029 「Troublesome」ジェームズ・ホームズ教授
（029 2015/11/24）
米海軍大学 客員教授
本校戦略研究会（SSG）
１等海佐 下平 拓哉
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南シナ海における米中のにらみ合いは、アジア太平洋地域の安全保障に係る実務者及び研究者にとって目を離すことができないトピックです。米海大の名物教授であるジェームズ・ホームズ(James R. Holmes)教授もその一人です。
現在の南シナ海情勢は、ホームズ教授が2014年10月26日付け「ナショナル・インタレスト」で主張した「アジアにおける最悪の悪夢(Asia's Worst Nightmare: A China-Japan War)」がまさに現実の世界となろうとしています。そこでは、海空の自由を制限するような、原理原則を黙認した危険な前例を作ってはならないと強く主張しています。また、2015年10月5日付け「ナショナル・インタレスト」の「にらみ合い：米国はどのようにすれば中国海軍を本当に止めることができるか(Face Off : How America can really stop China’s Navy)」においては、南シナ海の情勢は、今後不安の多い長期戦となることを示唆しています。南シナ海における中国の埋め立てによる拠点化は、精密誘導兵器の時代にあっては数分で片が付く安易な目標に過ぎないとの意見も聞かれる一方で、中国にはホーム・ゲームの有利性があり、また中国自身が更なる問題化を避けることによって、長期化すると見積もっています。
米海大の名物教授の一人であるホームズ教授は、これまで25冊以上の本の執筆を手掛け、学術論文も150を超える精力的な研究作業を続けています。元々は、米海軍の水上艦艇士官であり、湾岸戦争にも従軍しています。米タフツ大学フレッチャー法律外交大学院で博士号を取得したアジア太平洋地域の安全保障問題の専門家であり、米海大の学生の時は、最優秀賞をとっています。
ホームズ教授の特徴は、WEBを使っての迅速な意見の発信です。「ナショナル・インタレスト(The National Interest)」や「ディプロマット(The Diplomat)」、「ワォー・オンザ・ロックス(War on the Rocks)」「リアル・クリア・ディフェンス(Real Clear Defense)」、「フォーリン・ポリシー(Foreign Policy)」等において活発に意見発信をしています。そして、一旦議論を開始すると、さすがは“troublesome” と言われるほど、「うるさい」ほど語るのが特徴です。ちなみに、ホームズ教授が薦める最低限毎日確認すべきWEBサイトは、「ナショナル・インタレスト」と「ディプロマット」だそうです。
また、最近の研究関心としては、米海大同僚のトシ・ヨシハラ教授とともに、日本のシーパワーについての共同研究をしながら、ペリー艦隊から太平洋戦争に至る米国のアジア艦隊について、海軍外交という観点から研究を進めています。
トシ・ヨシハラ教授とホームズ教授に共通することは、最新の安全保障問題を研究していく上で、安全保障理論と歴史をよく活用していることです。安全保障理論、歴史、最新の安全保障問題の3つのバランスが安全保障研究には欠かせません。
【ホームズ教授の主なWEB記事】
【ナショナル・インタレスト】
1 「アジアにおける最悪の悪夢(Asia's Worst Nightmare: A China-Japan War)」
http://nationalinterest.org/feature/us-navys-worst-nightmare-submarines-may-no-longer-be-13103
2 「にらみ合い：米国はどのようにすれば中国海軍を本当に止めることができるか:(Face Off :
How America can really stop China’s Navy)」
http://nationalinterest.org/feature/face-how-america-can-really-stop-chinas-navy-14014
【ディプロマット】
http://thediplomat.com/authors/james-r-holmes/
【リアル・クリア・ディフェンス】
http://www.realcleardefense.com/authors/james_r_holmes/
【フォーリン・ポリシー】
http://foreignpolicy.com/author/james-holmes/
【ウォー・オンザ・ロックス】
http://warontherocks.com/author/james-holmes/