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第IV部 防衛力を構成する中心的な要素など

防衛白書トップ > 第IV部 防衛力を構成する中心的な要素など > 第2章 防衛装備・技術に関する諸施策 > 第4節 産業基盤の強靭化 > 1 わが国の防衛産業基盤の現状

第4節 産業基盤の強靭化

高性能な装備品の生産と高い可動率を確保するためには、それを具現化するための強靭な産業基盤が不可欠である。防衛省としては、2014年6月に「防衛生産・技術基盤戦略」を策定し、その維持・強化に努めてきたところであるが、防衛大綱1などを踏まえ、2019年に防衛省と産業界との意見交換の場を設けるなど、変化する安全保障環境に的確に対応できるよう、今後、産業基盤のさらなる強靭化に向け取り組んでいくこととしている。

1 わが国の防衛産業基盤の現状

防衛産業基盤とは、防衛省・自衛隊の活動に必要な装備品の生産・運用・維持整備に必要不可欠な人的、物的、技術的基盤である。わが国においては、その多くの部分を、装備品などを生産する企業(防衛産業)が担っており、特殊かつ高度な技能や設備を有する広範な企業2が関与している。

一方、防衛需要依存度(会社売上に占める防衛関連売上の比率)は平均で3%程度であり3、多くの企業で防衛事業が主要な事業とはなっていない。また、少量多種生産や装備品の高度化・複雑化により調達単価及び維持・整備経費が増加傾向にあることから、調達数量の減少に伴う仕事量及び作業量の減少により、技能の維持・伝承が困難になるという問題や、一部企業が防衛事業から撤退するなどの問題も生じている。

これらに加え、欧米企業の再編と国際共同開発が進展するなか、2014年4月に防衛装備移転三原則が策定されたものの、これまで、わが国の防衛産業は、専ら自衛隊向けに装備品の生産などを行うことを前提として構築されてきたために、国際競争力の向上が課題となっている。

参照図表IV-2-4-1(主要装備品などの維持整備経費の推移)
5節1項(防衛装備移転三原則)

図表IV-2-4-1 装備品などの維持整備経費の推移

1 II部2章2節参照

2 例えば、戦闘機関連企業は約1,100社、戦車関連企業は約1,300社、護衛艦関連企業は約8,300社ともいわれている。

3 令和元(2019)年度の売上実績に基づく防衛需要依存度調査(防衛関連企業150社回答)による。前年度調査では平均5%程度であったが、防衛需要依存率の低い企業の回答数が増加したため、防衛需要依存率が低下した。また、比較的小規模ではあるが、防衛産業を支える重要な技術を有する企業の中には、防衛需要依存度が50%を超える企業も存在し、防衛需要の規模が企業の経営に大きな影響を与える。