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潜水艦隊司令官挨拶

潜水艦隊のホームページをご覧くださりありがとうございます。
先日、広島県の呉市に所在する潜水艦教育訓練隊(潜水艦の学校ともいえる部隊)で行われた潜水艦指揮課程(潜水艦の艦長になるための約2ヶ月間の教育コース)の修業式に参列しました。40歳前後の2等海佐(列国海軍でいえば中佐)数名が無事にこのコースを修業し、晴れて潜水艦艦長となる資格を得ることができました。
ここで、「艦長になるのに、わざわざ学校で教育を受けるの?」と意外に思われる方がおられるかもしれません。よって、今回は自衛隊における教育/人材の育成について少し述べたいと思います。
潜水艦艦長として十分にその役割を果たすためには多くの要件が求められます。潜水艦の各種機構に精通していることや艦を適切に運航できることは当然として、作戦や戦術に関する知識技能、情勢の変化に応じて連続的に判断処置できる能力、マネジメント力に加え部下を適切に指揮統率できる力量、さらには各種の管理的な事務や業務、諸作業の実施・指導・監督を適正に実施できることなど、その求められるところは多岐にわたります。
ただ、この教育コースに入るメンバーは、いずれもこれまでの潜水艦部隊や統合幕僚監部、海上幕僚監部、艦隊司令部などでの勤務を通じて、潜水艦艦長の任を負うに足る適性と力量がある(であろう)と認められた者たちです。よって、わずか2ヶ月で新たに何かを学ぶというよりも、潜水艦の作戦運用に必要な最新の情勢等の把握や戦術を含む技術的な事項の再確認、その他必要な事柄の総点検的な内容が教育の大半を占めることになります。いわば、この課程の眼目は、求められる知識や技能の“チェック/アップデート/ブラッシュアップ”にあるといえるでしょう。
ここで少し話は変わります。私自身、入隊してから実感したことですが、総じて自衛隊は教育/人材育成に手厚いと思います。たとえば、先の潜水艦艦長に至るまでの幹部教育は・・・
① 幹部候補生学校(約1年)
→ ② 近海・遠洋練習航海(約8ヶ月)
→ ③ 任務課程(約1ヶ月)→ 部隊勤務(約1年)
→ ④ 潜水艦課程(約5ヶ月)
→ ⑤ 潜水艦部隊実習(約1年)→ 部隊勤務(約5年)
→ ⑥ 潜水艦中級課程(約1年)→ 部隊勤務(約3年)
→ ⑦ 指揮幕僚課程/専攻科課程(選考による。約1年)
→ 部隊勤務(約4~数年)→ ⑧ 潜水艦指揮課程(約2ヶ月)といった流れです。
仮に、40歳前後で艦長になるとした場合、およそ18年間の勤務期間のうちにトータルで約6年におよぶ教育期間があるということになります。
なぜ、自衛隊はこれほど人材の育成に力を入れているのか?
それには大別して以下の二つの目的があるからです。
まず、部隊の任務達成に必要な各隊員の知識技能の向上です。立場や階級が上がるにつれ、その任に応ずるために求められる知識技能の水準は高まり、また、その幅は広がります。そのために必要な多くの事柄の基礎を教育によって各個人に付与する。そして、その後の部隊勤務を通じて経験を積ませ、実力の伸展、成長を図る。こうした各人の実力の向上を通じて、部隊としての任務達成をより確たるものとする。これが第一の目的です。
第二の目的は、自衛隊全体としての総合的な実力の維持・向上・その継承という、より根幹的なものです。自衛隊はいつの時点でも、いかなる情勢・状況でも、実力組織としてその力を発揮できなければなりません。そのためには、継続的な人材の育成を通じて連綿と培った総合的な実力を次の世代に脈々と繋いでいく必要があります。すなわち、「わが国の独立と平和を守る」という我々の使命を将来にわたって果たし続けていくためには、「人材の育成こそがその要諦である」という基本認識が広く共有されており、それゆえにこそ、我々はこの「人づくり」にとりわけ熱心に取り組んでいるといえましょう。
いまこの時も、多くの隊員が将来のために必要な知識技能を身に付けるべく熱心に学習・訓練に取り組んでいます。また、そうした後に続く者たちのために熱意をもってその指導・育成に取り組んでいる多くの者たちがいます。
今回は「人づくり」の大切さを改めてお伝えしたいと思い、少々長くなりましたが、こうして述べさせていただきました。今後とも潜水艦隊の活動に対するご理解を賜りますようお願い申し上げます。
潜水艦隊司令官 海将 竹中 信行
令和8年 4月21日挨拶
潜水艦隊のホームページをご覧くださりありがとうございます。
潜水艦隊司令部の所在する横須賀もずいぶんと春めいてきました。市域の街並みや三浦半島の山々の桜も満開を迎えつつあり、実に良い風情が感じられます。
さて、このページでは主に潜水艦隊の取組の方向性や司令官としての思い、潜水艦乗りや救難艦乗りの心意気などを掲載しておりますが、今回は少しトーンを変えて艦船勤務の楽しみである「上陸」について述べてみたいと思います。
海上自衛隊では艦から外出することを「上陸」と言います。潜水艦乗りをはじめとする艦艇乗組員たちにとって、寄港地での上陸はやはり大きな楽しみです。初めて寄港する街の場合はなおさらで、正直、ワクワクするものがあります。
ちなみに私自身が潜水艦や水上艦などでの勤務を通じて上陸したことのある所を北から挙げてみますと、北海道の稚内、小樽、礼文島、函館、青森県の大湊、新潟、東京都の父島、千葉県の船橋、静岡県の伊東と清水、名古屋、三重県の伊勢、京都府の舞鶴、和歌山県の由良、大阪、神戸、高知県の須崎、山口県の下関、福岡県の博多、大分県の佐伯、長崎県の佐世保、宮崎、鹿児島、奄美大島、沖縄の勝連といったところでしょうか。特に記録などはとっていませんが、すべての場所をハッキリと思い出せますし、仲間と共に過ごしたそれぞれの地での楽しいひとときも明瞭に覚えています
改めて振り返れば、多くの場所を訪れる機会を得て楽しく幸せだなと思います。が、これでも船乗りの中ではそんなに多い方ではないと思います。どちらかといえば、潜水艦は寄港することが少ないですし、ベテランの(特に掃海艇などの)水上艦乗りたちはもっと多くの土地を訪ねた経験をもっていると思います。
その土地の名物を楽しむ、名跡を訪ねる。街をぶらつく。さらに時間があれば、博物館などを訪ねてその街や地方の歴史を概観する。何ともいえず楽しいひと時です。これからの時期は散策に適したシーズン、先にも挙げた大分県の佐伯の街などは城跡や武家屋敷地区の趣も素晴らしいですし、夜には豊後水道のサバやアジ、イワシなどで一杯と本当に良い気分にひたることができます。何度か訪れた居酒屋さんのアジ寿司の味は今も思い出されます。
端的に言って、若い人たちからは“艦艇勤務=船乗りとしての暮らし・生き方”は敬遠されがちのようですが、「(確かにしんどいこともありますが、)このような楽しみもあり、なかなかのものでもありますよ。」ということをお伝えしたいと考え、色々と思い出しながら書き綴ってみました。
潜水艦や水上艦艇が寄港する際には、多くの場合、当該地の自衛隊地方協力本部と協力して艦艇見学等の広報を行います。潜水艦や潜水艦救難艦の寄港機会はそれほど多いわけではありませんが、これまでに増して潜水艦隊として積極的に各地への寄港・広報を計画して参りますので、もしよろしければ、一度お近くの地方協力本部か海上自衛隊のホームページにて艦艇広報の予定などをご確認いただければと思います。
令和8年 1月 1日挨拶
明けましておめでとうございます
潜水艦隊を代表して新年のご挨拶を申し上げます
昨年も任務であるわが国周辺海域における常時継続的な情報収集・警戒監視に当たってきました。また、有事において海上防衛の第一線で水中優勢を獲得・維持するという使命を果たせるよう、我々の艦隊の実力をより高いレベルに引き上げるための努力を真剣に続けてきました。
その主なものを挙げれば、部隊の即応態勢の充実強化、潜水艦戦術の改善や教育訓練内容の見直し、米海軍潜水艦部隊との連携度合いのより一層の強化などです。いずれも潜水艦隊の実力の向上に直結するものであり、これらに関して司令官として確かな手応えを感じているところです。
またこれと並行して、昨年に発出された特別防衛監察の結果を踏まえた物品管理態勢の良態化や倫理教育の一層の充実といった各種対策の推進、より精強・誠実な海上自衛隊・潜水艦隊を具現するための精神基盤の充実などの諸対策にも愚直に取り組んできました。上記と同様、これらについても着実に成果が上がってきていると受け止めているところです。
“SILENT SERVICE(サイレント・サービス)”たる我々の活動を実際にお見せする機会はありません。しかしながら、潜水艦隊の隊員一同は有事におけるわが国の対処力の中核たるべく、また、平素から実効性のある抑止力の一翼としてその役割を担い続けるべく、各員がそれぞれの持ち場で一所懸命に力を尽くしてくれています。
本年も引き続き、潜水艦隊の活動にご理解を賜りますようお願い申し上げます。
令和7年10月28日挨拶
潜水艦隊のホームページをご覧頂きありがとうございます。
去る10月14日(火)、川崎重工 神戸造船工場 にて建造中の潜水艦の命名式・進水式が行われました。心地よい秋晴れの下、六甲の山々の美しい緑と神戸の街並みを背景に、その新鋭艦は「そうげい」と命名されました。そして、海上自衛隊 呉音楽隊 が演奏する軍艦マーチと多くの参列者の盛大な拍手と歓声に包まれながら無事に進水しました。
川崎重工 神戸造船工場 の進水式は、建造船台から潜水艦の自重をもって海面に滑走させる方式で行われます。かつてはこうした進水方式がひろく一般に行われていたようですが、近年ではほぼ同所でのみ行われていると聞き及んでいます。
全長84m、約3,000トンの巨体が最初はゆっくりと、そこから徐々に加速しながら進水する様は誠に勇壮にして優美、実に見事なものでありました。私は、この光景を敬礼で見送りながら、新鋭艦が着実に建造・整備されていることに心から感謝するとともに、「この潜水艦を必ずや強い艦に育て上げ、国を護る力とする」ことを誓いました。
「そうげい」は、令和4年3月に就役した同型1番艦の「たいげい」から数えて6番艦に当たります。この後もわが国の潜水艦建造の拠点である神戸にて同艦の建造工程は続きます。完成は令和9年3月頃の見込みです。その後速やかに、海上自衛隊の潜水艦として我々が誇りとする自衛艦旗を掲げて就役し、潜水艦隊に編入される予定です。
おわりに、常日頃から潜水艦の建造や修理・維持整備に尽力して下さっている関係者の方々並びにそのご家族のみな様に対し、潜水艦部隊を代表して心から敬意を表しますとともに、ここに改めてお礼申し上げ今月のご挨拶とさせていただきます。
【ご参考】
命名式・進水式の位置づけや意義については、昨年10月の挨拶文に多少詳しく記述しております。もしよろしければ、この下に示すバックナンバーをご覧ください。
令和7年 8月 1日挨拶
一昨日の7月30日に「潜水艦修理契約に関する特別防衛監察」の結果が公表されました。すでにその全文が防衛監察本部のホームページに公開されています。
今回の特別防衛監察は昨年の7月から約1年にわたり実施されました。その結果、さまざまな不正や不適切な事柄が明らかになるとともに、その背景要因や是正を図るための方向性等が示されました。
本件に関連して潜水艦艦長の立場にあった17名を注意処分としました。また、これとは別に、私用物品を受領した潜水艦乗組員たちを自衛隊員倫理審査会での審議を経て別途処置することになりました。
潜水艦隊司令官として今回の結果を大変重く受け止めています。そして、国民の皆様の期待と信頼を大きく損なう不祥事を生起させたことを深くお詫びします。
今回の調査結果に真摯に向き合い、潜水艦部隊の物品管理態勢の強化や倫理教育の再徹底をはじめとする各種の対策に誠実に取り組んで参ります。そしてこれにより、速やかに良好な状態に回復させていきます。また、これと並行して部隊の実力と精強さをより一層高めるための努力を引き続き積み重ねて参ります。
令和7年 6月 3日挨拶
潜水艦隊のホームページをご覧いただきありがとうございます。
潜水艦隊司令部の所在する横須賀の街やその背景を彩る三浦半島の山並みも清々しい初夏の季節を迎えています。ただ、そんな季節の移ろいを実感することもなく、また、我が子の学校行事に参加することもできない行動中の潜水艦の乗組員たちがいます。
ある艦はチームとしての実力を高めるための訓練行動に、またある艦はより高度な戦術技量を獲得すべく遠くハワイにまで出向いています。さらにある艦は・・・と、例を挙げるのもなかなかに大変です。ここでは、そうした日々を狭い艦内で送る潜水艦乗りたちの「心構え」について少し触れてみたいと思います。
その代表が「KNOW YOUR BOAT」(己の艦を知れ)です。この言葉は潜水艦乗員の基本精神ともいえるものです。潜水艦の基本構造や仕組みを知る。艦内の機器の配置や配管の系統を知る。やたらと多くある各種バルブの機能や場所などを知る。これらは潜水艦の乗員に求められる大事な心構えです。
次に、「ダブル・チェック」(二度の確認)が挙げられます。潜航するために必要な艦内各所の機器類の状態確認や個々のバルブの操作を行った者と違う者がもう一度それを確認するという決まり事です。また、その他の作業や操作においてもダブル・チェックは躾事として慣習化されています。
その背景には「人間は必ずミスをする」という実にシンプルな認識があります。潜水艦乗りは仲間への信頼を大前提として艦に乗り組んでいます。しかし、その信頼する仲間もミスをすることはある。そのミスに気づいたらすぐに是正する。そのためのダブル・チェックです。過去に生起した事故などを通じて培われた知恵ともいうべき実践手法、それがダブル・チェックであるといえます。
潜水艦は攻撃力に優れた威力の大きいビークルです。そして、その力の根源は隠密性。言い換えれば、相手から探知されにくい水中での行動能力にあります。そのかわりに常に水圧と戦わねばならないという宿命を負っている。であればこそ、潜水艦乗員には上記のような心構えが求められます。現に今も行動中の艦内で後輩の潜水艦乗りたちが油断なく励行実践していることでしょう。
令和7年 4月16日挨拶
潜水艦隊のホームページをご覧いただきありがとうございます。
潜水艦隊司令部が所在する横須賀では春を実感できる日和が続いています。街の公園や三浦半島の山間に咲く美しい桜はもちろん、樹々や草花の芽吹きも盛んになってきました。ただ、日毎朝晩の寒暖差があることや、花粉が多く舞っていることから引き続き体調管理には気を配る必要がある、そんなシーズンを迎えています。
ちなみに、潜水艦の艦内はあまり寒暖差がありません。艦内の温度はだいたい一定の範囲に保たれています。ただし、行動する海域の海水温度の影響を受けないわけではありません。状況によりけりで、うまく言えない面もありますが、ときに暑い/寒いに堪えねばならないこともあります。
また、艦内は花粉症と無縁であることも付け加えたいと思います。母港を出港し、陸地から離れるにつれて花粉の影響は明らかに薄まっていきます。さらに沖に出て潜航(=水上航走から海中に潜ること。)する頃には花粉は皆無。このため、花粉から逃れるために、決して楽ではない潜水艦の行動/出港を待ち望んでいる乗員もいないではありません。
さて、今月のご挨拶では「潜水艦救難」という任務と機能に少し触れたいと思います。海上自衛隊は2隻の潜水艦救難艦を保有しています。万が一、潜水艦が行方不明となった場合に、捜索・発見し、乗員を救助するのがその主たる任務です。このため、必要とされる多くの専門的な機能を備えています。そして、その乗組員たちも専門的な知識と技能、心構えを備えたプロフェッショナルたちです。
少し前になりますが、潜水艦救難艦の洋上における訓練状況を視察しました。そのしばらく後には飽和潜水(深海で救助作業を行うための特殊な潜水技術)要員の陸上での訓練状況を視察しました。いずれの現場においても、若い隊員たちが真剣に教育や訓練、作業に取り組んでくれていました。また、それぞれの先輩隊員たちも彼らをよく指導・支援してくれていました。実力を備えた頼もしいプロフェッショナルたち、そして、これからの潜水艦救難を担うその後継者たちのひたむきな姿に、わが身内のことながら、改めて感謝の念を抱くとともに強い感銘を受けました。
潜水艦乗員にとっては万が一に際しての命綱。自分たちにしかできないことがある。自分たちにしか助けることができない人がいる。そうした思いが潜水艦救難という重い役割を担う者たちの使命感と誇りの源泉になっています。
令和7年 3月31日挨拶
潜水艦隊のホームページをご覧いただきありがとうございます。
前回のこのページでは最新鋭艦「らいげい」(雷鯨)の就役について触れました。今回は時を同じくして退役した潜水艦とこれに関連する思いについて少し述べたいと思います。
長年にわたって防衛の任に就いてきた「みちしお」が今月の中旬に退役しました。広島県の呉市に所在する潜水艦基地で行われた式典には、これまで同艦に関係してきた多くの人々が参列、その人々が見守る中、艦長以下の乗員が同艦の甲板上に整列して厳かに艦尾に掲揚した自衛艦旗を降下しました。これをもって、「みちしお」は潜水艦としての役目を終えました。
先月の挨拶文にて、乗員たちはその艦の能力を最大限に引き出し、任務を全うするために長期間にわたって相当の努力を傾注するということを述べました。
潜水艦の乗員たちはその過程でさまざまなこと、例えば、自分の技量不足を痛感したり、反省したり、悔しい思いをしたり、技量の伸びに手応えを感じたり、チームの一員として貢献できているということを実感したり、周りから認められたりといった、さまざまな感情を伴う多くの経験をします。働く場であり、成長の場であり、生活の場でもある潜水艦で仲間と苦楽を共にしながら過ごす時間の中で、いわゆる“愛艦精神”やその艦の一体感が醸成されていきます。
どちらかというと自然発生的なものに近いこの気持ちを表現するのはなかなか難しいものがあります。ただ、若干の程度の差こそあれ、総じて潜水艦乗りは自分の艦に誇りと愛着を感じています。そうした思いの対象が長年の役目を終えて退役するとき、その艦の歴代乗員や関係者はもちろん、その艦を知る多くの潜水艦乗りたちは、艦との別れに際して感慨を抱かずにはおれないというのが率直なところです。
「みちしお」殿、長年にわたり、ありがとうございました。
令和7年 3月19日挨拶
潜水艦隊のホームページをご覧頂き、ありがとうございます。
3月6日(木)、最新鋭の潜水艦「らいげい」(雷鯨)の引渡式及び自衛艦旗授与式が神戸市に所在する川崎重工神戸工場において実施されました。この「らいげい」は令和4年3月に就役(完成し、海自の艦艇となること)した1番艦の「たいげい」から数えて4番艦に当たります。この日をもって「らいげい」は潜水艦隊に編入され、目下、「らいげい」の初代乗組員たちは同艦をしっかりと乗りこなすための訓練に励んでいます。
ひょっとすると、「今から訓練するの?」とか「すぐに第一線に配備されるのではないの?」といった疑問を抱かれるかもしれません。こうしたご質問にお答えするとすれば、「潜水艦というビークルは、いきなり意のままに動かせるようになるものではありません。」ということになろうかと思います。
高度で複雑な機構や武器システムを備えた潜水艦の能力を十分に引き出し、その力を存分に発揮するためには相応の時間と努力を要します。その最初のステップは乗組員たちがこの新鋭艦の扱い方にまず慣熟すること。そして、そこからさらに厳しい訓練を段階的に積み重ねていく必要があります。
こうした観点から見た場合、やはり「人」という要素が重要な意味をもちます。科学技術の進展に伴って艦の性能は上がっても、「人」という要素、すなわち、艦長以下のすべての潜水艦乗りたちの知識や技能、チームワーク、さらには、“潜水艦乗り魂”ともいうべき精神的な要素の重要性はいささかも低下することはありません。潜水艦乗りたちはそのことを十分に心得ており、今この時も、「らいげい」の乗組員たちは懸命に訓練に励んでくれています。
このようにして潜水艦は練成を重ねて一線級の実力を備えるに至ります。ただし、潜水艦乗員の力だけで潜水艦の実力を引き出すことはできません。昨年10月の挨拶文でも触れましたが、潜水艦の建造、修理や整備、装備や部品の製造・調達などに関係して下さっている多くの方々の支えがあってこそ、潜水艦はその実力を存分に発揮することができるということを重ねて申し添えたいと思います。
今般「らいげい」は無事に就役することができました。同艦の建造に携わってこられた方々やそのご家族のみなさまに改めて敬意を表しますとともに、心から感謝申し上げます。潜水艦部隊を代表して皆様の常日頃からのご尽力に謹んでお礼申し上げます。
令和7年 2月 5日挨拶
潜水艦隊のホームページをご覧頂き、ありがとうございます。
冬は潜水艦の乗員にとってなかなかつらいシーズンです。その代表例が、水上航走中の潜水艦の艦橋(海面上8mくらい)で勤務する数名の当直員(操艦者や見張員など)です。
広島県の呉市を母港とする潜水艦が行動を終えて呉基地に帰投する際には、相当の距離を水上航走することになります。特に、北に向かって走る夜間の航程は本当にきついものがあります。また、季節柄から当然といえば当然なのですが、記憶にある限り、いつも北からの冷たい向かい風です。
冬の空気は澄んでいて、眼前に広がる洋上の夜景に遠くの灯台の灯りが美しく映えます。沿岸の街の灯りや山影、漁火もそれぞれに美しく風情を感じさせます。快晴の冬の星空は見事というほかありません。ただ、夜間、洋上に吹く寒風は冷たさもひとしおです。また、時によってはそこから雪。さらに雪からみぞれ。それが顔と体に吹き付けてきます。風に当てられた目じりからは涙が筋になって舞います。
当直員たちは厳重に防寒対策をとっています。それでもしびれるほどの寒さです。みんなで一緒に艦橋でしびれながら、自然の厳しさを毎度のごとく実感しながら、艦の安全運航の責務を負いながら、そして、「早く交代の時間にならないかな…」と時々思いながら、彼らは厳正にワッチ(航海中の当直勤務)を務めてくれています。
潜水艦勤務の冬の一コマはこれぐらいにして、おわりに、目下、潜水艦部隊が直面している課題について触れたいと思います。特に、先般公表された特別防衛監察の中間報告で指摘された物品の管理や倫理に関する問題はその大なるものです。まさに艦隊として早急に対応して是正を図らなければならない重要な課題です。我々はこの件に真剣に取り組むとともに、引き続き実施される防衛監察に真しに対応して参ります。
そして何より、我々は自らの艦隊の実力をさらに高めるための取り組みを進めていかねばなりません。このため、技術の進展や作戦環境の変化に常に先行的に対応していく努力を続けていきます。また、業務の効率化や個々の潜水艦の練成要領の改善、プロ意識に富んだ優れた乗員の育成などに総力を挙げて取り組んで参ります。
正すべきは正し、改めるべきは改め、かつ、これと並行してより一層自らの実力を高めていく。そうして、我々は覚悟をもってしっかりと職務を遂行し、任務を果たして参ります。
今後とも潜水艦隊の活動にご理解を賜りますよう改めてお願い申し上げます。
令和7年 1月 1日挨拶
明けましておめでとうございます。
潜水艦隊の隊員一同を代表して新年のご挨拶を申し上げます。
今年も潜水艦隊は海上防衛の第一線でその使命を果たせるよう、艦隊の実力をより高いレベルに引き上げるための努力を真剣に続けて参ります。
そのために、戦術や装備の改善を図るとともに、プロフェッショナルたる所属隊員の知識と技能をより一層高めて参ります。
また、各員は「自衛官の心がまえ(①使命を自覚すること、②個人の充実を図ること、③責任を遂行すること、④規律を厳守すること、⑤団結を強化すること)」を精神的な基礎とし、その上で潜水艦乗りとして、また、潜水艦隊の所属隊員としての矜持を胸に、誠実を旨として、己に厳しくその責任を果たし、後輩を大切に育てながら、仲間と一丸となってそれぞれが所属する艦と部隊を強くして参ります。
本年も引き続き、潜水艦隊の活動にご理解並びにご支持を賜りますようお願い申し上げます。
令和6年12月20日挨拶
潜水艦隊のホームページをご覧頂き、ありがとうございます。
唐突ですが、潜水艦部隊には「Christmas Dive(クリスマス・ダイブ=潜航)」と呼ばれる伝統的な行事があります。いわば、古くからのしきたりのようなものです。このクリスマス・ダイブは各潜水艦のその年の最後の潜航作業(水上から水中へ潜るための作業です。)に行うのが通例です。このため、多くの場合、12月に行うことになります。その年に良いことのあった人達を中心にその艦の1年の無事を乗員みんなで祝うことがその行事の眼目です。
良いことがあった人達とは、結婚や出産、昇任といったような吉事があった乗員です。その中から若い順に潜航作業の責任ある配置につきます。例えば、その年に結婚した一番若い乗員が艦長の役、子供が生まれた若手が潜航作業の指揮官の役、3等海曹に昇任した若手が艦の重量やバランスをコントロールする機器の操作員や舵を取る配置などにつきます。
なお、念のために申し添えますが、当然、それぞれの正規配置の者がきちんと彼らの横に付いて安全に行います。
艦長役を務める一番の若手の指示で潜航作業を開始します。多くの場合、事前に艦長の制服などを借用し、堂々とした振る舞いで「潜航せよ。」と命じます。一連の作業が終わり、無事に潜航作業を完了したところで、あらかじめ用意しておいたシャンパン(ノンアルコールです。)が配られ、乗員みんなで乾杯となります。
そろそろ、クリスマス・ダイブのシーズンに入りました。潜水艦乗りたちはこうしたささやかなユーモア精神を大切にしながら今日も任務に励んでいます。
少し早いですが、みなさまどうぞ良いお年をお迎えください。
令和6年11月 5日挨拶
潜水艦隊のホームページをご覧頂き、ありがとうございます。
着任から3か月が過ぎました。
深まりを見せる秋の風景は実に美しく、さわやかで気持ちの良いシーズンを迎えています。
横須賀に所在する潜水艦隊司令部から見ることのできる三浦半島の山々も日々その美しさの風合いを変えていきますし、さらに、旬の食材と料理、新米や新酒などもこの季節に花を添えてくれます。
ただ、行動中の潜水艦乗りたちはそれらを実感することができません。
潜水艦の食事は美味しいです。が、なかなか新鮮な旬の食材というわけにはいきません。また、行動中は新酒どころか酒自体がご法度です。
そして、母港である横須賀や呉に帰ったら「すでに季節が変わっていた」や「子供の運動会も終わっていた」というのは、少し寂しいことですが、潜水艦乗りにとってよくある話のひとつです。
そのような中でも潜水艦乗りの大切な後輩たちは頑張ってくれています。
昨今、さまざまな課題に直面していますが、私たちはこれらに怯むことなく、着実に実力を培い、覚悟をもって堂々と期待される役割を果たして参ります。
今後とも潜水艦隊に対するご理解並びにご支持を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。
令和6年10月 4日挨拶
潜水艦隊のホームページをご覧頂き、ありがとうございます。
10月4日(金)、三菱重工 神戸造船所 にて建造中の新鋭潜水艦の命名式・進水式が行われました。私も潜水艦隊司令官として両式典に参列しました。
命名式とは、防衛省が執り行う儀式です。防衛大臣により命名が行われます。この命名により、いわばその艦に命を吹き込む、そうした由緒のある大切な結節が命名式であるといえます。
一方、進水式は造船所が行う儀式です。建造中の船が無事に進水したことを祝い、かつ、その船の前途を祝福する古くからの慣習に則ったものです。いずれの式典もその艦の計画や設計、搭載部品や装備の製造・調達、また、艦そのものの建造に携わる多くの関係者が参列し、執り行われます。
潜水艦は申すまでもなく「軍船」。戦い勝利することを宿命付けられた艦です。新しい艦が生まれた喜びとともに、「国のためにしっかり頑張ってくれよ」との多くの関係者の期待と励ましに包まれながら神戸の地で日本の潜水艦は生まれます。
今回の命名式にて、この新鋭艦は「ちょうげい」と命名されました。令和4年3月に就役した同型1番艦の「たいげい」から数えて5番艦に当たります。この後も「ちょうげい」の建造工程は続きます。来年の夏頃からは洋上や海中における各種の試験作業に入り、令和8年3月頃に海上自衛隊の潜水艦として自衛艦旗を掲げて就役し、潜水艦隊に編入される予定です。
大切な税金を原資として建造された潜水艦です。大切に乗りこなし、強い艦にしていかねばなりません。これは我々潜水艦部隊にとっての大きな責務です。そして、その点はお任せください。潜水艦乗りは、自分が乗り組む艦に深い愛着と誇りを抱いています。その艦の名誉を傷つけず、その艦の名誉がさらに高まるように努力精進することを伝統精神として脈々と受け継いでいます。よって、いずれこの艦に乗り組む潜水艦乗りたちが必ずやこの「ちょうげい」を強い立派な艦にしてくれると司令官として確信しています。
おわりに、この場を借りて潜水艦の建造や修理・整備に携わっておられる方やそのご家族のみなさまに敬意を表しますとともに、心から感謝申し上げたいと思います。
自明のことながら、潜水艦乗員の力だけで潜水艦という高度で複雑なビークルの実力を引き出すことはできません。潜水艦に関係して下さっている多くの方々の支えがあって初めて、潜水艦はその実力を発揮することができ、それによって、国防の任に堪え得る存在になるということを改めてここに申し添えさせていただきます。この点に思いを致しつつ、潜水艦部隊を代表し、みなさまの常日頃からのご尽力と献身に謹んで深くお礼申し上げます。
令和6年 9月 7日挨拶
潜水艦隊のホームページをご覧頂き、ありがとうございます。
潜水艦隊司令官に着任してから約1か月が過ぎました。この間に潜水艦部隊の根拠地である広島県の呉と神奈川県の横須賀に在籍する部隊の視察を終えました。
今回の視察を通じて、真剣に職務に励んでいる部隊の状況を直接確認するとともに、改めて次のことを思い、肝に銘じました。それは、「潜水艦部隊が海上防衛の第一線でその使命を果たすことのできる実力を高いレベルで保ち続けていくためには、潜艦隊に所属する各員がプロフェッショナルとして自身の技能を高め、己に厳しくその責任を果たし、後輩を大切に育てながら、仲間たちと一丸になって自分の艦を強くする努力を地道に続けていかねばならない」というものです。
このことは、いわば当たり前に求められることであるともいえます。その理由は、先月のこのページで紹介した「服務の宣誓」と同じく、自衛官の心の持ちようの基本である「自衛官の心がまえ」とほぼ同じだからです。この「心がまえ」の要点は、① 使命を自覚すること、② 個人の充実に努めること、③ 責任を遂行すること、④ 規律を厳守すること、⑤ 団結を強化することの5つです。先に「…ねばならない」としたことは、ほぼこの「心がまえ」に含まれているということがお分かりいただけるのではないかと思います。各員が自衛官として、潜水艦乗りとして、国のため、その基本に則って誠実に努力を重ね、実力を高める。これこそが、これまでも、今も、そして、これからも我々に求められている、私はそう考えています。
9月5日に女性自衛官12名を含む海曹士自衛官111名が呉市に所在する潜水艦教育訓練隊に入校しました。各員にはこれから数か月間にわたる基礎的な教育に真剣に取り組んでもらうことになります。我々は艦隊を挙げてこの大切な新人たちを歓迎します。そして、先に述べた自衛官としての心の持ちようもしっかりと伝え、各員の自覚と発奮を促しながら、大切に育んで参ります。
令和6年 8月 2日挨拶
潜水艦隊のホームページをご覧頂き、ありがとうございます。
潜水艦隊司令官に着任した 竹中信行(たけなかのぶゆき)です。
よろしくお願い致します。
厳しい安全保障環境の下、防衛力の抜本的強化に必要な各種の取組を進めているさなかにあって、今般、飽和潜水を担う複数の隊員が潜水手当を不正に受給していたことが明らかになり、多くの処分者を出しました。心からお詫び申し上げます。
また、潜水艦の修理契約に関連する規律違反の疑いが生起している件については、まことに不適切、かつ、不名誉なことと重く受け止めており、現在実施中の特別防衛監察に誠実に対応するとともに、その結果を踏まえしっかりと対応して参ります。
潜水艦部隊に限らず、我々自衛隊員は以下の「宣誓」を行っています。
「私は、我が国の平和と独立を守る自衛隊の使命を自覚し、日本国憲法及び法令を遵守し、一致団結、厳正な規律を保持し、常に徳操を養い、人格を尊重し、心身を鍛え、技能を磨き、政治的活動に関与せず、強い責任感をもって専心職務の遂行に当たり、事に臨んでは危険を顧みず、身をもって責務の完遂に努め、もって国民の負託にこたえることを誓います。」
まさしくこう在るべく、襟を正して精進を重ね、信頼の回復に努めて参ります。
こうした取組と並行して、我々は、与えられた任務に即応し、これを完遂できるよう部隊の実力を高めていかなければなりません。そして、そうあるためには、個々の隊員が、己の腕を磨き、己に厳しくその責任を果たし、後輩を大切に育て、艦と部隊を愛し、強くしなければならないということを肝に銘じ、これを実践していくことが求められます。あまり人の目に触れることのない、こうした地道な努力の積み重ねの中で、優れた実力が養われ、継承されていくものと信じています。
「我ら戦闘の用にあり」、呉に所在する潜水艦教育訓練隊の1階正面に掲げられている伝統ある標語です。これを体現すべく、力を尽くして参ります。
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潜水艦隊先任伍長挨拶

潜水艦隊ホームページをご覧いただきありがとうございます。
令和6年12月18日付で第9代 潜水艦隊先任伍長に指定されました田村です。
日頃からの国民の皆様のご理解と、隊員ご家族のご支援に感謝しております。
潜水艦隊は潜水艦(練習潜水艦・試験潜水艦含む)潜水艦救難艦を駆使し、警戒監視、救難活動等の各種任務に従事しております。
潜水艦の特性上、国民の皆様とふれあうことができる機会は多くありませんが、現在では各地で広報活動も盛んに実施されておりますので是非とも足を運んでいただき、実物の艦を見て、乗員の声を聴いていただければ幸いです。
お話しできる内容には制限がありますが、皆様からの激励が乗員の何よりの励みとなります。
今この瞬間も多くの隊員が数々の制約のある海上、海中で国防の任務を遂行しております。
引き続き皆様のご協力と、あたたかいご声援をよろしくお願いいたします。
潜水艦隊先任伍長 准海尉 田村 健
