に改めて要請し、緊密に連携していくことを確認した。
 今回の日米「2+2」の結果として発出された共同発表は、戦略的競争の新たな時代において勝利するための態勢をとる現代化された同盟のビジョンを提示するものである。スピード感をもってこれを実行に移し、浜田大臣、ブリンケン長官、オースティン長官と共に、日米同盟を絶えず強化していく。

オースティン国防長官

 私は、日本が2022年の国家安全保障戦略、国家防衛戦略及び防衛力整備計画で行った大胆な決断を支持することを強調したい。バイデン大統領と岸田総理のビジョンの間には、明確な戦略的整合性がある。それは、ルールに基づく国際秩序を維持し、世界中で強靱なパートナーシップを強化するための共通のコミットメントである。そして、日米同盟は、これらの努力の中心にある。日米それぞれの防衛戦略は、日米同盟の現代化のための我々の継続的な努力に強固な基盤を提供するものである。さらに、日本が防衛費を大幅に増やし、防衛制度やインフラ、能力への投資を約束したことは、日米同盟の取組を加速させるだろう。日本が自国の防衛を強化し、地域の平和と安定にさらに貢献する、このような重要な時期にお会いできたことを感謝。
 本日、我々は、より多面的で機動的かつ強靱な能力を前方に配備することにより、日本における米軍の態勢を最適化するという歴史的な同盟の決定を歓迎した。これにより、地域における抑止力を強化し、日本とその国民をより効果的に防衛することが可能となる。安全保障環境が一層厳しくなる中、我々は第12海兵連隊が日本に残留し、2025年までに第12海兵沿岸連隊に改編されることを決定した。改編された部隊に、現在及び将来の脅威の環境に対応した高度な情報収集・警戒監視・偵察能力、対艦・輸送能力を備えていく。これらの態勢の更新は、2012年の再編計画の基本的な原則に沿っており、地域の平和と安定を維持する同盟の能力を強化するものである。
 我々はまた、日本が米国や他の志を同じくするパートナーとともに地域の安全保障により積極的に貢献できるよう、同盟の役割と任務を更新することについて議論した。そして、本日の会合で、我々は、日本が反撃能力を獲得するという決定を強く支持し、この能力を運用するための緊密な連携が日米同盟を強化することを確認した。また、東シナ海、南シナ海、台湾周辺の平和と安定に対する我々の共通の関心、北朝鮮の非核化に対する我々のコミットメント、韓国、豪州、その他のパートナーとの多国間協力を強化する努力、宇宙やサイバーなどすべての領域における我々の協力の拡大など、多くの重要な問題について議論した。
 以前から申し上げているように、中国は国防省にとって我が方の対応を絶えず迫ってくる挑戦(pacing challenge)である。日米両国は、不安定化をもたらす中国の行動に対する懸念で一致している。私は、核を含むあらゆる種類の能力で日本を防衛するという米国の固いコミットメントを再確認し、日米安全保障条約第5条が尖閣諸島に適用されることを強調したい。そして明日、浜田大臣と私は、日米の防衛企業が先端技術で緊密に協力し、それぞれの産業基盤の連携を強化する機会を増やすための新たな取決めに署名する予定である。また、本日の緊密な協議により、今週ホワイトハウスで行われるバイデン大統領と岸田総理の会談に向け、共通の課題に取り組む日米同盟の取組が前進した。  最後に、日米同盟は依然として我々のインド太平洋戦略の礎であり、自由で開かれた地域秩序を維持するために不可欠であることを改めて表明し、結びとしたい。日米同盟は、数十年にわたる日米関係を支えてきたチームワーク、信頼、そして共通の価値観を基礎として、これまで以上に強固なものとなっている。我々が協働し続ければ、乗り越えられない試練はない。

浜田防衛大臣

 我々を取り巻く安全保障環境の厳しさは、既に3人の閣僚が述べたとおり。この厳しい競争の時代において、ルールに基づく国際秩序と、自由で開かれたインド太平洋を維持していくため、日米同盟が果たさねばならない役割はこれまでになく大きなものになっている。
 先般策定された両国の国家安全保障及び防衛戦略は、これまでにないレベルで整合したものであり、今後の二国間協力の優れた基盤となる。
 特に、両国が、あらゆるアプローチと手段を統合させて、事態の生起を抑止することを重視する点で一致していることは重要。
 同時に、戦略は策定して終わるものではない。安全保障環境の厳しさを踏まえると、日米両国には、それぞれの戦略を速やかにかつ着実に実行していくことが求められている。
 私は、新たな戦略の下、日本の防衛力の抜本的強化を速やかに実現するため、反撃能力を含めた新たな能力の獲得や継戦能力の増強に最大限努力する。このような私の決意に対し、本日、オースティン長官、ブリンケン長官から強い支持をいただいたことを大変心強く思う。
 また、日米間においても、連携強化に向けた議論を急がねばならない。本日の協議では、日本の防衛力の抜本的強化を踏まえた同盟の役割・任務分担を実現していく必要性で一致。さらに、日米協力の下での反撃能力の効果的な運用、宇宙・サイバー分野における連携の強化、装備・技術面での協力の深化といった、幅広い分野における取組を進めていくことについても、四閣僚で合意した。また、同盟のパートナーシップを拡大するため、豪州、韓国、ASEAN、欧州等のパートナー国との協力を更に深めていくことで一致した。
 地域において一層重要性が増している拡大抑止に関しても、オースティン長官より米国の考え方を幅広く伺った。その上で、米国の拡大抑止がより信頼でき、より強靱靭なものであり続けるために、両国が進めていくべき取組について議論したところ。
 日米両国は、厳しさを増す安全保障環境に対応するため、日本における米軍の態勢を最適化するための取組として、2012年に調整された現行再編計画について、その基本原則は維持した上で、再調整を行うこととした。第3海兵師団司令部と第12海兵沿岸連隊の沖縄残留は、前方に展開する米軍の戦力態勢を、より多面的な能力を有し、より強靱性があり、そしてより機動的なものとするもの。この取組は、日米同盟の抑止力・対処力を大きく向上させるものであると同時に、我が国の防衛に対する米国の確固たるコミットメントを示すもの。これらの取組については、その実施に向け、引き続き米側と緊密に協議していく考え。
 また、私から、在日米軍の安定的な駐留と活動にとって、沖縄をはじめとする地元コミュニティの理解が重要である旨述べた。引き続き、沖縄の負担軽減の努力を進めてまいる。
 本日、日米両国が将来の国家安全保障・防衛政策の道しるべとなる戦略文書を策定した直後のタイミングで、防衛・外交政策の責任者である4閣僚が一堂に会し、それぞれの戦略をどのように実行していくか、じっくりと議論できたことは、大変意義深い。今後、同盟の強化に向け、引き続き議論を重ねていく考え。

2 質疑応答

Q:海兵沿岸連隊に関して、国防長官と防衛大臣が言及していた、一層厳しさを増す安全保障環境とは、具体的には何を指すのか。中国なのか。台湾や尖閣諸島、北朝鮮などでの不測の事態なのか。また、それが沖縄での緊張を局地的に高めるという懸念はないのか。それにより、沖縄における戦力が純増することにつながるのか。
 宇宙も防衛パートナーシップに含まれるという報道があるが、それについてコメントをお願いしたい。
 ウクライナのソレダルの情勢について、ワグネルグループ(傭兵会社)が支配を主張し、またロシア軍司令部の刷新(shake-up)があったという報道が多くなされているが、オースティン長官の見解如何。
 ボルソナーロ前伯大統領に対するペルソナ・ノン・グラータの要求の声が民主党から出ているようだが、数日前にブラジリアで起きた騒動にもかかわらず、彼がフロリダに留まることは、どの程度許容されるかについてのブリンケン長官の見解如何。

A:(オースティン長官)ソレダルがロシアの手に陥落したかについて、報道は承知しているが、現時点では、それを確証することはできない。この地域の情勢は非常に流動的で、激戦が繰り広げられていることは周知のとおり。何度も戦況が変わり、極めて残酷な戦いとなっている。しかし、ウクライナ人は強い感銘を与えるような、非常に決意の固い戦いを続けている。
 我々は、ウクライナ人が主権的領土を守るための努力に成功するために必要な能力を確保するために、できる限りのことをすることに集中している。我々は、日常的にカウンターパートと対話している。来週もドイツでウクライナ防衛コンタクトグループ会合を開催し、50人ほどの国防大臣を集めて、ウクライナの現在のニーズと今後の成功のために何が必要かを話し合う予定。
 我々は、ウクライナを必要なだけ支援すると何度も言ってきたし、同盟国やパートナーも同じように考えている。
 海兵連隊から改編される海兵沿岸連隊は、より戦闘力が高く、より機動的で、より能力の高い部隊として、同盟国に多大な能力をもたらすと信じている。大隊規模の戦闘部隊、極めて重要といえる対艦能力を保持できる長距離の火力部隊、そして連隊全体を維持するための後方支援部隊で構成される。
 日本を守り、自由で開かれたインド太平洋を促進するための我々の努力に、大きな貢献をすることになる。我々は、自由で開かれたインド太平洋を維持するという共通のビジョンを日本と共有しており、我々が行っているすべてのことは、その方向を目指している。

A:(浜田防衛大臣)沖縄に関する米軍再編については、米軍と共に、調整・議論が行われなければならないものと承知。いずれにしても、沖縄の問題については、地元との関係もあり、この課題を克服するために、引き続き説明の努力をしてまいりたい。

A:(ブリンケン長官)まず、我々が対処している安全保障環境については、より厳しい環境になっていることは周知の事実であり、中国、北朝鮮を含む国々から、現状に対する様々な挑戦が行われていると認識している。
 そしてこれには当然ロシアも含まれる。なぜなら、ウクライナ侵攻は欧州で生じているものであるが、アジアを含む世界中の国々に対し深い含意を持つものであるからである。それは、ウクライナ国民の生命と生活に対する挑戦であるだけでなく、ルールに基づく国際秩序全体に対する挑戦であり、この秩序の根底にある、主権、独立、領土保全、自らの未来を形作る権利といった、世界のあらゆる場所において非常に重要な原則に対する挑戦だからである。
 だからこそ日本は、ロシアによる侵略にせよ、その他の分野にせよ、この秩序を守るために、その最初の日から、我々や他の多くの国々と強力なパートナーであり続けている。
 宇宙での協力について質問があったが、宇宙での協力もあるし、サイバー空間での協力もある。まだ発表されていないかもしれないが、我々が取った追加的なステップを反映した声明を出す予定となっている。これは極めて重要なものである。我々は、陸、海、空、そしてサイバー空間や宇宙など、あらゆる領域で協力関係を深めるために取り組んでいる。このうち宇宙は、日米同盟の安全と繁栄にとって重要な要素。我々は、宇宙への、宇宙からの、宇宙における攻撃が明確な挑戦であることに同意し、その攻撃の性質によっては、日米安保条約第5条の発動につながることがあり得ることを確認した。これは重要なことである。先ほど申し上げたように、今週にはNASAで、宇宙分野での協力に関する協定に署名する予定。
 サイバーに関しては、我々は同盟にとってサイバーセキュリティと情報保全が根本的に重要であることを強調してきた。我々は、この点でも、協力関係を深めることに合意した。これは日米両国や他の国々が直面している課題であり、共に取り組むことが重要である。我々は皆、サイバー空間で発生する課題に対処するための教訓を学んでいる。ベストプラクティスを共有し、互いに支援し合うことは、これまで以上に重要なことである。
 また、同盟の競争力をさらに高めるために、技術協力を強化し、新興技術に共同投資することにもコミットしている。
 バイデン大統領がルーラ大統領に述べたように、我々はブラジルの人々とともにある。 ブラジルの民主主義とその制度を支持している。(バイデン)大統領は、2月上旬にルーラ大統領がワシントンを訪問する際に、直接、緊密な協議を行う機会があり、大統領はそれを非常に楽しみにしている。
 ルーラ大統領は、1月8日の出来事について調査を行うよう求めている。それに関して、ブラジル当局からは具体的な要請は受けておらず、私はそれを先取りするつもりはない。 もちろん、要請があれば、いつものように迅速に対応する。
 私人については、彼らの計画に係る様々な公の発言に接しているが、個人の査証の状況についてコメントすることは適切ではなく、差し控えたい。

Q:日米の外務・防衛両閣僚に伺う。
 東アジアでも力による一方的な現状変更が懸念されており、台湾有事のリスクも指摘されているなか、「2+2」では、日本の、特に南西方面の防衛強化に、日米でどう取り組み、抑止力を高めると一致したのか。
 これから台湾有事を見据えた自衛隊と米軍の一体運用を進めていく予定か。
 また日米両国は昨年改定した国家安保戦略で、中国の現状認識を、共に、国際秩序などへの「挑戦」と位置づけた。東アジアでの中国の安全保障上のリスクをどう捉え、対応していくお考えか。

A:(林外務大臣)我が国周辺の安全保障環境が格段と厳しさを増す中、南西諸島を含む我が国防衛の強化を図るため、日米同盟の抑止力及び対処力の強化は急務であり、今般の日米「2+2」においては、日本に対する武力攻撃及び地域における安定を損なう行動を抑止するための、平時における共同の取組の決定的な重要性について一致した。
 かかる日米双方の一致した認識を踏まえ、今般発出した共同声明にも具体的な取組を記載したところであるが、たとえば、南西諸島を含む地域において、日米の施設の共同使用を拡大し、共同演習・訓練を増加させるといったことも、そのような取組に含まれる。
 台湾有事という仮定の質問にお答えすることは差し控えるが、政府としては、台湾海峡の平和と安定は、我が国の安全保障はもとより、国際社会全体の安定にとっても重要であり、台湾をめぐる問題が、対話により平和的に解決されることを期待するというのが従来から一貫した立場である。
 新たな国家安全保障戦略にも明記されているとおり、現在の中国の対外的な姿勢や軍事動向等は、我が国と国際社会の深刻な懸念事項であり、我が国の平和と安全及び国際社会の平和と安定を確保し、法の支配に基づく国際秩序を強化する上で、これまでにない最大の戦略的な挑戦であると認識している。
 同時に、日中両国は、地域と国際社会の平和と繁栄にとって共に重要な責任を有しており、日中両国が「建設的かつ安定的な関係」を構築していくことが、インド太平洋地域を含む国際社会の平和と安定にとっても不可欠であると考えている。

A:(浜田防衛大臣)林大臣が述べたとおりの立場である。
 南西諸島を含む地域において、日米の相互承認に基づき、日米の施設の共同使用を拡大し、共同演習・訓練を増加させることにコミットした。そのような形で、必要な同盟の抑止力・対処力を一層強化していく必要があり、引き続き、米国と緊密に連携していきたい。

A:(ブリンケン長官)まず、少なくとも過去30年間の私の経験では、かつてないほど我々は団結している。課題をどのように見ているか、またそれらにいかに対応していこうとしているかの両方において我々のアプローチは大きく収斂し、極めて整合的となっている。これから発表する、あるいは本日の午後に既に発表した声明は、日米間の整合性、収斂性を詳細に反映したものになるだろう。
 台湾について言えば、ここ数年、中国から見られるものは、残念ながら、何十年にもわたって平和と安定を維持してきた現状を損なおうとする試みである。一方、我々は、この現状を維持し、強化したいと考えている。我々は、いずれの側からによる、いかなる一方的な現状変更にも反対している。我々は、平和と安定を維持するために、冷静で毅然とした態度で臨む。日米はその努力において、団結している。
 我々の同盟は、インド太平洋における平和、安全、繁栄の礎である。本日発表した措置は、日米両国が強くコミットしているルールに基づく秩序を維持する同盟の能力を強化するものである。

A:(オースティン長官)一点付言するなら、我々は、米軍と自衛隊の強靱性と相互運用性を強化し、運用協力を深めることに引き続き尽力している。本日我々が触れた、特に二国間の共同演習・訓練を増加させるという合意は、力強いコミットメントを示すものである。

Q:日本は、自衛隊の統合司令部設置を決定したが、相互運用性と即応性を高めるために、日米同盟の指揮統制関係はどうあるべきかにつき、オースティン長官の見解如何。日米両国は中国の軍事的侵略に対する懸念を共有しているが、米国はどのように中国との関係を扱い、不測の事態につながる誤算を避けることができるかにつき、オースティン長官の見解如何。また、昨年10月、オースティン長官は中国による台湾侵攻が差し迫っているとは思えない旨述べたが、その考えは変わっていないか。
 今後の中国との関係をどのように扱い、構築する予定か、また、それに対し日本外交はどのような役割を果たすことが期待されているかにつき、ブリンケン長官の見解如何。
 中国の台湾侵攻に対する危機感が高まっている中、前回の「2+2」会合で、日米両国は、有事のための二国間計画がしっかりと進展していることを歓迎したが、現在の米国との二国間における有事の際の計画の進捗状況をどのように評価しているか、また、中国の侵略を抑止する観点から、最近米国が発表した在沖海兵隊の改編をどのように評価するかにつき、浜田大臣と林大臣の見解如何。

A:(オースティン国防長官)「どうすれば誤算を避けられるか」につき、大国の指導者がオープンなコミュニケーションラインを維持し、互いに話し合うことは、可能な限り誤算を避ける上で、絶対的に重要。 我々は、そのようなオープンな関係を維持するための努力を続けている。私は、中国に対し、彼からも歩み寄り、コミュニケーションラインをオープンに保つために努力するよう呼びかけたい。 それが誤算を避けるための最良の方法。もちろん、我々の軍隊は訓練され、規律正しく、あらゆる種類の誤解や誤算も避けるために、その力の及ぶ範囲内でいかなることも行うと信じているが、いずれにせよ、こうした対話は非常に重要である。
 中国による台湾侵攻が差し迫っているかについては、習近平のことをとやかく言うつもりはないが、最近見られるのは、中国軍による非常に挑発的な行動と、ニューノーマルを改めて確立しようとする動きとなっている。台湾周辺では、海峡上空での活動や海上における艦艇の活動が活発化している。しかし、それをもって、侵略が差し迫っているといえるかについては、私は真剣に、疑念を抱いている。我々は状況を注視し続け、同盟国やパートナーと協力して、海峡と地域全体の平和と安定を促進するためにできる限りのことをするつもりである。

A:(ブリンケン国務長官)バイデン大統領と習国家主席は、バリ島で開かれた前回のG20において非常にオープンで率直な会話をし、お互いの意図について話し合った。バイデン大統領は我々の意図と優先順位を共有し、我々は習国家主席からもそれを感じ取ることができた。今、国防長官が述べたように、誤解が紛争に発展することは避けなければならないので、大統領はじめ、我々を含む多くの者の間でのコミュニケーションラインをオープンなものとしておくことが極めて重要。
 まさにそうした両国のコミュニケーションラインを前進させるため、私は今後数週間のうちに中国を訪れ、(バイデン)大統領が行った議論のフォローアップを行う所存。日米両国は、中国と複雑かつ重大な関係にあり、両者の間に激しい競争関係があることは明らかである。同時に、協力という側面もあり、それを追求できるかが重要。米中日がこうした関係を責任持って管理し、自国民だけでなく世界中の人々のためになるような協力ができる分野があれば、それが気候変動であれ、国際保健であれ、薬物への対処であれ、それを追求すべきだという声が世界中の国から聞かれる。
 しかし、我々は精力的に競争していく。(バイデン)大統領もその立場を明確に示してきている。我々は紛争を望んでいるのではない。競争は、責任を持って管理するが、精力的に競争していく所存である。そして、コミュニケーションラインをオープンに保ち、私が述べたように、競争が紛争に発展しないようガードレールを設置するため、できる限りのことをするつもりである。

A:(林外務大臣)まず、日本を含むインド太平洋地域における米国のコミットメントと態勢の最適化を非常に歓迎する。そして、在日米軍の態勢を最適化するための再編の調整も含めて、引き続き緊密な協議を行うこととした。
 質問の趣旨を誤解しているかもしれないが、もし日米ガイドラインのことを指しているのであれば、今般それに関する議論はなかった。日米ガイドラインの見直しの必要性については、不断に検討していくが、ただちに必要になるとは考えていない。

A:(浜田防衛大臣)2015年に策定された「日米防衛協力のための指針」の下、日米両政府は、「共同計画」を策定・更新することとしており、今回も、緊急事態に関する共同計画作業の着実な進展を歓迎した。
 また、日本の置かれた非常に厳しい安全保障環境に対応し、第3海兵師団司令部及び第12海兵連隊を沖縄に残留させ、また、同連隊を2025年までに海兵沿岸連隊に改編させることで一致した。
 このような取組は、在日米軍の態勢を強化するものであると同時に、日本の防衛に対する米国の揺るぎないコミットメントを改めて示すものでもあり、日本自身の防衛力の抜本的強化と相まって、日本に対する武力攻撃に対する抑止力・対処力を大きく向上させるものである。

Q:今回の会談では、新たな「国家安全保障戦略」や「国家防衛戦略」が主要議題になったと承知するが、反撃能力を含めた防衛力の強化や、防衛費の大幅増の意義や狙いについて、米側にどのように説明したか、林、浜田両大臣に伺う。
 日本の防衛力の強化をどう評価するか、そして、両国の戦略が出そろったことで、日米の抑止力・対処力を具体的にどのように高めていくつもりか、また、先ほど林大臣は、ガイドラインの見直しの可能性について言及したが、これをどう考えるかについて、ブリンケン、オースティン両長官に伺う。

A:(林外務大臣)本日の「2+2」では、一層厳しさを増す安全保障環境における新たな戦略を踏まえた日米同盟の抑止力・対処力強化に向けた今後の取組を確認した。
 私(林外務大臣)からは、我が国の防衛力の抜本的強化は、米国の能力のより効果的な発揮にも繋がること、そして、それは日米同盟の抑止力・対処力を一層強化するものとなり、地域の平和と安定のために大きな役割を果たすこととなる旨発言した。これに対し、米国から力強い支持の表明があった。
 先ほどもお伝えしたとおり、今回の日米「2+2」の結果として発出された共同声明は、戦略的競争の新たな時代における同盟のビジョンを提示するもの。スピード感をもってこれを実行に移し、浜田大臣、ブリンケン長官、オースティン長官と共に、日米同盟を絶えず強化していく。

A:(浜田防衛大臣)私(浜田大臣)からは、日本の防衛力の抜本的強化を速やかに実現するため、大幅に増額した防衛予算の下で、反撃能力を含めた新たな能力の獲得や継戦能力の増強に最大限努力する強い決意を申し上げた。これに対し、林大臣も述べたとおり、米側からは、日本の新たな安全保障政策を、同盟の抑止力を強化する重要な進化であるとして強い支持が表明された。
 本日の議論を踏まえ、戦後最も厳しく複雑な安全保障環境の中で、反撃能力を含めた我が国の防衛力の抜本的強化と相まって、日米同盟が地域及び国際社会の平和、安定、繁栄のために更に確固としたものとなるよう、引き続き、オースティン長官、ブリンケン長官及び林大臣とともに取り組んでまいる。

A:(ブリンケン国務長官)御質問への回答はとてもシンプルである。すなわち、我々は日本の新戦略を心から歓迎する。それは、とりわけ、日米の戦略間に著しい収斂性があるからである。投資拡大、役割・任務・能力の強化、日米間だけでなく他の同盟国やパートナーとの二国間、三国間、多国間の協力関係の緊密化など、既に言及されている様々なコミットメントを歓迎する。我々は既に強固な基盤を持っているが、それは、今後ますます強固なものとなるだろう。
 これらの新しい文書を読むと、同盟がこの地域の平和を促進し、ルールに基づく秩序を守るための能力を再構築していることがわかる。いま皆さんが目にしているのは、現代化する同盟であり、日米両国は、インド太平洋地域やその他の地域における新たな挑戦に備えるため、足並みを揃えて取組んでいる。
 バイデン大統領は、今週岸田総理をワシントンに迎える際、岸田総理と感謝の気持ちを分かち合う機会があるだろう。

A:(オースティン長官)ブリンケン長官に同意。バイデン大統領と岸田首相のビジョンの間には、明確な戦略的整合性がある。両者を並べると、そのことが戦略にも反映されているのがわかる。我々は皆、ルールに基づく国際秩序を維持し、地域の平和と安定を促進することに重点を置いている。
 本日、我々が会談で話し合ったことは、まさにその戦略を実現するもの。戦力態勢の最適化、二国間演習や訓練イベントの増加への合意など、これらはすべて、浜田大臣が以前述べたように、我々は戦略を書くだけでなく、それを実行できるようにするために必要なことを確実に行うことに全力を注いでいることを示す良い指標となるもの。信頼できる抑止力を維持するために、戦力態勢を最適化し、相互運用性を高めるための作業を続ける。 そのために、私は同僚たちと一緒に、いわゆるハード・ガバメント・ワークを続けていきたい。

以上