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 米海大ナウ!

 海のパートナーシップを広げる:国際交流学部

(061 2016/05/10)

米海軍大学   客員教授
1等海佐    下平   拓哉

   米海大には、4つの大きな任務があります。第1が、学生教育。第2に、海軍省や海軍作戦部長等への提言。第3に、艦隊支援。そして第4に、国際交流です。その国際交流を担当しているのが、私が所属している国際交流学部です。主な業務は、国際学生の受け入れ、国際シーパワー・シンポジウム(International Seapower Symposium: ISS)及びOBシンポジウム(Regional Alumni Symposium: RAS)の調整及び実施です。

   国際交流学部長のマンゴールド(Thomas Mangold)教授の下、国際交流学部において最も重要視していることは「グローバルな海洋パートナーシップの強化」です。

   国際学生については、「31ノット・バーク」の名で知られる太平洋戦争の英雄アーレイ・バーク提督が、戦前、仮想敵国との国際的な交流が少なかったことを反省し、1956年、世界中の海軍士官を米海大のコースに招致したことが始まりです。これが、現在、ニミッツ・コースと呼ばれる大佐級を中心とした指揮課程です。また、1972年からは、現在スプルーアンス・コースと呼ばれている少佐級を中心とした幕僚課程が開設されました。それぞれ11か月のコースであり、これまで130か国を超える国々から、毎年100名以上の学生が留学しています。特徴の第1は、統合。いずれのコースも米国学生とともに授業がなされ、米国の学生も海軍のみならず、陸軍、空軍、海兵隊、国務省等のシビリアンといった完全に統合化されていること。そして、米国学生は、統合参謀本部が認定した統合専門軍事教育(Joint Professional Military Education: JPME) を習得することができます。第2は、高等教育。米海大では、ニューイングランド学術機構(New England Association of Schools and Colleges: NEASC)の認可を得た大学院レベルの授業をセミナー形式により実施しており、米国学生のほぼ総員が修士号を取得できます。また、国際学生も例年約20%が、単位互換制度により、米海大近傍のサルベ・レジーナ大等において修士号を取得しています。第3は、友。米海大では、人的交流の意義を踏まえ様々なイベントが企画されており、世界中の海軍の学生とともに、米海大教職員、米国学生、そして地元ニューポートの人達とも積極的に交流することが重要視されています。

   次にISSについては、1969年から隔年、米海軍作戦部長と米海大学校長が共催して、各国の海軍や沿岸警備隊のトップを招き、最新の安全保障問題について議論するシンポジウムを実施しています。その目的は、地域的かつグローバルな海洋安全保障協力を促進することにあります。2014年9月、第21回ISSのテーマは「共通の海洋問題に対するグローバルな解決策」であり、「海洋安全保障の将来動向」「気候変動の海洋に対する影響」及び「有志連合による作戦の強化」について議論されました。ISSの過去数年分の発表資料及び質疑内容については、米海大のHPで明らかにされており、各国海軍のトップの安全保障認識を判断する好個の資料です。

   RASについては、2005年から毎年、アジア、ヨーロッパ、アフリカ等の地域において、主として米海大の卒業生と当該地域の専門家等を招いて、様々な安全保障問題について議論し、信頼関係の構築と地域海洋安全保障パートナーシップの強化を図っています。近年の特徴としては、海洋安全保障、災害救援/人道支援が共通の安全保障問題として扱われています。2016年4月の第13回は、ドイツにおいて27か国が集まり北極問題や黒海問題を、2015年8月の第12回は、米海大においてアフリカ25か国から80人以上が集まり移民問題を、2015年5月の第11回は、ブラジルのリオにおいて南アメリカ地域17か国から400人以上が集まり麻薬問題を、そして2014年5月の第10回は、フィリピンのマニラにおいてアジア地域14か国から100人以上が集まり2013年のハイヤン台風と中国の台頭というトピックを扱っています。

   アーレイ・バーク提督が「人間にとって、国家にとって、そして海軍にとって最も重要なのは、友である。(Most important among people or among nations or among navies is friends.)」と言っているとおり、国際交流学部は、同じ海を舞台に国の安全保障を担っている世界中の仲間たちと日々交流を深めています。

(2016年4月22日記)

   【国際交流学部HP】
   https://www.usnwc.edu/Departments---Colleges/International-Programs.aspx

   【ISS レポート】
   https://www.usnwc.edu/Events/-ISS.aspx