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第IV部 防衛力を構成する中心的な要素など

防衛白書トップ > 第IV部 防衛力を構成する中心的な要素など > 第2章 人的基盤・知的基盤の強化 > 第2節 ワークライフバランスと女性の活躍の更なる推進 > 1 ワークライフバランス推進のための働き方改革

第2節 ワークライフバランスと女性の活躍の更なる推進

わが国を取り巻く安全保障環境が一層厳しさを増し、防衛省・自衛隊の対応が求められる事態が増加するとともに長期化しつつある一方、社会構造の大きな変化によりその任務を担う防衛省の職員は、今後男女ともに、育児・介護などの事情のため時間や移動に制約のある者が増加することが想定される。

このような厳しい状況の中で、各種事態に持続的に対応できる態勢を確保するためには、職員が心身ともに健全な状態で、高い士気を保って、その能力を十分に発揮しうるような環境を整えることが必要である。このような考えから、防衛省・自衛隊においては、職員の仕事と生活の調和(ワークライフバランス)に関する取組を進めている。

また、防衛省・自衛隊は、女性職員の活躍の推進に積極的に取り組んでおり、その人数も近年増加傾向にある。

防衛省・自衛隊においては、ワークライフバランスと女性職員の採用・登用のさらなる拡大を一体的に推進するため、2015年に「防衛省における女性職員活躍とワークライフバランス推進のための取組計画」(以下「取組計画」という。)を策定し、様々な取組を行ってきた。2021年3月には①ワークライフバランス推進のための働き方改革、②女性の活躍推進のための改革という2つの改革を柱とする新たな取組計画を策定し、取組を推進している。

1 ワークライフバランス推進のための働き方改革

1 価値観・意識の改革

働き方改革にあたっては、特に管理職員などの働き方に対する価値観や意識の改革を行う必要がある。防衛省・自衛隊においては、平成29(2017)年度以降、働き方改革やワークライフバランスに関する意識啓発のため、トップからのメッセージの発出、セミナーや講演会などを実施している。また、育児や介護などで時間や移動に制約がある隊員が増えていく中、全ての隊員が能力を十分に発揮して活躍できるよう、ワークライフバランス確保のため、長時間労働の是正や休暇の取得の促進などに努めている。

さらに、管理職のマネジメント能力の向上に向けた「マネジメント改革」のための取組も実施している。

2 職場における仕事改革

ワークライフバランス推進に向けた取組は、個々の職場の実情に合わせた取組を行い、それぞれの職員が自ら職場環境の改善策を考えることが実効性のある取組や風土作りにつながる。そのような考えから、2016年以降、「防衛省における働き方改革推進のための取組コンテスト」を実施しており、各機関等からの応募の中から、特に優れた取組について防衛大臣及び防衛副大臣がそれぞれ表彰を行うとともに、各職場における仕事改革の一助としている。また、さらなる業務の効率化を推進するとともに、長時間労働是正のための適切な勤務時間管理にも取り組んでいる。

3 働く時間と場所の柔軟化

業務の繁閑の事情や個人の抱える時間制約などの事情を踏まえれば、働く時間と場所の柔軟化が必要である。このため、防衛省・自衛隊においては、平成28(2016)年度からフレックスタイム制を導入したほか、早出遅出勤務の多段階化を図るなど、柔軟に勤務時間を選択できるようにした。

自宅における勤務を可能とするテレワーク環境の整備については、平成29(2017)年度に内部部局においてテレワークを開始して以降、順次範囲を拡大するとともに端末の段階的な整備を行い、令和2(2020)年度には全ての機関においてテレワークが実施可能となった。特に2020年以降は新型コロナウイルス感染症の拡大防止のため、多くの職員がテレワーク勤務したが、こうした非常時における業務継続の観点からも、引き続き端末の整備とともに資料の電子化などを含めたデジタル化を推進し、テレワークの実施環境を整備している。

4 育児・介護をしながら活躍できるための環境整備

防衛省・自衛隊においては、任期付の職員を採用し、育児休業などを取得する職員のための代替要員を確保するなど、職員が育児・介護などと仕事を両立するための様々な制度を整備しているほか、特に男性職員の家庭生活への参画を推進するため、男性職員の育児休業などの取得促進に取り組んでおり、令和2(2020)年度から、子どもが生まれた全ての男性職員が1ヶ月以上を目途に育児に伴う休暇・休業を取得できることを目指すとともに、令和7(2025)年度までに男性職員の育児休業取得率が30%となるよう目指している。

また、育児や介護に関する制度の説明、ロールモデルの紹介、管理職員や人事担当部局がきめ細かく職員の育児にかかる状況を把握するため「育児シート」などを作成するなどの取組により、職業生活と家庭生活を両立しやすい環境整備を進めている。

さらに、防衛省・自衛隊では、中途退職した自衛官を再度採用できる制度があるが、この制度について、2017年1月、育児・介護により中途退職した者も採用できるよう見直しを行い、2018年1月、本制度に基づく採用を開始した。

5 保育の場の確保

自衛隊員が子供の保育などに不安を抱くことなく、任務に専念できる環境を整えておくことは、自衛隊の常時即応態勢を維持する上で重要である。防衛省・自衛隊においては、2007年4月以降、陸自の三宿、熊本及び真駒内の各駐屯地と朝霞駐屯地宿舎地区、海自の横須賀地区、空自の入間基地、防衛省本省の所在する市ヶ谷地区、防衛医科大学校にそれぞれ庁内託児施設を整備してきた。また、災害派遣などにおける緊急登庁時において、他に預け先がなく、子供を帯同して登庁せざるを得ない隊員について、自衛隊の駐屯地などで子供を一時的に預かる緊急登庁支援の施策を推進している。