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<解説>北朝鮮のICBM開発状況

北朝鮮は、17(平成29)年7月に2度、そして同年11月にも大陸間弾道ミサイル(ICBM)級の弾道ミサイルを発射したほか、18(平成30)年1月の新年の辞において、「米国本土全域が核攻撃の射程圏内」などと主張しています。

一般に、兵器としてのICBMの実現には①5,500km以上の射程、②核兵器の小型化・弾頭化、及び③大気圏再突入技術などが必要と考えられています。

①の射程については、17(平成29)年7月に2度発射されたICBM級の弾道ミサイル(北朝鮮の呼称によれば「火星14」型)は、その飛翔距離、高度などから、射程は5,500km以上と考えられます。また、同年11月に発射された新型のICBM級弾道ミサイル(北朝鮮の呼称によれば「火星15」型)は、弾頭の重量などによっては、1万kmを超える可能性があります。

②の核兵器の小型化・弾頭化については、北朝鮮が06(平成18)年に初めての核実験を実施してから10年以上が経過したことや、通算6回の核実験を通じた技術的成熟が見込まれることなどを踏まえれば、その実現に至っている可能性が考えられます。

③の大気圏再突入技術については、弾道ミサイルが発射されて大気圏の外に出たのち、再び大気圏内に突入する際に発生する熱から弾頭部の変形や破壊などを防ぐ熱防護技術が特に重要です。北朝鮮はこれまでに当該技術を実証した旨繰り返し主張していますが、実際に北朝鮮が当該技術を実証し得ているか否かについては、引き続き慎重な分析が必要です。

いずれにせよ、北朝鮮は弾道ミサイルの発射を繰り返すことにより、関連技術を蓄積していくものと考えており、そうした前提に立って、国民の生命・財産と我が国の領土・領海・領空を守り抜くより一層の万全の備えを構築する必要があります。

仮に、北朝鮮が弾道ミサイルの開発をさらに進展させ、再突入技術を実証するなどした場合は、北朝鮮が米国に対する戦略的抑止力を確保したとの認識を一方的に持つに至る可能性があります。北朝鮮がそのような抑止力に対する過信・誤認をすれば、地域における軍事的挑発行為の増加・重大化につながる可能性もあり、我が国としても強く懸念すべき状況になり得ると認識しています。

北朝鮮が核兵器を搭載した弾道ミサイルで米国を攻撃する能力を数か月で獲得する可能性があるとの指摘もあり、政府としても、北朝鮮の核・ミサイル開発状況について、重大な関心をもって注視する必要があります。

大気圏突入のイメージ図

大気圏突入のイメージ図