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第IV部 防衛力を構成する中心的な要素など

防衛白書トップ > 第IV部 防衛力を構成する中心的な要素など > 第4章 防衛装備・技術に関する諸施策 > 第1節 装備体系の見直し > 1 合理的な装備体系の構築のための取組

第4章 防衛装備・技術に関する諸施策

近年の軍事技術の進展は目覚ましいものとなっている。こうした技術の進展を背景に、現在の戦闘様相は、陸・海・空のみならず、宇宙・サイバー・電磁波といった新たな領域を組み合わせたものとなっており、各国は、全般的な軍事能力の向上のため、これら新たな領域における能力を裏付ける技術の優位を追求している。

さらに、極超音速兵器などのゲーム・チェンジャーとなり得る先端技術を活用した兵器の開発や、人工知能(AI:Artificial Intelligence)を搭載した自律型の無人兵器システムの研究開発に多額を投じ、早期実用化に取り組んでいる。また、量子コンピューティングや量子暗号をはじめとする量子技術、第5世代移動通信システム(5G)などをはじめとするICT(Information and Communication Technology)分野の今後のさらなる技術革新は、将来の戦闘様相をさらに予見困難なものにするとみられる。

また、装備品の高性能化・複雑化に伴い外国製装備品の輸入が高水準で推移していることに加えて、技術の高度化に伴い単価が高騰している装備品の導入により、近年の国内調達の増額にもかかわらず、国内企業からの調達数量は減少傾向にある。そのため、わが国の防衛産業・技術基盤は厳しい状況に晒(さら)されている。

このような中、多次元統合防衛力の構築に必要かつ十分な防衛力の「質」及び「量」を確保するには、①装備体系の見直し、②技術基盤の強化、③装備調達の最適化、④産業基盤の強靭化、⑤防衛装備・技術協力に取り組むことが不可欠である。また、①~⑤の取組と合わせて、わが国経済の自律性や、わが国の技術などの他国に対する優位性、ひいては国際社会にとっての不可欠性などを高める観点から政府全体として重点的に推進している⑥経済安全保障の取組について、防衛省としても安全保障上の知見を活かして、積極的に協力していくことが極めて重要である。

第1節 装備体系の見直し

1 合理的な装備体系の構築のための取組

人口減少・少子高齢化の急速な進展や厳しい財政事情を踏まえれば、領域横断作戦に対応できる十分な能力を獲得するためには、装備体系の合理化などにかかる取組を一層推進することが必要不可欠である。中期防においては、統合運用の観点から実効的かつ合理的な装備体系を構築するため、次の項目に取り組んでいくこととしている。

1 統幕の機能強化

中期防では、現有の装備体系を検証し、統合運用の観点から実効的かつ合理的な装備体系を構築するための統幕の機能を強化することとしている。これを踏まえ、中期防期間中の適切なタイミングで、統合運用上の観点を踏まえた装備体系の構築に着手することとしている。

2 装備品のファミリー化・仕様の共通化・共同調達など

統合的見地を踏まえ、開発・取得・維持経費の低減を図るため、中期防では、装備品のファミリー化1、装備品の仕様の共通化、各自衛隊が共通して保有する装備品の共同調達などを行うこととしている。これを踏まえ、例えば、陸自が保有する沿岸レーダーや低空レーダーなどの複数種類のレーダーの後継として、仕様を共通化した「多目的監視レーダー」を開発している。また、12式地対艦誘導弾能力向上型については、陸自のトラックに搭載する装置から発射する誘導弾(地発型)の開発を令和3(2021)年度から開始している。地発型の開発にあたっては、海自の艦船に搭載する装置から発射する誘導弾(艦発型)及び空自の戦闘機から発射する誘導弾(空発型)とのファミリー化を見据えて、誘導弾の機能・性能、形状、構成品などの共通化のための設計に取り組み、開発期間の短縮にも取り組んでいる。

3 重要度の低下した装備品の運用停止など

中期防では、航空機などの種類の削減、重要度の低下した装備品の運用停止、費用対効果の低いプロジェクトの見直しや中止などを行うこととしている。

これを踏まえ、203mm自走りゅう弾砲など、わが国を取り巻く安全保障環境にかんがみ、必ずしも優先順位の高いとは言えない装備品について、後継装備品を整備せず用途廃止とするとともに、生物偵察車などの整備数量が少なく、費用対効果の低い装備品などは、機能担保を行いつつ用途廃止とすることとしている。

1 装備品について、基本的な構成部品を共通化させつつ、機能、性能などにバリエーションを持たせることで、異なる運用要求に応えるようにすること。