防衛大学校National Defense Academy

防衛大臣訓示

小泉進次郎 防衛大臣

本日、高市内閣総理大臣ご臨席のもと、栄えある防衛大学校の卒業式にあたり防衛大臣として一言申し上げます。
卒業生の皆さん、卒業おめでとう。
そして日ごろから防衛省自衛隊、防衛大学校に多大なるご理解ご協力を賜っております国会議員の皆様、地元の自治体、関係各国からのご来賓の皆様に対し厚く御礼を申し上げますとともに、これまで学生たちに対し、情熱をもって指導にあたられた教職員各位、特に5年間にわたり深い愛情をもって教育に取り組まれた久保学校長に深く敬意を表します。本当にありがとうございました。

私は、ここ横須賀に生まれ育ち、毎年防大の卒業式に出席してきました。本日こうして、防衛大臣として卒業式に出席していること、感慨深く思うとともに、大変うれしく思います。
留学生の皆さん、卒業おめでとう。留学生の皆さんはこの学校で、先ほど久保学校長がお話された通り、母国を離れて本当に頑張りました。昨年11月にマレーシアでは41期,42期,69期卒業生と、先月は36期卒業生のタイの陸軍大将とお会いし、横須賀の思い出を語り合いました。皆さんは日本と貴国の友好の懸け橋です。皆さんのご努力に心から敬意を表すとともに、母国でのご活躍と再会できる日を心から楽しみにしています。

本日は皆さんの卒業を祝し、私から3点お話しします。

1点目は自衛隊が目指す変革についてです。現在、我が国を取り巻く安全保障環境は大きく変化し、一層急速に厳しさを増しています。ロシアによるウクライナ侵略が示すように、国際社会は戦後最大の試練の時を迎え、既存の秩序は深刻な挑戦を受けて、新たな危機の時代に突入しています。緊張の度合いを深めている中東情勢にかんがみ、今この瞬間も万が一邦人等の輸送が必要となった場合に迅速に対応できるよう、モルディブで自衛隊機が待機態勢をとっています。いかに厳しい時代、環境であろうとも国民の命と平和な暮らし、そして、日本の領土、領海、領空を断固として守り抜くことは政府の最も重大な責務です。そして自衛隊は最後の砦であります。こうした中、先ほど高市総理が述べられたとおり、今後の戦略3文書改訂の議論において、防衛省自衛隊の任務・役割が、急速に拡大・変化する中、これにふさわしい組織へと防衛省自衛隊を変革させなければなりません。防大という、幹部自衛官になるべく教育を受けた皆さんはその変革の主役です。先日私が宮城県航空自衛隊松島基地を視察した際、ブルーインパルスを率いる第11飛行隊長の江尻卓2等空佐が操縦する機体の後部座席に乗り飛行しました。「緊急事態があっても私に任せてください」、緊張していた私が安心してブルーインパルスに乗ることができたのは、江尻隊長のその落ち着いた言葉とプロフェッショナルな技量のおかげでした。彼はパイロットになるという小学生の時からの夢を叶えるために、ここ防大に入り航空自衛官として任官し、今ブルーインパルスの隊長として防大で養われたリーダーシップを発揮しています。皆さんにはどんな厳しい状況でも自分がいるから大丈夫だ、そう胸を張って言えるそんなリーダーシップとフォロワーシップを発揮し防衛省自衛隊の変革の主役になってほしいと願っています。そしてそうなってくれると確信しています。

2点目は、卒業生の皆さんへの感謝です。
皆さんはすでに変革を起こしています。先日防衛大臣室で、横須賀出身の陸上自衛官の方から防衛大学校に入校した理由を聞く機会がありました。防大は魅力的だけど、自分は厳しい修学環境に耐えられるだろうか、そんな風に進路に悩んでいた、当時高校生の彼にとって、最後の決め手となったのは横須賀を走る京浜急行のバスの中や横須賀の街中で、規律正しい防大生が明るく楽しそうで、学生たちが親しげに会話している様子だったといいます。厳しい就学環境でも、充実した学生生活を送れるならば自分も頑張れるかもしれない。彼の背中を押したのは防大生の皆さんです。人の気持ちを動かす以上の変革はありません。きっと今日、皆さんを送り出す在校生の中にも皆さんの姿を見て防衛大学校を志望した方もいることでしょう。尚彼は防衛大学校の卒業後、幹部候補生学校を経て、初めてついた任務が東日本大震災の被災地への災害派遣でした。未曽有の大災害に直面し極限状態にある中、なぜ頑張りぬけたのか。それは父親ほどの年齢のベテラン隊員たちが、まだ若く小隊長に任官したばかりの彼の言葉に対しても、真摯に耳を傾けてくれたからだといいます。
皆さんも、これまでに学んできたすべてが問われるような現場に卒業後すぐに直面するかもしれません。防衛力の中核は人であり、自衛隊員です。リーダーとフォロワーという、それぞれの立場からお互いに支えあい、助け合うこと、そして、その信頼関係のもとで、一人一人が自らの能力を発揮することで、自衛隊を最も人を大切にする組織へ、ともに変革していきましょう。

3点目は、まさに、その「人」についてです。
今、隊員の処遇改善に向けた取り組みを高市総理のもと強力に進めています。今年度の学生手当の引き上げは皆さんの記憶にも新しいと思いますが、2027年度には自衛隊創設以来初となる自衛官独自の給与体系の改定を実施する予定です。これは、崇高な国防を担う自衛官に対して、その努力と貢献が報われる環境を必ず実現する意志の表れだと受け止めていただければ幸いです。
今この瞬間も厳しい環境の中、国内外で、日夜任務や訓練に励む隊員がいます。そして、そのご家族の皆さんが隊員の帰りを待っています。隊員もご家族の皆さんも日本の誇りであり、宝です。
時代や社会が変化するなかにあっても、全ての隊員が職種や年齢,性別、勤務地を問わず、誇りと名誉をもって、任務に邁進できる環境を作り上げること、そして、隊員の帰りをご家族が安心して待てる環境を整えることは、防衛大臣である私に課せられた最も重要な使命です。私はその職責に対し全身全霊をかけて全うすることを誓います。

最後にご家族の皆様、卒業の日を迎えたお子様たちの勇姿を見て、感慨もひとしおだと思います。あらためてお祝い申し上げます。本当におめでとうございます。今後、卒業生たちは自衛隊の現場において、それぞれに与えられた責務を立派に果たしていかれるものと確信しております。私はご家族の皆様が安心して卒業生の皆さんを自衛隊に送り出せるよう、防衛大臣として全力を尽くしてまいります。引き続き卒業生を温かく見守り、悩んだり壁にぶつかったときは励ましていただければ幸いです。
改めて卒業生の皆さん、今日の日を迎えるまでの道のりは決して平坦なものではなかったと思います。挫けそうになることもあったでしょう。家族や周りを心配させまいと、人知れず涙したこともあったでしょう。それでも、今日まで、試練を乗り越え卒業を迎えた皆さんを誇りに思います。
皆さんは日本の宝です。そしてその皆さんを育てられたご家族の皆さんも、日本の宝です。
卒業生の皆さん、これから一緒に日本のために頑張ろう。改めて、心から卒業おめでとう。

 

 令和8年3月14日

防衛大臣 小泉 進次郎